671年、病床にある天智天皇の後継にその実子大友皇子を推挙すると、それまで皇太子だった実弟の大海人皇子(おおあまのおうじ、のちの天武天皇)は政争を避けて出家し、近江宮から吉野へ下った。
しかし翌年、兄天智帝が崩御すると彼は大友皇子派からの迫害もあって挙兵する。
これがのちに言う壬申の乱(じんしんのらん)である。
皇子は、勝手神社で戦勝を祈願して琴を奏でた。
すると背後の振袖山(そでふりやま)から天女が現れ、五度袖を振りながら舞って吉兆を示した。
皇子は天女の前に進み出て、ひざまずいた。
天女は袖の中から乳白色の珠を取り出し、皇子に授けた。
うやうやしく両手に戴いた彼はその軽さに驚き、改めて珠に目をやると、そこには天女のえも言われぬ優しい微笑みが映し出されていた。
皇子はこの戦いは必ず勝てるだろうとその時、確信した。
それと同時に、勝ったらこの天女に再会できるだろうか、とやや不謹慎なことも考えていた。