坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

イケムラレイコ うつりゆくもの

2011年08月04日 | 展覧会
心のなかに潜んでいるイメージを辿りながら、その実体の行方を画面に定着していく。それは完結ではなくそれは心の軌跡のようなものかもしれません。キャンバスの赤の色相から浮かび上がってくる女の像。暗闇の中から少女の消え入るような横顔。光がさす水面のような漂い。キャベツの頭をもつ人物、岩の中に見える怪物のような顔など。たどたどしさにある不可解な何かにひかれていきます。
イケムラレイコさんは、現在はベルリンとケルンを拠点に活動している作家です。今回初めてとなる本格的な回顧展では、絵画、彫刻。ドローイング、彫刻など約145点の展観で、その半分以上がドイツからの出品で、新作も展示されます。
この不思議な身体感覚はどこからくるのでしょう。現実にいきているという実体と、一方向としてはとらえられない自然や動物、生き物の進化論的関係、他者を引き込むことによって生じる精神的な化学反応がどのようにおきてくるか、興味深い展観となりそうです。

◆イケムラレイコ うつりゆくもの/8月23日~10月23日/東京国立近代美術館(竹橋)
 三重県立美術館 11月8日~2012年1月22日