秀策発!! 囲碁新時代

 「囲碁は日本の文化である」と胸を張って言えるよう、囲碁普及などへの提言をします。

女流本因坊戦..振り返り;1

2013年02月20日 | 囲碁の話題




 1年遅れとなってしまいましたが、一昨年は謝さんが女流本因坊5連覇を達成、去年は6連覇を決めました。日本国内の女流棋戦では前人未到の快挙。その快挙を達成した打碁の着手に、謝さんの変化らしきモノが感じられるのです。

..まずは第30期女流本因坊戦の振り返りから。



  第30期..女流本因坊戦
  五番勝負 第1局目
 


..黒;向井千瑛
..白;謝依旻


 「白30は打ち過ぎ。打つなら白53に……」(王銘エン)
※白30のすぐ近くには、白が手抜きし黒が強くなったツケヒキ定石(黒03〜黒13)がある。この形には、白が寄り付く隙がない。これは私見。

 この碁は、NHK教育の囲碁将棋フォーカスで紹介され、黄孟正・九段が解説されました。序盤戦や中盤戦に関しての鋭い黄先生の解説は何度か聞いていますが、そんな黄先生が向井さんの打ち回しをべた褒めされていました。
 この碁については、謝さんの過ぎた剛打を正確に受け止め、その後は向井さんが返し技を的確に決めました。剛打の謝さんに剛打で打ち勝った向井さん、並外れた潜在能力が見事に発揮された1局でした。
 向井さんについての意見を当ブログで書いた事がありましたが、それは撤回致します。


 そしてもう1つ。黄先生や銘エン先生が疑問視した白24。実はこの下がりが、今の謝さんの棋風を表しています。これを前提に、第31期の五番勝負をみてみます。


女流本因坊戦..振り返り;2

2013年02月20日 | 囲碁の話題





第31期..女流本因坊戦
   五番勝負 第2局目


..黒;謝依旻
..白;奥田あや

..謝さん、向井千瑛さんとは同期であり、また大変優れた才能の持ち主である奥田あやさんが31期の挑戦者。ちなみにこの同期の三人は、女流黄金世代と呼ばれています。解説はマイケル・レドモンド九段。

..2局目、黒53手。このアテコミをレドモンド先生は絶賛。原因は封鎖されてしまった白石には眼形が無く、形も崩れている。更に遡る事白12のノゾキは問題ありと、呉清源先生が数年前にある本で批判されています。


....≪次のステップへ≫

..謝さんが打った、この碁の黒19。何故攻めの手では無く、地取りの手を打ったか。

..ここからは私の推測です。

..まだ謝さんが挑戦手合いに出場する前の事、

「謝さんのヨミや戦闘力は凄いけれど、一方で布石は苦手」

..そんな黄孟正・九段のお話しを何度か聞いていました。では、謝さんの弱みは布石なのか。あるいは、苦手な布石が今後の活躍の足かせになる恐れはあるのか。
..そんな疑問を佐々木修先生(謝さんが院生時代に指導を受けていた)に訊ねてみると、答えはノーでした。

「布石の勉強は30才を過ぎてからでも間に合います。プロのタイトルを取るには、何よりヨミのチカラこそが大事。その点、謝さんは別格ですよ」
..そんな謝さんのヨミや戦闘力にかなうプロはごく僅か。謝さん以上の素質を持っていた院生は、今の石田章・九段だけ。

..戦闘力は高いが、布石が苦手。そんな謝さんはどんな碁打ちになるのか。いずれは布石は地に辛く、秀栄名人の様な棋風になるのだろう。秀栄名人自身、ヨミのチカラは強かったが、布石は苦手であった。苦手克服の模索をしている内、自分からは仕掛けず、相手のチカラを利用する布石、アマシ打ちの名手と呼ばれるまでになったのです。

..私の推測が当たっているのかどうかは兎も角、最近の謝さんの碁は地に辛く、ほんの少し穏やかになった様に思えます。

..謝さんがタイトルを何連覇するか。謝さんの実力だけを単純に考えれば、10連覇15連覇してもおかしくはない。しかしその一方で、女性棋士のレベルは確実に上がっています。私が31期女流本因坊戦の棋譜を調べた限りでは、田村千明さんや種村小百合さんの戦闘力は格段に向上しています。以前とは別人かと疑いたくなる程に……
..女流は弱い。普及だけやってればいい。そんな悪評を以前聞いた事がありますが、それはもはやデマにもならないかもしれない。確実に強くなっている日本の女性棋士。予選譜でさえ、今後は大いに楽しめそうです。