ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

悪夢

2016年05月13日 | 日記
 社会人野球の強豪チームを率いるNには繰り返し見る悪夢があった。
約10年間の監督生活の中で、さまざまな事情から泣く泣く、しかし円満に別れた良い選手が何人かいたのだが、その選手たちがこともあろうに一つのチームに集まり、試合を挑んでくるという内容だった。
選手一人一人に対し丁寧な指導を心掛けてきたNの手の内は、彼らにすべて知られている。
これでは負けてしまう!
そう思った瞬間、寝床から跳ね起きるようにして目が覚める。
大丈夫、そんな奇策、実際には誰も気がつくわけがない。
額の嫌な汗をぬぐいながら、彼は毎回自分にそう言い聞かせた。
 しかし、たった一度だけNを震え上がらせることがあった。
才能を開花させプロヘとキャリアアップしたかつてのエースが、Nが手放した中堅選手を球団職員として雇ったのだ。
彼は気がついている。
以来、Nの憂鬱は深くなった。
 ところが、それとは別にNを不快にさせる事態が起きた。
彼のチームを円満に退団できなかったり、解雇された不良選手たちが、こともあろうに一つのチームに集まったというのだ。
これはちょっと恥ずかしく、かなりうっとうしいな、ただ、100年間負ける心配はないけれど。あちらの監督は何を考えているのだ。
吐き捨てるような彼の独り言に、コーチも大きくうなづいた。

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