Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

停電

2010年01月11日 | バリ
 20年前、私がバリで暮らしている頃、デンパサールの停電なんて本当に日常茶飯事だった。だから家に冷蔵庫なんてある家はそれなりの金持ちだけだった。今はスイッチを入れれば電気がつくのがあたりまえである。ところが先月からバリは毎日、午後6時半から10時半にかけて、各地で停電が行われている。新聞には翌日の停電地域が記載されている。停電が当局により実施されているのである。これは今月中旬で解消されるのであるが、とにかくバリは次から次へとホテルやヴィラが建ち、電力の需要と供給のバランスが崩れているのである。

 チェックアウトのちょうど2時間ほど前、荷物をまとめている最中に電気が一斉に消えた。運悪くホテルのあるエリアがその日の停電の順番だったらしい。外を走る車のヘッドライトのあかりがぼんやりと動いているのがわかる。部屋の中は真っ暗で、この状態では荷物をまとめることなんかできやしない。ロウソクをもらっていたのだが、マッチもライターも持っていないことに気がついた。このまま電気が消えていたら、荷物はまとまらない。でもなんだかそんなことはどうでもいいよう思えてきてしまう。そしてそんな状況の中でゾクゾクするくらいの快感が体全体から湧き出てくるのがわかる。テラスに座って真っ暗な部屋を見つめた。なんだか真っ暗なトンネルの入り口みたいに見えた。吸い込まれてしまってもいいかもね、そうしたらどこに行くのかしら……。

 自家発電機の音がしたかと思うと、ホテルの電気が一斉に点灯した。なんだか時間と時間の隙間にできた大きな落とし穴を見たような気がした。何ごともなかったように、ホテルの従業員たちは空のグラスを運び、ぼくはベットに並べた荷物をトランクに順序よくつめていった。 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。