摂氏911

自然な生き方をめざす女性が、日々のできごと、感じたことなどをつづります。

上善如水

2009-01-04 18:26:41 | エッセー
帰省中に読みたいと思ってた本を借りられなかったので、
岐阜の家にあった本を読んでみました。
『結婚帝国 女の岐れ道』というタイトルで、
著者は日本におけるフェミニズムの草分け、上野千鶴子さんと
臨床心理士で原宿カウンセリングセンター所長の信田さよ子さん。
私はこれまでに上野さんの本を何冊か読んで、
ファンだったので期待していたのですが、
今の私にはちょっと違和感を感じる内容でした。

上野さんの言葉の中で、特に違和感を感じたのは、
「『紳士的な男』には、『紳士的な軍隊』と
同じくらいの背理がある」というものです。
私は上野さんほど男や女について
徹底的に研究してきたわけではないし、
自分の固定観念というのも多分にあるでしょうけど、
「え?男に生まれただけで、
軍隊に象徴されるような攻撃性などを負ってきて、
それを制御するには去勢するしかないって言うの?」
って思いました。
男の人にもいろいろあると
上野さんも考えているのかと思ってたけど、
こういう見方にはちょっとついていけないな。
そういう見方をしていたら、
人間の半分は男に生まれてきているんだから、
そのこと自体への強い不信感につながってしまう気がする。
つまり、この世界、宇宙自体、
そして同じくこの宇宙の仕組みで生まれてきた
自分自身への不信感に。
それってちょっと苦しくない?

信田さんの言葉で「ん?」と思ったのは、
カウンセラーとしての自分のスタンスを語っているところ。
「わたしという人間があなたという人間と出会って、
あなたという人間はこういうニーズを持っている。
それにとことん従うことは私の職業倫理であるけれど、
わたしが1人の人間としてあまりにも許せないことは
『イヤです』と言いますから、そういうわたしがイヤならば、
ほかのところに行ってください」

このあたりを読むと、同じカウンセリングでも
私が学んだものとはだいぶ違うんだと実感します。
だって、私だったら上の言葉を見て、
「おいおい、カウンセラーが自分の主義主張を
クライアントに押しつけて、どうすんのよ」と思っちゃう。
こう言ってる一方で、DVを受けている妻たちが
またDV夫の元に帰っていくのを見て、
「その人たちがお帰りになるのを見て、
敗北感に打ちひしがれるだけです」と語っている。
また別の機会には、「『いやし』という言葉はいやだ」
というような発言もありました。
そういう発言をする人はほかにも見たことあるけど、
現に傷ついている人たちが多くて、そのニーズがあるのに
その概念に反発するってどういうこと?と思います。
「それはあなた方が弱いからだ」とでも言うのかしら?


この本を読んでみて、お2人には共通して
「男は狼なのよ」という強い観念があることが感じられ、
それが私に違和感を与えていたんだろうと思えました。
上野さんは、現代の(と言っても5年前ですが)30代女性に
フェミニズムのメッセージを送りつづけているが、
届かないことに危機感をいだいていると言っていて、
メッセージが届かないのは送る側の責任ではなく、
その女性たちが聞く耳を持たないからだと発言しています。
でも、私は真理をついたメッセージは
必ず届くと信じているものです。
上野さんたちのメッセージが届かないのは、
男性全体に対する不信、
ひいては男性を生まれさせている仕組み自体への不信に
30代の女性も直感的に違和感を
感じているからなのではないでしょうか。

「体にいいから、これを飲みなさい!」と青汁を出されても
飲めない人はいます。
酒は、百薬の長とも言われますが、
飲めない人もいるし、飲み方を間違えれば害にもなります。
無味無臭の水は誰でも飲みます。
誰にでも役に立って、害もない水のような思想が、
これからの世界を救っていく気がしています。


追記:
この本の内容には賛同できなかったけど、
介護などについて書かれた上野さんの本には
強く共感し、多くのことを学びました。
上野さんご本人にお会いする機会もありましたが、
赤ちゃん連れだった私にも、
細かい気配りをされる方でした。