Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

グールドのトッカータ

2013年06月13日 | CD・DVD・カセット・レコード

 先週の日曜日、久しぶりに新宿のディスクユニオンのクラシック館でCD4枚の大人買いをしました。まあ全部中古だから新譜1枚分より安かったけれど、それでも4枚というのは「裕福な買い方」だと、若い頃はレジにならんだ隣のオジサンをみて思ったものでした。それがまさか自分になるとはね。
 買った中にはグールドのトッカータのCD2枚組があります。かつてレコードで持っていたのですが、CDではなぜか買わずじまいでここまで来てしまった一品。高校から大学にかけて聴き続けた演奏でした。あれからグールドのトッカータの記憶がぱったり途切れたまま、30年が過ぎたってわけ。
 日曜日に夜遅く東京から戻って部屋で聞きました。今、こうして聞いてみるととても新鮮に感じるものです。でもヤバイですね。もう完全にヤバイです。好きだったハ短調(BWV911)なんて、もう今の私の心にグサグサ刺さるようなそんな演奏。30年前のあの頃も、自分の進路や生き方にさんざん悩んで、グールドの神経質な、なんだかこちらが息を止めてしまうようなストイックな演奏から何から得たり、立ち止まったりして自分の立ち位置を確認して、でも一歩一歩確実に前に進んでいたんだと思います。(結局のところベタな音楽愛好家なんですよ。)
 今は浜松での「静かなる傍観の一年」が終わり、再始動を始めながら、始めての経験にとまどって、毎日、毎日立ち止まって周りをしっかり見据えてがんばらなくちゃいけない時。やっぱりこのCDに手がいってしまったんですね。無意識です。買う予定なかったんだもの。でも30年の空白があって、突如、私の前に姿を現したグールドのトッカータは、かつて自分が悩んで悩んで選択した生き方が間違っていなかったことを私に気づかせてくれるような演奏です。あの頃、大きな夢を抱いて歩き出した少年は、30年たっても同じ夢を見続けて生きいるのですものね(進歩ねえー)。さあ、今日もがんばって仕事に行くぜ!


ガムラン・アンクルンで新しい曲に挑戦~チャトゥル・アングリット

2013年06月11日 | 家・わたくしごと

  7月20日に浜松で演奏する曲目の中で、初めて演奏する器楽曲が《チャトゥル・アングリット Catur Angurit》です。1991年にバリの国立芸術大学の教員、イ・ニョマン・ウィンダが創作した曲。「日本初演」といいたいところですが、実は、1993年にバリのグループが日本公演をしたときにこの曲を演奏しています。この曲、実はアメリカでもっとも古くから活動するバリのガムラングループ「スカル・ジャヤ」が委嘱した作品。つまり、世界初演はアメリカ人のガムラン・グループでした。
 この演奏グループは、アメリカでもっとも歴史のあるバリのガムラン・グループで、1986年に初めてバリ公演をしています。翌年、日本のグループ「スカル・ジュプン」がバリで初公演をしたので、とにかくバリ人に「スカル・ジャヤ」と比較されました。その後、2000年には、この二つのグループが、千人近い観衆が集まるバリの野外ステージで競演。観客が勝敗をつけるわけで、僕は圧倒的に日本の勝ちだと思っていますが、それでも二つのグループの音楽作りの方向性の違いに驚きました。「スカル・ジャヤ」は実験的な創作曲が多く、日本は伝統的な作品が多かったのです。
 ところで、この曲は儀礼で用いられるいわゆる伝統的な器楽曲のレパートリーとは異なり、新しい響き満載、かつリズムも複雑。ちょっぴり、ワヤン・アンクルンで使うカヨナンを踊らせるときの旋律が出てくるので、ワヤンを勉強した私はもう演奏しながらドキドキです。作曲者は、アメリカ人に曲を作るからといって、全く妥協しなかったということです。まあ、「スカル・ジャヤ」のレベルは相当高いと思いますが。その後、この曲はバリの人々の間でも演奏されるようになりました。
 さて写真のCDですが、実は日本で発売された《チャトゥル・アングリット》が収録されたCD。1993年に来日したグループの演奏を日本で録音したものです。この解説、私が書いているんですが、今読んでみると《チャトゥル・アングリット》の解説、かなりしょぼい…。このCDのあとに、ジャケットと内容を少し変えて再発売しています。もう絶盤だろうと思ってアマゾンみたら、まだ中古で買えるみたいです。


通路から広場に戻っていたんですね

2013年06月10日 | 東京

 「ここは広場ではない。通路である。歌うのをやめなさい。ここは広場ではない。通路である。」
 このセリフははるか40数年前、新宿西口で繰り広げられた警察の拡声器を通した叫びである。「フォークゲリラ」とよばれた若者たちは、新宿西口広場でフォーク音楽集会を開き、さまざまなメッセージを社会に発していた1960年代終わりの頃の話だ。私はすでに生まれてはいたが、そんな時間に新宿西口に行くわけはないので、正直、ニュース映像や本の中から学んだ、いわゆる「歴史の知識」にすぎない。
 こうした若者の「危険な」現象を阻止すべく、「権力」は、ある日から、新宿西口広場を、「広場」ではなく「通路」にかえてしまったのである。通路は歩くところだから、そこに若者が集まり座って集会を開くことができなくなってしまったのだ。というより、集会をできなくしたのである。
 さて、一昨日、新宿西口にたまたま用があってこの場所を通ったとき、黄色いサインボードに目をやると、なんと「西口広場」になっているではないか!ということは、「ここは広場ではない。通路である。」とまるで抑揚のないアナウンスが繰り返された場所は、「ここは通路ではない。広場である。」とまた元に戻ったわけだ。まあ、今、この広場で集会をやることはさまざまな規制があってできないんだろうが、たとえできても、あんなフォークゲリラなんて現象が今起きるなんて全く想像すらできない。たとえ起こったとしても、今度は、渋谷のスクランブル交差点でアナウンスをした敏腕の機動隊広報部のお兄さんが、昔よりずっとスマートなアナウンスで、若者を手のひらで転がすように、上手に移動させるに違いないけれど。


タワレコ試聴買いCD

2013年06月06日 | 家・わたくしごと

 渋谷のタワレコに一度入り込むと、最低2時間は出て来れなくなります。ぼくにとっての渋谷のオアシスの一つは目新しいショッピングビルではなくてここ。一階から順にいろいろな音楽を試聴して、最後はずっと上の階のクラシックコーナーまで一つずつ昇っていきます。浜松からのバス、渋谷に停車してくれて本当に嬉しいのです。
 前回のタワレコ探訪で買ったCDがこの平井真美子の「夢の途中」。ヒーリング系のピアノです。前回、このジャンルの視聴買いは川上ミネでした。視聴して気に入る音楽って、確実にメロディーと使われているハーモニーですね。あとはあまり極端な強弱がないこと。クラシックのピアノだと、ときに強弱がキツすぎることがあるのです。
 やはりピアノ。ボクが一番好きな楽器はピアノです。ガムランは二番目。一番好きな楽器で奏でる音楽は、「聴く音楽」として大事にとっておいています。もしボクがピアノの音楽を研究して音楽学者になっていたら、こんな風にピアノの音楽に接していたかなと思うのです。
 川上ミネもそうですが、この平井真美子の奏でるピアノも、きっと私を飽きさせない音楽だと思います。薄っぺらい旋律や響きは一過性のモルヒネみたいなもので、時間がたったら跡形もなく記憶の中から消えて、もう二度と聞きたいとは思わなくなります。視聴していてなんとなくわかるんですね。この音楽とは長いお付き合いになるだろうって。「出会った衝撃」みたいなものではないのです。ただ、なんとなくですが、インクが水の中にゆっくり溶けていくような、そんな不思議な感覚を覚えます。新しい音楽との出会いは、人との出会いと似ているのです。この人とならうまくやっていけるかもしれないな、みたいな…。


Koffie from Bandoeng

2013年06月05日 | 家・わたくしごと

 先月、バンドゥンに行った知人からコーヒーをいただいた。オランダの植民地時代からバンドゥンでお店を開いているコーヒー焙煎のお店のコーヒーだそうだ。大勢のお客さんが、このコーヒーを求めるために店の前に並んでいたという。
 それにしても、この包装がとても素敵だ。アルファベットの綴りはすべて戦前のもの。しかもオランダとインドネシア語の両方が併記されているだけでなく、コテコテのカラーリングは一切なく、文字が深入りのコーヒー色で描かれているのみ。絶妙なデザイン。しかも煎りたてのコーヒーの香りが袋の外からでもほんのり香る。コーヒー好きにはたまらない。
 インドネシアのコーヒーなので、パウダー状に挽いてある。飲み方は、コーヒーの粉にお湯を注いでよく混ぜでから、粉が沈殿したあとに飲む方式。バリのコーヒーとは香りも味も違う。これがKOPIとKOFFIEの違いだな。それにしても、オランダ語表記、妙に懐かしい。また行きたいなあ。今頃は、ポプラや白樺の花粉が街中に飛んで、花粉症がひどくなる時期だ。今度は研究とか仕事じゃなくて、ゆっくり観光に行きたい。「お気に入りエッグスタンドを探す旅」はいったいいつできるだろう…。コーヒーの包装を見ながら、当分、行けそうにない大好きなオランダの夢をぼんやりと見る。つかの間の幸せな休息。 


ワヤン・トゥンジュク梅田一座のホームページ完成

2013年06月03日 | 家・わたくしごと

 わがワヤン一座であるワヤン・トゥンジュク梅田一座のホームページが苦節10年、わが一座の理科系女子N氏の努力と、K氏のデザイン力によって完成しました。一度、ご覧くださいませ。

http://wayangtunjuk.web.fc2.com/index2.html

 私のパソコンでは、なぜか製作途中で経過が見れずに、皆で盛り上がっているところにおいてきぼりになっておりましたが、出来上がってHP、なかなかいいじゃないですか!
 これからはこうしたHPから私たちの活動に興味を持ってくださる方が出てきてくださればいいと思っています。ぜひぜひブックマークの1つに加えてください。

 ちなみにこのHPの中に、一座のブログ「玉川上水の木漏れ日」を作りました。公演関係の情報やら、メンバーのどうでもいい(どうでもよくない)話などが書き込まれる予定。すでにK家の家族「エース」の話などがアップされております。

http://blog.goo.ne.jp/wayangtunjuk

こちらも合わせてブックマークしてくださいませ。

次の一座の公演は藤枝市で7月27日、その後は、8月7日の横浜公演と続きます。演目はどちらも「スプラバ使者に立つ」。秋には浜松と大阪で久しぶりに「クンバカルナの戦死」、12月自主公演では、東京では4年目、私の本の出版記念パーティーで一回だけ公演した「スタソーマ物語」を構成を変えて、新たに公演したいと考えています。乞うご期待!

 


土曜日の浜松

2013年06月01日 | 浜松・静岡

 考えてみると、ほとんど土曜日には浜松にいないのです。金曜日の夜に東京に移動するか、あるいは土曜日の朝早くにはバスか新幹線に乗っている生活。こんなに土曜日の朝、浜松でゆっくりするのは久しぶりです。というのも、今日は、今年度の第一回室内楽演奏会が開催されるから。浜松在住のヴァイオリニスト椙山久美さんのレクチャーコンサートで、4人の東京芸大の学生の弦楽四重奏が中心です。たぶん、これがなかったら、明日、那覇で会議なので、今頃は中部国際空港に向かっているはずです。
 今日は、ちょっぴり時間に余裕があるので、フレンチプレスでコーヒーを入れました。最近のマイブーム。といっても毎日だとやはり飽きてしまうから1週間に2回くらいです。フィルターペーパーとは全く見た目も味も変わるから、コーヒーの楽しみ方もかわるのです。フィルターペーパーを使うと、豆の油分をすっかり紙が吸ってくれるので、コーヒーの色がクリアーになるのですが、こちらは油分も、細かい粉も混ざるから濁り気味。でも、コクが全く違います。
 今日ガムランじゃなくて弦楽四重奏だし、やっぱり朝から多少の心の余裕がないといけないな(どういう意味、それ?)。ヨーロピアンな心持ちで大学に向かわないといけません。学生たちは本当にしっかり準備をしてくれています。正直、わたしなんていてもいなくても同じなんだけど、そんな学生たちが運営した演奏会を楽しむ観客の一人として、今日の14時が楽しみです。
 ちなみに、当日券、販売します。お時間のある方、是非静岡文化芸術大学にいらしてください。
詳細は以下のHPをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/chambermusic