ミューズの声聞こゆ

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台風

2017年10月30日 | なごやか

  超大型の台風が到来予定の前日昼過ぎだった。

日曜日は事業所が休業なので、私は自宅で子供たちと昼食をとっていた。

そこに携帯電話が鳴った。

NPO法人なごやかの理事長からだった。

いつもより少し早口だったが、声は落ちついていた。

―今しがた本市担当課から情報提供があり、当法人の事業所が複数ある地区の他法人特養が、丘陵地の別の特養へ避難することになった。

当法人も、かねてから策定していた避難計画を実行に移そうと思う。

ついては明日、(私が勤務する)やまねこデイサービスを全面休業にするとともに、今日の午後4時をめどに2つのグループホーム-GHジョバンニとGHカムパネルラ、それに小規模多機能ホームジョバンニの泊りの利用者様、計20名程度をそちらで受け入れることは可能か、という打診だった。

はい、できます、と私は即答した。

「うん、それでこそきみだ。では僕は今から3つのホームの管理者へ連絡したあと現地へ向かうので、きみは休日出勤できる職員を集め、利用者様がたが一晩泊まれるようにしておいてほしい、あとのこまかいことはそちらへ集合してからだ。すぐに取りかかろう。」

 

 やまねこデイサービスの職員たちは、日曜でそれぞれさまざまな用事があっただろうに、電話をかけるとみな二つ返事で承知してくれて、3ホームの利用者様・職員を迎える準備は順調に進んだ。

私は職員をそのまま待機とせず、各管理者と連絡を取り合って、出発準備が整ったホームから順に送迎車両を向かわせた。

相手方の負担軽減と時間短縮を図る積極策だった。

知らず知らずのうちに日々の業務のノウハウが生きていた。

まもなく車が次々と到着、組織的な避難と受け入れが整然となされた。

やり遂げた職員たちには笑顔さえ見られた。

 

  ああ、NPO法人なごやかっていいな、と私は改めて思った。

事務員さんも出てきて寝床作りを手伝ってくれているし、なぜか、(他法人事業所管理者である)管理者の夫君まで駆け付けてくださっている。

これが責任感と、事業所への愛情(=愛社精神)の発露なのですね。

「そのとおり。僕は(隣設するGHシグナレスの管理者を含めて)5名の管理者たちへ電話をかけて1往復ずつ協議しただけだったけれど、こんなにきれいに収まって、これなら、どんな災害の時でも大丈夫、と今は思えるよ。」

 

  翌日は、いつも静かなホームの利用者様をデイサービスの職員たちが歌やゲームで存分に盛り上げ、楽しんでいただいた後、キャンセルしなかった昼食用のお弁当を4事業所のみなで一緒に食べた。

そして午後2時前、担当課からの警報解除の連絡を受け、帰園することになった利用者様を、私たちデイ職員も協力して送り届けた。

   「不謹慎だと受け取られては困るけれど、大震災の年に、GHジョバンニで3ホームがごちゃごちゃ同居していた折に、僕も職員たちも一様に感じていた奇妙な楽しさと同じような感覚が今回またあった。

ともあれ、本当によくやってくれたね、ありがとう。」

ねぎらいの言葉を理事長にかけられた私は、達成感と疲労感からその場にへなへなと座り込みそうになった―。

 

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