坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ホッパーが描いた都会の憂愁

2011年08月26日 | 展覧会
国立新美術館では、「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(9月5日まで)が開催中ですが、この印象派展につづいて、同じワシントンD.C.の閑静な住宅街に建つフィリップス・コレクションの1896館 から多彩なアメリカ美術のコレクション展が始まります。
シュルレアリスムの影響を受けたジャクソン・ポロックの初期の作品から戦後の抽象美術の流れを、マーク・ロスコ、サム・フランシス、ヘレン・フランケンサーラーなどの主要な作品群で辿る興味深い内容となっています。
蒐集家のダンカン・フィリップス(1886~1966)は、鉄鋼業で財を成した裕福な一族に生まれ、34歳のときに邸宅をギャラリーに改装し、自らのコレクションを一般公開しました。
本展のもうひとつの注目点は、そのアメリカン・モダニズムの歴史のなかで戦前に活躍したエドワード・ホッパーやジョージア・オキーフの代表作が並ぶことです。
・掲載作品は、エドワード・ホッパー「日曜日」1926年。この閑散とした通りの一角は、ニュージャージー州の町、ホーボーケンの大通りを描いたものです。ニューヨークやニューイングランド郊外の街の一角やオフィス、レストラン、モーテルなどありふれた風景を光と影のコントラストで描き、都会に潜む人間の孤独と憂愁を描きました。
その他に戦前の主要な画家であまり日本で紹介されていないアーサー・G/タヴ、スチュアート・デイヴィス他もアメリカン・モダニズムの息吹を伝えます。
現在3000点におよぶその収蔵品から、本展では、19世紀後半から戦後まで78作家110点が展覧されます。

◆モダン・アート、アメリカン/9月28日~12月12日/国立新美術館(六本木)