摂氏911

自然な生き方をめざす女性が、日々のできごと、感じたことなどをつづります。

路面電車の必要性と再生のためのお金について

2006-02-06 14:57:52 | 社会活動
市長選をはさんで、ちょっと体調を崩して
お休みしてしまいました。

さて、前回の記事に対して、「高田候補は応援するけど、
路面電車を復活させれば膨大なお金がかかるから、
その政策を訴えることは高田候補にとってマイナスになる」
とのコメントをいただきました。
「路面電車の再生には膨大なお金がかかる」という
イメージを持っている市民は、少なくないでしょう。
そこで今回は、路面電車はなぜ必要なのかということと
路面電車を再生させるために必要とされる税金は
「岐阜市の財政を破綻させる」ほどの額なのかという
2点に絞って書いてみます。
先に結論を簡潔に言ってしまえば、まさに経済的理由から、
路面電車は復活させるべきだということです。

まず1点目の「路面電車の必要性」について。
その前に、公共交通の必要性について述べておきます。
自動車の普及で公共交通の利用者は減りましたが、
まもなく岐阜市でも4人に1人が高齢者という状況で、
地域の足である公共交通の維持は必須です。
しかし、電車廃止後の代替バスには
電車利用者の6割ほどしか乗り換えておらず、
このまま利用者が増えなければ路線の維持は
ますます難しくなります。
つまり、維持のために必要な補助金の額も増えるのです。
(このバス路線維持のための税金の額については、
2つ目の論点、「路面電車を再生させるための税金」の部分で
取り上げます。)

また、同じく自動車の普及によって郊外に拡大した
市街地に対して道路などの基盤整備、
ごみ収集などの生活サービスを提供していくことは
逼迫した財政状況のもと、限界に達しようとしています。
財政的に持続可能なまちづくりのために、
車がなくても暮らせることが求められているのです。

では、まちの基幹となる公共交通は電車でなく、
バスでも代替できるのでしょうか。
すでに書いたとおり、
代替バスの定期を買ってまだ時間がたっていない時期でも
電車利用者の6割ほどしかバスを利用していませんでした。
全国の事例によれば、代替バスへの乗客の移行は3~5割程度で、
乗客の減少がさらなる便数の減少や路線の廃止に
つながったところも少なくありません。
バスに乗り換えた利用者の声を聞いてみると、
バスの不便な点として、以下のような点をあげています。
・道路の状況によって、遅れたり早すぎたりすること。
・運賃が高くなったこと。
・電車より揺れが大きいため、
 高齢者は不安定になったり、バス酔いしたりすること。
これらの点は、そのまま鉄道を利用して外から
岐阜市に来る人が感じる不便な点と重なるでしょう。
言うまでもなく、交通の利便性はまちに人をひきつける
大きな要因ですから、便利な路面電車があるとなしでは、
まちの魅力がまったく変わってしまいます。

岐阜の路面電車の利用者が少なかった理由は、
軌道敷内に車の乗り入れが自由だったことや
安全島がなかったこと、JR駅との接続の悪さなど
環境面が整備されていなかったことに多く由来しています。
現在、利便性を高めた新しい路面電車の事業計画が
作られています。
高齢者など交通弱者の足の確保、
都市の拡大を増長する車利用の抑制のためにも、
まだ残っているレールを活かして、
中核都市にふさわしい利便性の高い基幹交通を
整備すべきでしょう。


次に、2つ目の論点、路面電車を再生させるために
必要とされる税金は「岐阜市の財政を破綻させる」ほどの
額なのかという問いに答えます。
名鉄の試算では年間9億~12億円の赤字が見込まれた
岐阜の路面電車でしたが、
沿線市町の試算では人員の削減と運用の見直しにより、
年間4億円ほどの赤字で済むことがわかりました。
現在、関市の企業サン・ストラッセなどが作成している事業計画では、
それが2〜3億円程度に抑えられるといいます。
この2〜3億円の補助を国・県・市などに
お願いすることになるのですが、
その一部を負担することは、
果たして岐阜市の財政を破綻させるほどの
ことでしょうか。

岐阜市はすでに「バス路線維持補助事業」として
1億2,000万円あまりを出しています。
敬老バスカードなどへの補助を含めると、
岐阜市からバス事業者へわたる税金は
3億円を超すと言います。
市が公共交通に補助する額として、
2,3億円というのはけっして法外なものではないのです。

一方で、岐阜市は道路や橋梁のために
今年度31億円を使っています。
岐阜市自ら、過度の車依存を避けることを
昨年出した「総合交通政策方針」で謳っているのだから、
道路や橋梁整備への予算配分の数パーセントを
路面電車への補助に回すことは
その方針に沿った政策と言えるはずです。
また、そのような政策転換がなければ、
今後ますます市街地が拡大し、
それが岐阜市の財政を破綻させることになります。


長くなってしまいましたが、
路面電車はなぜ必要なのか、
路面電車の再生には岐阜市の財政破綻させるほどの
税金投入が必要なのかという2点について
説明させてもらいました。
今回いただいたコメントを見て、
あらためて私たちの情報提供が行き届いていないことを
痛感しました。
まだまだこれから、正確な情報を出す作業を
続けていきたいと思います。
今回の説明についても不明な点、疑問な点など
なんでもけっこうですので、
コメントをいただければ幸いです。