秀策発!! 囲碁新時代

 「囲碁は日本の文化である」と胸を張って言えるよう、囲碁普及などへの提言をします。

囲碁観戦記の鑑賞術≪5≫ 〜つなげる事の重要性〜

2015年10月19日 | 囲碁界への提言
 私が公民館のサークルで囲碁を打ち始めたばかりの頃。相手がアマ5〜7段の場合、星目(石9ツのハンデ戦)ですらまだ勝てなかった。その時によく言われた事が、
「あんたみたいに形良く打っていたり、石を繋げているだけでは、いつになっても勝てるわけがない」
「そんな打ち方ばかりしているから、日本のプロは弱くなったんだ」
 相手方からすれば、守ってばかりで貧弱過ぎると感じたのでしょう。確かに当時は、石の攻め方を知らない。それでもどうにか強くなろうとしていました。そして縁あって『碁席秀策』の師範であった佐々木修先生のご指導を仰ぐ様になりました。

 佐々木先生に一体何を教わったのか…… アマ代表として梶原武男・八段に定先で勝ち、院生時代の山下敬吾や謝依旻に指導碁を打っていた。それほどの実力者は一体何を考え、そして何を教えているのか。佐々木先生にお会いした方ならご存知でしょうが、
「打碁の良し悪しは、『石の連絡』と『石の形』である」
 と、その2つを徹底して主張されていました。これはプロもアマも関係無く、また、如何なる時代も関係無く、囲碁の真理である。安心や安全の2つを最優先に考えるべきとも。
 とにかくチカラをつけたい、強くなりたいと思っていた初期の頃は、そんな事でいいのかと思っていました。しかし、実は佐々木先生の師事を仰ぐ度、次第に合点がいく事が多々あり、反対に一般のアマの間には誤った情報が流布しているのではと思う様になりました。

 今ならば、乱打戦や切ったはったばかりが戦いではない事はわかります。戦況優位の為に味方と協力し合ったり(=連絡)、必要な装備を揃えたり(=形)する。相手の石の連絡を妨害する事、相手の石の整形を妨害する事、つまり囲碁用語で言う連絡と形、佐々木先生の主張を反対の意味で考えれば、実はどちらも攻めの思想として説明が出来る。初めて聴いてからこれに気付く迄、それにしても時間がかかり過ぎました。≪続≫

囲碁観戦記の鑑賞術≪4≫〜作戦に注目する〜

2015年10月05日 | 囲碁界への提言
 プロの実戦譜を並べる事は大変有効な勉強法。かつての木谷門下では、学校へ行く前に棋譜並べをするのが習慣で、名だたる名手の実戦譜を多く体感する事で各々の感性と素質が高められたと言われています。

 そんな木谷門下生の一員であった加藤正夫先生、新聞連載の観戦記に目を通す事が日課だったようです。加藤先生の研究会へ行くと、まずは観戦記を新聞から切り抜いたり整理したりしていたと、どなたかの回想記で読んだ記憶があります。
 囲碁が強くなるにはどうすればいいか。上記の加藤先生は、何か1つ得意戦法を持ち、徹底的に研究する事を推奨されていました。得意戦法を徹底的に研究する事で、その戦法の真意が確実に身に付き、学んだその人の確かな実力となるという。
 加藤先生、本職の囲碁では中国流を、趣味の将棋では棒銀を愛用されていたという。まずは愛用する打ち方について詳しく、徹底的に調べてみる。そしてそれから、同じ様な打ち方をするプロの碁を探して並べてみる。プロの碁が分からないとは言え、ご自身愛用の打ち方ならば分かりやすい筈。当然分かりやすいだけではなく、調べれば調べる程知らなかった事も彼是出てくるので、次第に学ぶ楽しみも気が付く筈。

 料理好きの間では、この数年、塩糀が注目されています。塩糀その物は格段旨くはありませんが、発酵食品ならではの特徴、食材の旨味を引き出す働きがあり、色々な料理との相性が良い。それにレシピ本も多く出版されているので、塩糀レシピだけ毎日作って食べても飽きが来ない。料理は材料を理解すると書きますが、何か1つを突き詰めて調べ理解する事は、実は囲碁や料理に限らず、古来学問の本道でもあるのです。
 中国流、高中国流、ミニ中国流、二連星、三連星、多々ある囲碁の序盤戦法。いずれも日々研究が進んでいますので、ご自身が長年愛用している型であっても、調べれば調べる程、それまで知らなかった事が次々と見つかるかもしれません。≪続≫