秀策発!! 囲碁新時代

 「囲碁は日本の文化である」と胸を張って言えるよう、囲碁普及などへの提言をします。

知らない事は学問の始まり

2013年09月16日 | 囲碁と、日本の未来。
 碁会所の利用者、特に五十代以上の男性の場合、競技として囲碁を楽しみたい人が多いらしい。そういう人達の多くは、実戦で力をつけてきた反面、プロの指導碁や講義で勉強した事が少ないそうです。ある石取りが好きな男性、ビデオ講義を視て勉強したのですが、全く勝てなくなったとか。漢方薬の場合、風邪薬を処方するにも受診する人の体質をよく調べ、その人にあった薬を選びます。ビデオを視て勝てなくなったという男性の場合、その人の上達に本当に必要な情報で無かったのが主な原因。そして何が必要かは、第三者の意見を求めなければならない場合もあるのです。

別の場合。私が碁会所で棋譜を並べていた時、
「ネット碁でよく見る形があるけれど、意味が分からない」
と、ある男性から質問されました。その形は昔から置碁や指導碁の下手対策として打たれてきました。とはいえ、本で調べてもよく分からないと言う人もいますし、そもそも高段者でも見た事が無いと言う人もいます。肝心な事は、先入観や思い込みにとらわれず、正確に状況判断が出来るかどうか。見た事無い、知らないというのは罪ではありません。その男性には定石形についての説明をしました。断言は出来ませんが、納得して頂けたかなとは思います。

考える事は比べる事。これは司法試験受験の指導をしている伊藤真先生の本に紹介されていました。例えば、「核融合と核分裂はどこが同じでどこが違うか」「地熱発電と風力発電はどこが同じでどこが違うか」という様に。
実は、プロ棋士はこれに似た事を常にやっているのです。プロやトップアマは定石をあまり知らないと言いますが、それでも強い。それは、例えば自分の実戦で未知の形が出来た場合、知っている形と比べるのです(これは手割論という分析法)。
もし分からない定石などを見たら、定石書から似た様な別の形を選び、共通点や違いを探してはいかがでしょう。闇雲に暗記するよりは効果的だとは思います。

ほめる事としかる事

2013年09月02日 | 囲碁と、日本の未来。
  以前、木下さんが囲碁未来で連載されていた『私の教え方ノート』。参考になるかどうか、思い出した事がありますので、今回はそれについて。

A;誉める事と叱る事
  ……「YES BUT」と「NO BUT」

  警察官であった佐々淳行さんの本に、こんな事が書いてありました。

  警察内の業務において相手に指示を出す時、
「それならいい、しかしこうした方がいい」
  という YES BUT式と、
「それはダメ、こうしなきゃダメ」
 という NO BUT式の二つがあるそうです。

「YES BUT式」は新人教育や部下に指示を出す際に使い、「NO BUT式」は人質を取っているハイジャック犯との交渉の際に使う手法なんだそうです。
  もしこの使い分けを間違えると、被害者の命が危なくなったり、上司と部下の信頼関係が崩れ現場の士気が下がったりしてしまうのだとか。

  誉めて教える方法を「YES BUT式」、叱って教える方法を「NO BUT式」と言い換える事が出来るかとは思います。
  碁会所で下手を教えている腕自慢の方、「NO BUT式」で教えている人が大勢います。親切のつもりで、「あれはだめ、これはだめ」と力を入れてダメ出しをされていますが、この人たちに教わっている方々は、
《人質を取ったハイジャック犯》
  なのでしょうか( ̄▽ ̄;)



B;賞罰は正確に評価して
 上と同じく、佐々淳行さんの本から。

  昔ある交番に、定年間近の警官がいたそうです。
  職務質問(ア)の途中、別の事件(イ)が発生。それに気がついた警官は急いで追いかけたそうですが、事件イの犯人には逃げられてしまう。
  これは失態であるとして懲戒処分すべきとの意見が上がったそうですが、

1≫事件イの犯人は逃してしまったが、それでも手がかりを掴んでいた為、早い逮捕が実現できたこと。

2≫職務質問の最中に別事件を見付けた事は、若い警官にとってよいお手本である。

  等の功績もあることから、まず「懲戒処分」をし、その後すぐに「表彰状」と「褒賞金」を贈る事になったそうです。その警官、ご自身の仕事を認められた事に感激し、その後よく働かれたとか。


  モノを教える時には厳しくすべき。このやり方は戦後日本のスポーツ界の主流でしたが、東京五輪では柔道の日本代表が負けるなど、思わぬ苦戦を強いられた競技が多かった事から、コーチング法の大幅な見直しが行われたそうです。

  数年前、週刊碁の座談会にて、
「プロは今まで以上に、囲碁指導や普及の研究をすべきでは」
  と石倉昇先生がおっしゃっていましたが、全くその通りだと思います。それを実現する為には、日本棋院の院生システムに、
『インストラクター養成コース』
  を作るという方法もあるかもしれません。