秀策発!! 囲碁新時代

 「囲碁は日本の文化である」と胸を張って言えるよう、囲碁普及などへの提言をします。

思い出に残る囲碁指導を

2015年04月27日 | 囲碁界への提言



 布石、定石、手筋、死活、ヨセと、囲碁の実力向上には学ぶ範囲が余りにも広く、その上、学んだ事全てが身には付かない。だからこそ熱心に囲碁を教える人は、少しでも強くなって貰いたいと、様々な教材を準備して教えるのですが、時としてそれが逆効果になってしまう。いわゆる、≪消化不良≫と呼ばれる現象です。

   ≪記憶に残る『幕の内弁当』は無い≫

  東北の復興と魅力を考える番組、『東北発未来塾』で講師を勤めた松康(作詞家)さんがおっしゃっていましたが、外部に魅力を発信する場合、沢山の物に手を出さず、石巻の海鮮丼は旨い、気仙沼のフカヒレは旨いと、何か1つに力を入れる事が、他者の印象に残す秘訣だそうです。
  囲碁を教える場合も同じ様に、何か1つのものに力を入れる方が効果的でしょう。白江治彦先生の場合、有名格言を厳選して指導する。淡路修三先生の場合、講義の中から生まれたオリジナルの格言『淡路語録』を活用する。特に有名なのは梶原武雄先生の解説で、詩吟で鍛えられた声と講談調の語り口に聞き惚れたファンも多いでしょう。
  私の場合、まだ5級前後の時期から、佐々木修先生に師事するご縁があり、様々な事を教わりました。明治・大正期から残る伝統的な指導法、接近戦の時の考え方、プロの碁の高度な思考に関する事まで。囲碁に対する視野は広がったかと思います。佐々木先生の指導は連絡と石の形がメイン。課題分野をあえてその2つにのみ絞ったからこそ、記憶に残り易かったのかもしれません。

 今回のテーマ『思い出に残る囲碁指導』は、
「教える相手に媚を売る」
 と言う意味ではありません。状況に応じて必要な事を伝える事。囲碁は楽しいと感じ、囲碁を勉強してよかったと思い出にして貰える事。その為には、自分が教わった事や本に書いてある事の説明に終始せず、各々が軸となる考え方を持ち、工夫しなければならないのです。
 これは本当に大変ですが、普及の為に頑張りましょう。

スランプと原点回帰

2015年04月06日 | 囲碁界への提言

いかなる世界にもスランプはあり、これには多くの人が悩まされています。
勝てる筈なのに勝てない。人一倍勉強しているのに強くなれない。残念ながら人間は、練習した事、努力が全て報われる事は有り得ない。これについては、野村克也さんも著書等で指摘されています。
では、そのスランプの正体は何なのか。

≪9才の壁≫という言葉が、放送大学の『心理学概論』という番組で取り上げられていました。これによると、ほぼ一定間隔で誰しも経験する通過点。これに似た見解を取られているのが石倉昇先生。著書の『ヒカルの碁勝利学』にて、囲碁のアマチュアの場合、ある一定感覚で訪れると紹介されています。

佐々木修先生によれば、アマチュアが強くなれない理由は、知識の歪みが原因。そこで、教える相手の脳内の状況を探り、誤って身に付いた知識を矯正する必要があるとの事。これは≪知識の棚卸し≫とも言えますが、物事を学び直す事で、より正しく理解する事の大切さを訴えています。

スランプ脱出の方法として、石倉先生の場合、野球選手が自分の好調の時の映像を見てフォームを整える様に、自分の過去の会心譜を並べ返すそうです。また人によっては、旅行をしたり音楽を聞くなどしているうちにスランプを脱出する事もあるそうです。
私個人の経験では、置き石を多目に、置碁で繰り返し対局する事。方法は時によりけりで、指導碁であったりPC対局であったりしますが、これで、普段の対局にやってしまう余計な雑念やヨミを排除し、本来の判断力を戻す事が出来る様です。そう言えば、
「あんた、一晩で2目半強くなっている」
と、佐々木修先生に言われた事がありました。それは、アマ強豪の指導碁を2日間で5局受けた直後で、恐らくはその効果が運良く出たのかも知れません。
私の例が参考になるかどうかは解りませんが、その人の本来のスタイルを取り戻す事、つまり原点回帰が必要なのではないかと思います。