秀策発!! 囲碁新時代

 「囲碁は日本の文化である」と胸を張って言えるよう、囲碁普及などへの提言をします。

伝わりにくいことば 後編

2015年01月19日 | 囲碁界への提言

  非日常的であったり、日常用語とは意味合いが違う。それが専門用語というもので、専門能力の修得には、正確な意味の理解が欠かせません。例えば雨が短時間に降ったりやんだりする様な様子を不安定な天気と話す事があるかと思いますが、実は間違いらしい。気象用語で≪不安定≫とは、軽い空気が地上付近にあり、重い空気が上空にある状況。これでは確かにバランスが悪い。

  よく使われる囲碁用語にも、曖昧な意味の物があります。特に≪筋≫については、プロですら共通の説明が出来ない。
「筋とは、勝つ為の技である」(瀬越憲作)
「形は石の守り方、筋は石の攻め方」(高川格)
  囲碁界を代表する名文家のお二人でさえ、意味の捉え方がまるで違う。その原因を考えてみると、≪筋≫という言葉が使われる打ち方があまりにも多すぎる為。その上、評価の善し悪しが頻繁に変わる事さえあります。
  星目碁で下手側が劫をしかけて攻める打ち方について、手筋の本では厳しい打ち方と推奨されている一方、置碁の本では難しいからと別案が紹介されている、そんな事がよくあるのです。それを知らずに教えたり勉強したりしている。これが、囲碁の学習を一層難解な物にしている原因でもありましょう。
  囲碁用語の≪筋≫の冠に付く言葉は、石を取る、石を守る、振り替わる、等々あり、さらにそこから枝分かれした技が無数にある。これら全てを身に付けようとするのは無謀。司法試験でやってはいけない勉強は無計画な法律知識の丸暗記である。これは司法試験講師・伊藤真先生による指摘ですが、囲碁の指導や学習を考えれば、正確で体系的な説明が出来る様にすり必要があります。それは、非常に重要な、今後の囲碁界の課題と断言します。

 最後に佐々木修先生がおっしゃっていた悪手についての説明、これは兎に角わかりやすかったので、参考としてご紹介します。
「悪手とは、攻めるべき石を攻めず、守るべき石を守らず、取るべき石を取らない事」

伝わりにくいことば 前編

2015年01月05日 | 囲碁界への提言


「囲碁に折角興味を持って頂けたのに、難しいという理由だけでやめてしまう人が多い」
  稲葉禄子さんよりこの様な話を聞いた事があります。囲碁サロンやイベント等での普及活動に尽力されている方の言葉だけに重みがあります。
  囲碁を続けるかどうかは本人次第と思われるでしょう。日経ビジネスによる囲碁ガールブーム関連の取材にダイヤモンド囲碁サロンのスタッフがこたえていますが、囲碁入門者の大半は、実は入門後1年すら続かない。教え上手で評判の石倉昇先生でさえ、教室の生徒さん全員に3ヶ月で辞められてしまった事があると、週刊碁掲載の座談会で語っています。囲碁の楽しみがわからず、指導者や他の受講生との親好が深まらなければ、続ける義理はありませんから。

  囲碁とは兎に角厄介で、面白さがわかるまでにはとにかく時間がかかる。石倉先生の例に限らず、入門後間も無く辞めた方々は、囲碁対局の面白さを何一つ実感しなかった筈。
  囲碁についての説明がわかりにくい。例えば、囲碁を始めたばかりの人にとっては、ハサミとカカリの区別すらつかない事は当然。囲碁を教える際、指導者は普段通りの言葉で囲碁の打ち方を説明しますが、その殆どか囲碁特有の専門用語であり、日常的に使られる日本語とは意味合いがまるで違う。囲碁用語は専門用語であり、限られた人のみが使っている隠語であるとの意識が無くなってしまうのでしょう。
  こんな話もあります。囲碁用語に≪梅鉢型≫という物があります。これは前田陣彌・九段が名付け親と言われています。また梅鉢型が前田家の家紋である事は、歴史好きにはよく知られています。ところが、院生経験者ですら、梅鉢型という言葉を聞いた事すらないという人もいる。

  専門用語の難しさ。これに加えて、専門用語の意味が、実はプロの間でも共有されていない。何となくのニュアンスで会話をしている節がある。囲碁の普及という視点で見れば、これは見直さなければなりません。