Pains パリの味

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パンは化学

2021-08-16 21:12:53 | Weblog
夏空と向日葵、

夏、セミの抜け殻、

30代後半フランスにいた頃ゴッホがアトリエとして使っていた部屋を訪ねた事があった。アビニョンだったろうか。帰国直前の短い間、10日間くらいだったか、TGVでマルセイユまで行き、そこからは具合の良くないアウディーのレンタカーで南仏を回った。あまり具合が悪いのでゴルフに変えてもらい、アンダーステアの強いゴルフの運転で腕がまー疲れた。家族はTGVには乗れ、パリとは全く異なる風景を楽しみ、食事は美味しいし、素朴なパンと地中海で獲れた魚で毎日が楽しかったに違いない。ここで食べたパンは所謂Pain rustiqueでパリのBaguetteに比べれば素朴で小麦の香りが生きていてこれぞパンであった。

この頃パリでは殆どが無発酵のBaguetteであったので美味しいとは言えないものが多かった。そこで私の作るBaguetteはLevainを使ったBguette sur levainであったから、かなりの人気であった。当初日本人シェフの作るBaguetteやPain de campagne sur levainなど食べられないと言っていたフランス人だったが、ポアラーヌより美味しいと言ってくれる客も出て来た。お世辞好きなフランス人のことだから話半分として聞いていたが、やはり嬉しい事であった。

ここで使っていたLevain,日本で言えば天然酵母。これこそパンの風味を決める大切な発酵種であるが、この種の管理をしっかり行う事で美味しく、日持ちの良いパンができる。その頃もう一つ発酵種を使っていた。所謂サワー種と言いう。フランスではこのサワーを使う事はしないのでフランス人従業員からは批判されたが、この種を使ったPain de seigle(Loggen Mischbrot)がこれも飛ぶように売れるようになった。

要は発酵の取り方、生地の管理法で味も香りもシットリ感も変える事が出来る。そしてよく焼く事。日通りが良いパンを焼く事で香りが良くて日持ちが良くて、残存水分が適度でカビの発言が極めて遅くなる。これには発酵種のPHも関係する。

ゴテゴテ配合の生食パンとは対局線にあるパンである。パン作りを化学的に理解していればこの様なパンを考える事は無いであろう。

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