Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

蓮の花、開く

2009年07月27日 | 
 もう小玉川でワヤンの公演をしてから一週間以上が経過してしまっているので、今更その話題かと思われそうだが、やはりどうしても書きたいワヤンの話が一つ。それが写真に写った花開く蓮の矢の話題である。
 今回の演目の最後では、悪役のプルサダが、仏様の化身スタソマに矢を放つがすべての矢はスタソマ王の手前で蓮の花に変わって、スタソマの周りはまるで蓮の池のように美しい花で満ち溢れる。このシーンをどのように演出しようかと相談したとき、ダランの補佐役であるクテンコンの一人が製作した矢がまさに「蓮の矢」なのだ。以前のブログに掲載したもの(5月20日)は試作版であり、今回のものは上演仕様。細い紐を操作すると、扇子のように花開く矢で、写真はまさに花開いた瞬間なのである。このまま、スタソーマ王の前で蓮の花はハラハラと地面に落ちていく。
 からくり人形というのは、意外にバリのワヤンには存在しない。ジャワ島の木偶人形では首が切れると血が吹き出るといったリアルなからくりが施されているのを見たことがあるのだが、ジャワやバリの影絵芝居としてのワヤンでは、新しいモティーフが次々に作られても、そこまでのからくりが施されたものはみたことがない。リアルであり過ぎることは観客の想像力を奪ってしまうことになり、影絵人形劇の本来ある姿を変えてしまうことになるのだが、21世紀のワヤンなのだし、そこに多少のクリエイティブな部分があったとしても問題はあるまい。花開いた蓮の矢に驚いたという声が耳に届いたりすると「やってよかったな」とつくづく製作してくれた友人に感謝する次第である。


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