「地上最大のショウ」(1952年)は、実在のサーカス団リングリング・ブラザースの全面協力を得て製作された娯楽大作で、昔はテレビで繰り返し放映されていた。
サーカス団の様々な人間模様や恋の駆け引きなどが描かれていて、長尺ながら飽きさせないのだが、その中にとりわけ忘れられないキャラクターがいた。
移動中も道化のメイクを落とさない人気者のバトンズだ。
ある日サーカス団の列車に刑事が乗り込んできた。
不治の病にかかった愛妻を安楽死させた逃亡中の医師の行方を追っているのだという。
そんな時、列車事故が起こる。
団長(チャールトン・ヘストン)は瀕死の重傷を負ってしまい、恋人の空中ブランコ乗り(ベティ・ハットン)は、現場から黙って立ち去ろうとするバトンズへ必死に懇願する。
「あなたがもし愛するがゆえに人を殺したのだとしたら、私の愛する人を生かしてちょうだい、あなたが男なら。」
「わかった、これでも男だよ。」
バトンズは刑事の目の前で団長を適切に処置し、逮捕される。
子供心に立派だな、と思った。
その後、このバトンズを演じて最後まで素顔を見せない俳優が、フランク・キャプラ監督の「素晴らしき哉、人生!」や、ヒチコックの「裏窓」、「めまい」、さらには「グレン・ミラー物語」などの代表作を持つ大スターのジェームス・スチュアートだと知り、一層感心したものだった。
当時の劇場予告編。2分45秒から。