とある駅の待合室。
二人は逆方向への列車がそれぞれあと数分で到着し、永遠に別れてしまう。
もう何を話していいのかもわからなくなっていて、会話も途切れがちだ。
そこへ、あろうことかヒロイン(シリア・ジョンソン)の顔見知りでゴシップ好きのおしゃべりマダムが割り込んできて、最後の最後の、大切な瞬間をその無神経さで台なしにされてしまう。
落胆の色を必死に隠し、紳士的に振る舞うハーベイ医師(トレバー・ハワード)。
列車の到来を告げるベルが鳴ると彼は立ち上がってコートと帽子を取り、ヒロインの肩にさりげなく、けれども万感の想いをこめて手を置いたのち、振り返らずに去って行く-。
10代のころに初めてこの「逢びき」(1945年)をテレビで観た時は、こんな皮肉な別れのシーンをよく考えついたな、とひどく感心した。
同時にこの映画は実体験より先に、大事な場面には時としてとんでもない邪魔が入るものだという、漠然とした怖れを教えてくれたような気がしてならない。