ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

八ツ橋

2017年11月06日 | 末広がり

  頭の悪い男子高生だった僕は、修学旅行先の京都で旅館に着くとすぐ、市内見学にも出ずに生徒同士の賭けポーカーに熱中した。

それが運悪く、持参した小遣いのほとんどを初日にスッてしまい、夜食を買う小銭にもこと欠くありさまだった。

クラスメートと二人、腹が減ったなあ、と館内をうろついていると、1階の売店のカウンターの上に、お碗に山盛りになった生八ツ橋の試食品が置き忘れられているのを発見した。

試食品と書いてあるからには食べていいんじゃないか、などと言いながら口に入れると、初めてのニッキ独特の味に一瞬顔を見合わせたものの、まあ仕方ないや、いや案外いけるかも、と結局全部食べてしまった。

翌日、借りたお金を軍資金にしてなんとか負けを取り戻し、意気揚々、家族へのお土産を買いに売店へ行ったところ、試食品のたぐいはすべて撤去されていた-。

それ以来、この末広がりの形の菓子は大好物の一つとなっている。

後年、妹が天台宗の寺院に嫁ぎ、本山の比叡山延暦寺へ夫婦して出かけるたび、ハイ、兄さんの好物ね、と律儀に(いくぶん小馬鹿にして)一番安価なものを買ってきてくれるのだ。

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