お隣は男の子二人の兄弟で、お兄ちゃんは娘と同級生。
幼稚園の頃に引っ越してきて以来の、いわゆるザ・ボーイ・ネクスト・ドアだ。
揃って教師のご両親は、キャンパスで知り合いゴールインされたそう。
お兄ちゃんはこの春、ご両親と同じ大学への進学が決まった。
なんて親孝行な。
僕は珍しい菓子折りなどをもらうと決まって娘に隣へ届けさせた。
年頃になると恥ずかしがって行くのを渋ったが、そのたび、男の子はなんでも食べたいものなのだよ、と言うと、妙に納得していた。
大震災当日には、震えながら留守番をしていた幼い兄弟を母がウチへ連れてきて、ご両親が帰宅するまで世話をしたという。
引っ越しの前夜、その彼がわざわざ挨拶に来てくれた。
改めて見ると、高校で生徒会長を務めただけあって、本当に利発そうな顔をしている。
「オースケくんか、弟のカイセーくんがウチのミオをもらってくれれば、僕ら親娘は一生近くで暮らせるのだがなあ」
そんな悪い冗談が喉元まで出かかったが、やめた。
若いひとの未来は、若いひとのものだ。