時々子供を連れて行った市外の回転ずしは、大手チェーンから抜けて看板は架け替えたものの、機材はそのまま使用している、かなりレトロなお店だ。
レーンを流れているものも、おでんだったり、チビ一(ミニカップラーメン)だったり、巨大玉子焼きの上にシャリが載っている逆さまな握りだったり、自由というか一風変わっていて、それを子供たちが喜んだ。
客層は常連さんが多いのか、混んでいてもピリピリしたところがなく、レーンの中にいる中年女性の店員さんとのやりとりものんびりしていた。
ある時、ひどい偏食の僕は、旺盛な食欲の子供たちの様子を見ながらいつものようにフライドポテトをつまんでいたのだが、店の奥の席から入ったオーダーに耳を疑った。
「かんぴょう抜きのかんぴょう巻きを一つ!」
大きな声の主は若い父親で、どうやら子供に代わっての注文らしい。
店内がどっと沸いた。
ああ、それ、僕の子供の頃の好物だったんだ。
久しぶりに食べたい。
このなごやかな雰囲気なら大丈夫だろう。
「同じものを二皿!」
ところがなんてこと、一転して店内が静まり返ってしまった。
首を伸ばしてこちらを見ている客もいる。
しくじった、やはり偏食は死ぬまで深く静かに潜航せよ、ということか、、、。