ネットラーニング カスタマーセンター

eラーニングに関する情報、つれづれなる日々の写真日記

映画の翻訳

2006-06-22 | 映画

むかし、映像翻訳の学校に通ったことがあります。 字幕の翻訳。
なかなか楽しいのですが、想像するよりはるかに難しい。

字幕翻訳の基本ルールとして、
「2行で最大26文字まで」というのがあります(横書きの場合)。
画面遷移が約4秒。 
26文字の中にすべてのエッセンスを盛り込むのは不可能で
(そもそも言語間にニュアンスの違いがあるのであたりまえですが)
翻訳学校の先生いわく、「70%オリジナルどおり訳せたら上出来」ってことでした。

字幕翻訳家は、映画を訳すとき、まず最初に「ハコ書き」という作業をします。
初回の試写で英語のスクリプトを見ながら、1画面に入れるセリフを
切っていく作業です。
初回試写なのでその映画を見るのは初めてなのに、
ハコを切るのに精一杯で初回はほとんど映像を見る余裕はないらしい。
その後、ハコ切りしたスクリプトに日本語の字幕をつけていくわけですが、
封切までに手直しできるのは1~2回、という具合で、
字幕翻訳は相当な熟練のいる世界です。

字幕翻訳家にとって何が一番大切なスキルか?
「語学力」と思われるかもしれませんが、
それに先んじて重要なのは「日本語の表現力」、そして「情報収集力」でした。
語学力はあって当たり前。
自己主張をおさえ、可能な限りニュートラルな視点で忠実に訳した言葉を
26文字のセリフにおさめる。
この、「自己主張をおさえる」ってところがポイントです。
セリフに自分の意見を混入させてはならないんですね。

そして時代背景に合った言葉選びには情報収集力が不可欠。
「You」をひとつ訳すのでも、性別・年齢・時代・職業などによって違ってきます。

ということで、英語のブラッシュアップになるかな、と思った私は大失敗でした。
かわりに違う面白さを発見できましたけれど。

戸田奈津子さん。 ブラピの隣に、ジョニーデップの隣に、いつもいるあのお方。
戸田さんは字幕翻訳界の横綱ですが、
彼女自身は海外での生活経験がないというのは結構有名ですね。
むかし、翻訳界の草分け、清水俊二氏に弟子入りし、独学で翻訳を習得。
コッポラの「地獄の黙示録」でその名をとどろかせました。
今じゃ横綱にのぼりつめた彼女ですが、約20年の下積み、と苦労も多い。 
ご本人は「好きなことをわがままにやってきただけ」とケラケラ笑うが、
その気取りのない性格が呼び寄せたキャリア、という気もします。
まあ、私は知り合いでもなんでもないですが。

映画字幕の世界は相撲の番付表みたいなもの。
横綱・大関・関脇になれるのはほんの一握り。
飽和状態の英語の翻訳家より、他言語のほうが可能性は高いでしょうか。

語学教材のアルクでは毎年「映画字幕翻訳コンテスト」を開催しています。
(今年はすでに終了)
英語の映画がお題目でしたが、韓流映画の急激な普及で
韓国語字幕翻訳コンテストも同時開催していたようです。
優勝すれば翻訳家デビューの道が。 

ポッドキャストで上述の戸田さんの番組があります。
映画の中の英語」 
使えるセリフを戸田さんの視点で楽しく解説。

ネットラーニングのEnglish Aya Podもよろしくお願いします。

CCつれづれ日記

視力検眼中。 あのメガネ、こっけいですよね。
もれなく伴淳三郎になれる。

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (yossy)
2006-06-22 22:12:16
いやあーそのめがねどこでみっけたの!!

ほんとはきれいなのにそんなことやっちゃうあなたが素敵♪

翻訳ってそういう世界なのねえ。

今日トムクルーズの脇にずーと戸田さんがいらして、なんかいきいきしている姿を見て、人間好きなことやってたらどうにかなるなあなあんて思っていましたのよ。

おほほほほ。
返信する
字幕はたいへん (nigel)
2006-06-23 00:01:37
1行たった15文字しか入れられないTVの画面に挿入する字幕スーパーの制作はとてもたいへん。今はPCで入れますが、私が駆け出しのころは、紙に書いてもらって(紙焼きといいます)それをカメラで撮影して・・・。

それにしても奈津子さんは字幕の魔術師、天才です。
返信する
Unknown (タ”イスケ)
2006-06-23 17:42:52
すごい物知りですね!合コンの小ネタ集

として使わせていただきたい次第です。

にしても、お写真こっけいです事!
返信する
コメントありがとうございます。 (CCきのした)
2006-06-26 18:39:37
>yossyさん



メガネ屋さんで処方箋つくるときにかけるメガネです。(^-^)

私はメガネフェチですが、これが似合う人がいたら会ってみたい。

好きなことして暮らせたら生活が潤いますね。

何もできなくて地団駄ふんでいることの多い私ですけれど…。

「まあ、人生こんなもん」くらいの気の抜き方がちょうどいいんでしょうか。まだまだ修行が足りません。



>nigelさん



TVだともっと文字制限が厳しいのですかー。

PC登場前は大変な手間をかけていたんですね。

戸田さんも今の地位の下にはたゆまない努力の跡があるのでしょうね。

今の風体から漂うあの余裕はそれなりにご苦労されたゆえ…という気もします。

しかし最近の映画のタイトルは原題をカタカナにしたのがふえましたが、「地獄の黙示録」って訳すセンスがすばらしいです。



>ダイスケさん



合コンネタにしていただけるとは光栄です。

あ、私のこの写真、合コン参加者募るときに使ってください。
返信する