坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ヨコハマトリエンナーレ2011 いよいよ開幕①

2011年08月06日 | 展覧会
現代アートの国際展として4回目を迎える本展のタイトルは、「OUR MAGIC HOU」。「世界はどこまで知ることができるのか?」の問いをもとに横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫をメイン会場に、国内外の79名のアーティストらによる総計300点以上の作品が集結。インターネットの普及により急速に情報化が進み、世界の隅々まで情報が行き渡るようになりましたが、まだまだ科学や理性では計り知れない不思議が多く存在し、それは日常の中にも潜んでいます。
魔法や神話、伝説、アニミズムなどを基調にした作品に注目しているのも大きな特徴です。これは美術の原点回帰とも言えます。文化多元主義のもと、世界各国からどのように社会をとらえるか、興味深い展示内容となりました。
横浜美術館所蔵のマグリットやエルンスト、または浮世絵などを現代アートと並置することで、見え方も多様に異なってきます。
これまでのトリエンナーレでは、横浜という地に立脚したサイトスペシフィックな(地域性に着目した)大型作品などの野外展示が目立ちましたが、今回は美術館に展示ということもあり、作品をいかに見せていくかという、マジカルなセッテイングにも注目。国や時代をこえて世代もリミックスして展示され、時空間概念も大きく変容していくようです。
・掲載作品は、リナ・バネルジー(1963年~)インド生まれ、ニューヨーク在住。「お前を捕まえてやるよ、おじょうちゃん!」というタイトルも面白いインスタレーション作品です。
インド風の大きなランプシェードが天井から吊るされ、その下には世界地図を思わせるジオラマが広がっています。色鮮やかな装飾を施したラクダのフィギュアや小さなおもちゃなどが配置されています。〈オズの魔法使い〉のセリフから引用したというタイトルのように、マジカルでかわいいキッチュさが混交した世界でした。

◆ヨコハマトリエンナーレ2011/8月6日~11月6日/ヨコハマ美術館、日本郵船海岸通倉庫他