今日、私が勤務するやまねこデイサービスでは県による実地指導が行われた。
NPO法人なごやかの理事長やM事務長も立ち会い、大きな指摘もなく無事終了している。
県の担当者の方々を駐車場で見送ったあと事務室に戻ると、理事長は立ってどこかぼんやりとした表情で窓の外の園庭を眺めていた。
それでも私たちの顔を見て我に返ったようで、今回の振り返りをひとしきり述べて帰られた。
私には、次回の月例管理者会議で同僚たちへ伝達するための報告書を作成したり、あちこちの書棚などから求めに応じて取り出したファイルや書式を元の場所に戻したり、といった作業が残っており、そうこうしているうちにたちまち時間が過ぎて行った。
明かりを点け、カーテンを閉めようとした私は、外で人影が動いているのに気がついた。
あわてて出てみたところ、長靴姿にスコップを持った理事長だった。
シンボルツリーとして植えた桜の木の周囲に、小さな穴を掘っては肥料を入れて埋め戻す、を一心不乱に繰り返している。
どうしたのですかと尋ねると、汗だくの彼は真顔で言った。
「二年続けてこの木が花を咲かせなかった。このままでは、せっかく記念植樹を行なっていただいた方にどうにも申し訳ないので、今日は手が空いたことだし、こうして寒肥(冬に肥料を施すこと)して、今春こそはと思ってね。」