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遊里跡の探訪録など。
ブログの日時は、行動日・撮影日に合わせております。

八幡 橋本(1)

2012年01月07日 14時30分00秒 | ◇京都
遊廓(芸娼混在)→赤線
大正元年、業者数16、娼妓数31、芸妓数22
昭和4年、業者数27、娼妓数60
昭和30年、業者数75、娼妓数262

橋本駅に到着したあたりから、ぽつぽつと小雨が降りはじめた。
カメラをかばいつつ、軒をお借りしつつ探索をおこなう。

 
[左]太い出格子とその下の山路文が目を引く。玄関の豆タイルの装飾も見逃せない。
[右]欄間の桟の組み方がおもしろい。中央には屋号が埋め込まれている。


入口を左右に配した典型的な店構え。よく見ると、妻側にも使われていない入口がある。
腰のタイル、玄関の欄間、二階の欄干など、外装にも多くの工夫が見られる。

 
入口が近い位置に並ぶ。右側の入口は直接二階へ通じているのだろうか。
欄間に施された鯉の透かし彫りは見事の一語。

 
現役らしい多津美旅館。橋本では数少ない洋風建築。ステンドグラスが美しい。
旅館内に、男女が踊る大型のステンドグラスがあることで知られる。いつか見てみたい。


黒い壁が重厚な和風建築。銀行の地図記号を思わせるくり抜き窓がユニークだ。


タイル張りが目を引く玄関まわり。住人がいないのか、庇が傾いているのが心配。

 
[左]格子と赤壁が特色の和風建築。くすんだ赤壁も、往時はもっと華美だったことだろう。
[右]雷文のような連続文様。この手の建物で雷文はめずらしい気がする。

京都 七条新地(3)

2012年01月01日 13時30分00秒 | ◇京都
もう少し七条探索を続行。
カメラは先ほどから、バッテリーの要充電を警告する点滅がはじまっている。

 
[左]タイル張りのファサード。売物件の看板が寂しい。無事に売れてくれればいいが。
[右]ホール状になった玄関。絶妙なカーブに吸い寄せられそうになる。


まるで和風建築に四角い箱を被せたかのような、見れば見るほど不思議な外観。
普通の和洋折衷とはひと味もふた味も違った魅力がある。

 
タイル張りが半分残されたカフェー建築。パステルカラーが華やかでありつつ目に優しい。

 
転業旅館と思われる。二階のガラス張りに驚かされるが、従来この姿だったのだろうか。
出格子や欄干は当時のままのようだ。赤い壁は近年塗り直されている可能性が高い。

 
和風とも洋風とも中華風ともつかないエキセントリックな三階建て。
一階のごく普通の居酒屋風のたたずまいが、かえって違和感があるように思えてくる。


横に長い和風建築。欄間とすだれ掛けのななめ格子がアクセントになっている。
二階のガラス越しに一直線の廊下が見える。

 
和洋折衷の一軒。窓の造りがユニークだ。
右へ回ると、こちら側にも入口が一つ。かなりの奥行きを持っていることがわかる。

京都 七条新地(2)

2012年01月01日 13時00分00秒 | ◇京都
さらに七条新地を探索。

 
鋭角の角地に建つカフェー建築。水色の円柱と縦に長い窓が特色。
扱いにくい敷地とはいえ、強引な設計だ。入口がなかば向き合うような角度になっている。

 
角ばった印象の建物だが、玄関のアールや二階窓のくぼみなど、曲線的な表現も。
七条のトレンドだったのか、薄茶色のスクラッチタイル張りの物件をあちこちで見かけた。

橋を渡り、高瀬川の東側へ移動。
カメラのバッテリーがだんだん心許なくなってきた。撮影枚数を制限しながら歩く。


妻の壁面に派手な絵が描かれているが、残念ながら昔からのものではないらしい。

 
円柱にタイルに彫刻と、注目の意匠が詰まっている。傷みがひどいのが気にかかる。

 
ピンク色のタイルがなまめかしく一階を彩る。床一面の市松模様は爽やかな青系統。
トタンで覆われた二階の造りも気になるところだ。


全体的に白いイメージの物件。一見地味なようで、当時は逆に目立ったのかもしれない。
角地という立地条件も、こういう場所では強みといえる。

 
じつに豪華な構えの和風建築。かつては七条を代表する大店だったことだろう。
鏡写しにしたかのような外観がおもしろい。鬼瓦にはありし日の屋号が残っている。

京都 七条新地(1)

2012年01月01日 12時30分00秒 | ◇京都
遊廓(芸娼混在)→赤線
明治5年、業者数234、娼妓数973、芸妓数37
大正元年、業者数238、娼妓数906、芸妓数26
昭和9年、業者数241、娼妓数1326、芸妓数0
昭和30年、業者数168、娼妓数750
昭和32年、業者数179、娼妓数693
売春防止法施行後、「五条楽園」と改名し、平成22年まで存続。

まず高瀬川の西側から回る。

 
大きな丸窓とステンドグラスが象徴的な建物。壁や地面のタイル張りも見逃せない。
二階部分は大きくリフォームされているようだ。


上の建物の隣に並ぶ和風建築。軒下には電球が全部きれいに残っている。
あえて複雑さを排除したかのような木材の組み方に、シンプルな構成美を感じられる。

 
ピンクの豆タイルがかわいらしい。
玄関脇に屋号を筆書きしたとおぼしき表札が残っているが、「樓」から上が読み取れない。


大型の下地窓が黒壁に映える。すだれで隠れた部分も繊細な造りになっている様子。

 
重厚なカフェー建築。ゆるやかなカーブを描くフォルムが出色。そのほか見どころは多い。
もっとも気になったのは右の写真の装飾。何か描かれているようだが、よくわからない。

 
小規模ながら出格子を備えた和風建築。右のほうにお茶屋の鑑札が残っていた。

 
全面が市松模様のタイル張りになっている。狭い路地にあって強烈な存在感を放つ。
状態がとても良好で、窓の造作や軒の装飾といったディテールも必見。

京都 撞木町

2011年12月31日 16時30分00秒 | ◇京都
遊廓→赤線
大正元年、業者数19、娼妓数43
昭和2年、業者数13、娼妓数51
昭和9年、業者数21、娼妓数108
昭和33年、業者数9、娼妓数40

 
[左]遊廓の入口。左の石柱の文字は「志ゆもく町廓入口」か。風流な文字づかいだ。
[右]内側からも一枚。左の柱は無地、右の柱には「大正七年八月吉日」と刻まれている。


撞木町廓之碑。遊廓の来歴が文語体で詳しく記されている。
裏にも何か書かれていたが読み取れなかった。


「大石良雄遊興之地よろつや」とある。「よろづや」ではないらしい。
大石良雄は、大石内蔵助(くらのすけ)という仮名のほうが通りがいいだろう。

 
ひと目でそれとわかる建物は残っていない。上の二軒は少し気になった店舗風の家屋。


古い街区表示板。「撞」ではなく「橦」になっている。

 
撞木町のはずれにあった石柱。「撞木橋」は、ネット検索しても由来がわからない。
もし、遊廓でいうところの「思案橋」のような存在だったら楽しいなあ、と勝手に妄想。

 
不思議な三角形の石。明らかに人工的な形をしているが、用途は不明。
遊里と関係があるならがぜん興味がわくのだが、はたして。

なんだか石の紹介ばかりになってしまった。

長建寺

2011年12月31日 15時20分00秒 | ◇京都
中書島遊廓ゆかりの寺。

 
西柳町の北西部にある公園(名前を確認しわすれた)で見かけた案内図。
弁財天が「遊女の神として親しまれた」とある。


山門。中国の寺院を思い起こさせる。


ピンクに近い、明るい色調の赤が印象的。


灯籠や手水石を見て回ったが、遊廓や遊女とのつながりは見つけられなかった。

京都 中書島(2)

2011年12月31日 15時00分00秒 | ◇京都
(1)では西柳町が中心だったので、(2)では東柳町へ。


手作り感あふれる鱗模様がユニーク。
その左に格子窓が見える。和風建築の半分をカフェー風に改造したのだろう。

 
煤けさせることによって重厚に仕上がった板張りが目を引く。文字看板や丸窓も必見。
「木津乃家」という屋号は地図にも記されているが、現役なのだろうか。


一階はほぼリフォームされているが、それとは対照的に、二階は当時の装いそのまま。

 
かなり改装の手が入っているものの、タイルや窓の造作に往時のなごりを見て取れる。
玄関には朱書きの屋号が残存。


小田原の抹香町を連想させる四角い平屋建築。奥に引っ込んだ入口が特色。
(参照記事:抹香町の写真はこちら


建物と建物のあいだに石畳が敷かれて通路になっている。
非常に狭いが、単なる住人用の通路には見えない。誘われるように足を踏み入れた。

 
奥には茶屋風の店が軒を並べていた。退役ずみの店もある模様。
なぜこんなひっそりした場所で、と考えると謎が深まっていく。
遺構の可能性も捨てきれないが、先ほどの遊里跡とはまったく異なる雰囲気だ。

京都 中書島(1)

2011年12月31日 14時30分00秒 | ◇京都
遊廓→赤線
大正元年、業者数67、娼妓数230、芸妓数60
昭和9年、業者数68、娼妓数450、芸妓数52
昭和30年、業者数69、娼妓数228
昭和32年、業者数58、娼妓数183
以降、売春防止法の施行まで存続。


自動車が一台通れるくらいの路地にたたずむ和風建築。寺院のような欄干がおもしろい。
窓がすだれで見えないのは残念だが、建物とすだれが調和したこの眺めも魅力的だ。

 
玄関に文字看板が残っている。右のくり抜き窓は非常に精緻な造り。
ところで、こういう黒い壁の妓楼は希少だろう。墨を思わせる黒で、どこか温かみがある。

 
すだれ掛けに家紋と屋号の透かし彫りが施されている。
内側をのぞくと、チューリップ柄の面格子が現れた。予想外の趣向に驚く。


遊里ではおなじみの銭湯。シンメトリーの美しさが際立つ看板建築風のデザイン。