日,暮らし

明日は明日の風が吹く。

「アンボス・ムンドス」桐野夏生

2006-02-13 | 日々の読書
この世には,自分の思いも寄らぬ事が起きるし,理不尽なことと思うようなことも起こる。そのときに,その運命に対して,戦うのか,最初からあきらめて,ただ嵐が過ぎ去るのを待つか・・・。

「アンボス・ムンドス」は短編で,その前に読んだというか,読んでしまった奥田秀朗の「ララピポ」のように,短編だけど,微妙に関連して,重なりあって,絡み合うというのとは全然違う,全く別の話だけど,ただその底には微妙につながっている部分があるような気がする。

余談ですが,「ララピポ」は,なんというか,最初はお下劣というか,人の秘め事をのぞき見するような,こんなんありか・・という感じの話ばっかりなんですけど,でも,なんとなく人間って哀しい生き物だよなぁ・・ということを思ってしまう。で,人生は・・なんていうと大げさだけど,自分が見ようと思わないと,目の前に何があっても見えないものだとも思う。

で,「アンボス・ムンドス」ですが,これは表題になった話は,最後の話で,不倫旅行で海外に行った若い小学校教諭と教頭が,帰ってきたら生徒が事件に巻き込まれて,それで不倫が分かり,破滅に向かう・・という話。二つの相反する,そしてすぐ側にある世界の恐ろしさというか,危うさ。幸福の側には不幸が寄り添っているというか・・・。しかし,人間の悪意というものは,恐ろしいと思う。それが自分に向けられたときの衝撃というか,恐怖というか・・・。

この本に出てくる女性は,現実に自分の側にいたら,きっと嫌だろうな・・と感じる反面,自分の中にもそれと似たものを感じて,本当の現実を見せられてしまったような気がする。ちゃんと自分で直視しろというか,きれい事を言うなというか。


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