我が家の地球防衛艦隊

ヤマトマガジンで連載された宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部「アクエリアス・アルゴリズム」設定考証チームに参加しました。

『宇宙戦艦ヤマト2199』世界における“さらば/2 主力戦艦”を妄想してみる(前編)

2014-07-12 22:15:43 | 1/1000 さらば/2 主力戦艦(バンダイ)
【前書き】
普段、本ブログにおける艦艇設定妄想は、オリジナル版ヤマト世界の艦を扱っていますが、今回はあえて『2199』世界のそれを扱ってみます。
扱うのは、オリジナル版では『2』や『さらば』に登場した“主力戦艦”です。
もちろん、『2199』に主力戦艦は登場しませんので、『2199』世界の延長線上に“もし主力戦艦が登場したら・・・・・・”という仮定に基づく設定妄想になります。
とはいえ、未だ描かれてもいない時代と世界、仮に続編が作られたとしても、実際に登場するのかどうかも分らない艦についての妄想ですので、いつもに増して独自(でっち上げ)設定・解釈がテンコ盛りですが、その辺りはナマ温かい目で見守っていただければと思います[岩蔭|]_・)ソォーッ
あと、主力戦艦の全長などの設定は、我が家にありますバンダイ製キットの改造品から再算出していまして、オリジナル版(242m)とも異なっていますので念のため(^o^)
ではでは、そろそろ始めてみましょう♪
注記:本文章は『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の制作が発表される以前(2014年7月)に書いたもので、2202とは一切関係ありません。


【ボロディノ型宇宙戦艦】


 ガミラス戦役終結後、初めて計画・建造された新型宇宙戦艦。全長270メートルにも満たない列強最少・最軽量クラスの戦艦でありながら、空間打撃戦(砲雷撃戦)における攻防性能は他国の400メートル級大型戦艦に匹敵するとされる。
 そうした本型のスペックは、地球独自の陽電子ビーム砲『陽電子衝撃砲』の大威力と、リソースの大半を砲雷撃能力に集中させるという極端な設計コンセプトによって達成されたといっても過言ではない。事実、それ以外の性能――長期の作戦行動には不可欠な居住性や給兵・給糧設備――は艦の規模に比して著しく貧弱であり、就役当時はガミラス軍のクリピテラ級航宙駆逐艦にすら劣ると評されたほどだった。
 だが、当面の国連宇宙海軍の任務が質・量共に太陽系内防衛ですら精一杯という実態に鑑みれば、そうした選択も一つの見識であったと言えるだろう。本型単独での作戦行動期間は1ヵ月程度が限界とされたが、太陽系内及び近傍恒星系(アルファ・ケンタウリ)を作戦域とする限り、実質的な支障は殆どなかったからだ(勿論そこには、ガミラス戦役当時の地球艦艇の居住性・航宙性能が本型以上に劣悪であったという皮肉な現実も存在したが)。
 事実、2211年に勃発したガトランティス戦役においても、総動員された地球艦艇の大半の作戦行動期間は一ヵ月に満たず、戦役後において本型のサイズに似合わぬ高い攻撃力と防御性能こそが高く評価されたことを思えば、本型の要求性能は当時の地球の状況に合致していたと言えるだろう。

 また、本型はヤマト型と同じく国連統合軍の完全主導下で計画、建造、配備が行われたことも特徴としている。
 ヤマト型建造以前、国連宇宙軍とその下部組織である国連宇宙海軍の実戦部隊を構成していたのは、国連加盟各国が個別に建造した艦艇群であった。これらの艦艇は、戦役勃発と共に所属と指揮権を国連宇宙軍に委譲されたが、各国における個々の建造計画にまでは国連宇宙軍は指導力を発揮できず、事実上各国政府に委ねられていたのが実情だった。
 こうした状況は国連統合軍が初めて結成された第一次内惑星戦争時からのものであり、その弊害も長年指摘されていた。しかし、戦時における実戦部隊の指揮権委譲は“国連軍”という錦の御旗の存在から受け入れ可能でも、平時における国軍の整備内容に対する指導は『内政干渉である』という各国から強い反発を受け、その実現は困難を極めた。
 幸い、その後発生した第二次内惑星戦争も緒戦における苦戦こそあれ、最終的には艦隊戦力で遥かに優越する国連側の圧勝であり、国連宇宙海軍の実態が“寄り合い所帯”であるという現実とその弊害が露見することはなかった。
 しかし、2191年から開始されたガミラス戦役は、そうした内政的欺瞞を許容してくれる程、生易しいものではなかった。緒戦から打ち続く敗北によって多くの艦艇と乗員が失われた結果、各国や管区毎の部隊編成を維持することすらままならない状況に、瞬く間に追い詰められてしまったからである。
 その後、ようやく各国独自に進められていた建艦計画の統合・整理と各種工業規格の統一が国連主導下で開始されたものの、時既に遅しという観が強かった。宇宙艦艇建造に不可欠な太陽系内各地で産出される希少鉱物の入手はガミラス艦隊の跳梁とそれに伴う空間交通路破壊によって困難になっていたし、そして何より、遊星爆弾による本土無差別攻撃が各国の工業力を根こそぎにしつつあったからだ。
 しかしそれでも、国連統合軍は一隻でも多くの艦艇を就役、稼働させるべく最後まで努力を続けた。2199年1月のメ号作戦時、極東管区から二〇隻余もの艦隊が出撃可能であったのも、各国間での規格共通化が進んでいたことが大きかった。本出撃を実現するにあたり、他管区から貴重な整備部品や弾薬が積極的に極東管区に送り込まれたが、ある程度以上の装備共通化が進んでいなければ、こうした芸当も不可能だったからだ。
 ガミラス戦役後も、国連統合軍は装備規格の共通化を戦中以上の熱心さと執拗さで押し進めた。再建と言いつつも、実質的には殆ど一から建設されることになる戦役後の国連宇宙海軍は、可能な限り効率化と最適化を果たした組織でなければならなかった。地球内各国や国軍毎のエゴなど、強大極まりない星間国家を前にしては何の意味も無く、寧ろ害悪以外の何ものでもないことがガミラス戦役中に明らかになっていたからである。
 また、戦役末期の極度の窮乏状態が、国連とその諸機関(国連統合軍を含む)に強権に裏付けられた指導力・行政力を付与し、その必然として各国家の発言力が低下していたことも、戦後の国連主導を円滑なものにしていた。
 ボロディノ型宇宙戦艦はそうした中で計画・建造された艦であり、史上初めて各国同一規格・同一仕様で“量産”された戦艦であった。
 その本質は紛れもなく『最大多数の実現』であったが、それを実現する過程において、当時各国間に厳然として存在していた工業力や技術力格差を程度問題にまで縮小する成果をも挙げている。
 そしてそれは、後の地球規模の統一政体と統一軍――地球連邦と地球防衛軍――成立にあたっての貴重な礎の一つになるのである。



 ボロディノ型宇宙戦艦を語る上で『宇宙戦艦ヤマト』と『波動実験艦ムサシ』の存在を欠くことはできない。
 その生涯において、幾度となく人類を救う活躍を示したヤマトはともかく、ムサシについては多少出自の説明が必要だろう。
 波動実験艦ムサシは、種としての人類存続を目的として他恒星系への脱出が企図された“イズモ計画”に基づき建造されたヤマト型超弩級宇宙戦艦の二番艦である。
 よく知られている通り、“イズモ計画”はイスカンダル王国との友好的ファースト・コンタクト(スターシャ・メッセージ)によって破棄され、“ヤマト計画”へ発展的に移行した。その際、一番艦ヤマトの一日でも早い完成を目指して建造資源を集中することが決定されたことから、ムサシの建造は凍結され、既に艦体の六〇パーセントが完成していた彼女からも大量の資材・艤装品が引き抜かれた。
 ヤマト進宙時、紀伊半島沖熊野灘の偽装ドック上に放置されたムサシは“残骸”や“残滓”としか評しようのない有様であり、人類の期待と運命を一身に背負って旅立っていった長姉とのあまりの落差に、建造を担当した造船官・艤装員たちは落涙を禁じ得なかったという。

 完成以前に役割を終えたと見られていたムサシ――しかし彼女は後に、思わぬ形で再び脚光を浴びることになる。

 人類初の次元波動エンジン搭載艦艇として勇躍地球軌道を離脱したヤマトは、太陽系各地のガミラス軍勢力を撃破しつつ転戦(実態は紆余曲折の結果でもあったが)、遂にはガミラス帝国軍の牙城として長らく人類に脅威を与え続けていた冥王星前線基地の完全破壊にまで成功した。
 その事実は、太陽系内におけるガミラス軍機動戦力の実質的壊滅をも意味していた。ガミラスにとって冥王星基地は橋頭堡・兵站拠点としての機能を備えたストロング・ポイントに他ならず、その壊滅は補給・整備の不備という形で生き残りの機動戦力(艦隊)に緩やかなる壊死を強いるからだ。事実、冥王星前線基地の壊滅後、太陽系内に残存していたと思しき僅かなガミラス艦艇が系外に離脱していくのを、国連宇宙海軍では何度も観測している。
 冥王星前線基地の破壊を契機に、太陽系内から潮が引くようにガミラス勢力が撤退していったのとは対照的に、地球の防人たる国連宇宙海軍は活動を本格化させた。その目的は限定的な太陽系内制宙権(空間航路)の確立と、各地に残されたガミラス帝国軍の遺棄物資・施設の接収であった。接収物の多くには、ガミラスによって無力化措置やブービー・トラップが施されており、宇宙海軍の接収人員にもかなりの被害が発生した。しかし、犠牲を甘受して得られた成果は膨大であり、一部の研究者が公式の場で“宝の山”と発言し、物議を醸した程だった。
 特に、艦体の損傷は激しいものの機関についてはほぼ無傷のガミラス艦艇や整備用にストックされていたと思しき各種部品・部材類は、未だ次元波動エンジンの体系的知識に乏しい地球人類にとっては千金以上の価値を持っていた。更に、接収後の調査で、ガミラス艦艇の機関に用いられている技術が、イスカンダルから供与された技術と多くの点で共通点・類似性を有していることが明らかになり、研究者のみならず国連統合軍、各国の為政者たちをも驚かせた。それを契機に、イスカンダル―ガミラス陰謀説が再び国連内でクローズアップされたが、既にヤマトは直接交信すら不可能な深宇宙へと旅立った後であり、陰謀の可能性については“今さら是非も無し”として意図的に無視されている。
 しかし、そうした地球人たちの釈然としない想いとは裏腹に、太陽系内各地で確保されたガミラス製次元波動エンジン(ゲシュ=タム機関)とその関連部品は、地球単独での次元波動エンジン量産化に決定的な役割を果たすことになるのである。



 波動コア――現在では良く知られている通り、次元波動エンジンの起動キーの一つであると同時に、機関性能に決定的影響を及ぼす中核部品である。しかし、イスカンダル王国からの無償技術供与に波動コアの製造方法・技術は含まれておらず、物品供与のみが行われた。そうしたブラックボックス的供与が行われた背景には、イスカンダル王国の長い歴史に起因する現在の外交方針が存在したのだが、当時の地球人類にとっては自ら単独では次元波動エンジンを量産できないという事実こそが最重要の課題だった。
 ヤマト計画の成否に係らず、今後の太陽系防衛と人類存続に次元波動エンジン搭載艦艇の大量建造が不可欠であるのは誰の目にも明らかであり、それ故に地球人類はイスカンダル王国への背信となる可能性を承知しつつも、波動コアの独自開発に血道を上げることになる。
 地球人が初めて手にした波動コア――イスカンダル王国皇女スターシャ妃により地球へ譲渡されたイスカンダル製波動コア――は、ヤマト進宙まで殆ど日が無く、予備のコアも存在しなかったことから、非破壊状態での分析しか行うことができず、成果らしい成果を殆ど上げることができなかった。しかし、国連宇宙海軍が冥王星基地跡をはじめとする各地のガミラス軍拠点から回収したガミラス製コアが多数に上ったことから、厳重な防護措置を施した上で初めて解体を伴う本格的な分析調査が行われた。
 その結果、コアの中核を構成しているのが特殊な放射性物質(便宜上、ガミラシウムと呼称)であることが判明する。当時の人類の科学技術レヴェルでは完全な理論方程式の構築は不可能であったが、それでもこの物質が次元波動反応(余剰次元還元反応)に決定的役割を果たしていることが理解された。
 コアの基本構造がおぼろげながらも解明されたことで、以後の地球製波動コアの実用化は大きく進展した。理論面は未だ不十分ながらも、少なくとも波動コアを成立させる上で必要な物質の存在とその基本物性が判明したからである。そして太陽系内を改めて調査した結果、程なくしてガミラシウムと化学的特性において非常に類似した物質が木星圏で発見された。
 短期間での発見は決して僥倖などではなく、一つの仮説に基づく調査の結果であった。
 その仮説とは、ガミラス軍が隠密裏に設置し、ヤマトが波動砲で粉砕した木星の浮遊大陸基地――通常のガミラス根拠地とは大きく趣を異にするこの基地が、ガミラシウムやそれに準じる物質の回収・精製プラントだったのではないかというものである。
 他のガミラス基地とは構造、サイズ共に大きく異なっていること、地球人類が知る限り、過去に本基地が能動的軍事活動を行っていた形跡が全く見られないこと(ヤマトが遭遇するまで国連統合軍は本基地の存在すら認識していなかった)、それにしては守備についていた艦隊戦力が戦隊規模と大きすぎることから、本基地は軍事基地というよりも何らかの工業用プラントや重要資源の採掘リグだったのではないかという仮説が立てられていた。
 結果的にこの推測は的を射ており、木星を構成するガス雲からガミラシウムに相当する物質が発見された。これをガス雲から抽出し濃縮、更には結晶化させることで、次元還元物質の生成が可能となる。但し、ガス雲内の物質含有濃度は非常に低く、これを結晶化可能なまでに捕集するには莫大な時間と、何より大きなコストを必要とした。
 木星をはじめとして、宇宙に多数存在する大型ガス惑星には、何らかの次元還元物質が含まれている可能性は非常に高いが、濃度・総量については惑星毎に大きな違いがあった。宇宙レヴェルで見た場合、木星に含まれる次元還元物質含有濃度・量は決して低くはなく、寧ろかなりの“優良物件”だった。それ故に、ガミラスは未だ戦役継続中ながら、早々に本星から大型採掘リグを派遣し、次元還元物質の回収にあたっていたのである。
 当時、ガミラス帝国では大幅な版図の拡大とそれに伴う艦隊戦力の増勢により、域内で次元還元物質が慢性的に不足していた。前述した通り、次元還元物質(ガミラスにおけるガミラシウム)は非常に希少で、捕集後の生産性も劣悪であったが、恒星間戦争の帰趨すら決しかねない最重要戦略物質であり、その入手には常に大きな力が注がれていた。当然、次元還元物質を多く有する惑星を巡って星間国家同士が争うことも日常茶飯事であり、ガミラス戦役にしてもガミラスの探索艦隊を地球艦隊が先制攻撃したことで勃発したことが後に明らかになっている。勿論、表向きはガミラス帝国の国是である『イスカンダル主義の拡大浸透』の為の探索活動であり、その為の艦隊であったとされているが、彼らの“活動”が“優良物件”を持つ星系に対して優先されていたことでも、その実態は明らかだった。
 木星で発見され物質は、ガミラシウムに相当する太陽系固有の物質として“テラジウム”と命名され、本物質を用いた地球製波動コア(テラジウム・コア)第一号が製造された。
 完成したテラジウム・コアは、早速鹵獲されたガミラス艦艇にセットされ、各種能力評定が行われた。その結果、ガミラシウム・コアと同等の機関出力が得られることが証明されたことで、遂に地球人類は自らが単独で次元波動エンジン製造に成功したことを知るのである。
 時に2199年8月――ヤマトがイスカンダル王国よりコスモ・リバースシステムを受領してから間もなくの頃であった。



 だが、地球製波動コアの開発成功にも、当時の国連統合軍の評価は決して芳しいものではなく、寧ろ不満こそが多くを占めていた。ガミラス艦艇でのテストと並行して行われた波動実験艦『ムサシ』を用いた試験によって、テラジウム・コアをセットした次元波動エンジンでは、国連統合軍が望むようなスペックを発揮できないことが明らかになってしまったからである。
 この時までにムサシは、純国産コアであるテラジウム・コアとイスカンダル製コア(イスカンダリウム・コア)との性能比較を目的に突貫工事で仮就役を果たしていた。
 次元波動エンジンこそヤマトと同型の機関がほぼフルスペックで搭載されたが、その他の艤装品は次元波動関連装備のみを最低数量搭載しているに過ぎず、武装は波動砲とショック・カノンを第二砲塔二番砲のみ装備しているような有様だった。その他の主・副砲は砲身どころか砲塔からして据え付けられておらず、その他の高射砲塔や各種実体弾、航空艤装についても一切搭載されることはなかった。艦橋やマストも、各種装備のコントロールは艦外から行う前提で設置されず、彼女の異形を一層無骨なものとした。更に、艦の外装も、艦体強度と乗員や研究者の安全を維持する上で最低限必要と判定された四五パーセント程度が装着されているにすぎず、その姿は正に廃艦同然であったという。
 当然、進宙どころかドックからの離床すら不可能で、『波動実験“艦”』と銘打たれつつも、その実態は不動の地上施設に他ならなかった(我々が知るムサシの姿が具現化するのは、更に一〇年以上の歳月を待たなければならない)。
 しかし、ヤマトと同型の機関を搭載しているだけに、テラジウム・コアとイスカンダリウム・コアの比較検証には申し分ない研究素体であり(イスカンダリウム・コアの性能データは、太陽系離脱前のヤマトから送られてきたデータが用いられた)、地球における最初期の波動物理学構築においてムサシの果たした役割がヤマト以上と評される所以である。

 だが、テラジウム・コアをセットした波動実験艦ムサシを用いて行われた数々の実証試験の結果は、国連統合軍にとって失望を禁じ得ないものだった。テラジウム・コアはイスカンダリウム・コア装備時に比べて次元還元効率で著しく劣り、システムの稼働に膨大な余剰出力を要求する『次元波動爆縮放射機』『次元波動振幅防御壁』共に実装不可能であると試験結果は示していたからである。
 それぞれ“波動砲”と“波動防壁”と通称されるこれらの装備は、波動エンジン実用化後も数的劣勢が確実な国連宇宙海軍が圧倒的多数のガミラス艦隊を打破する上で必須の装備として捉えられており、出力の不足からこれらを装備できないという事実は、国産波動コア開発成功に対する評価を激減させてしまった。
 しかし、極端なコア及び機関の大型化やクラスター化(多発化)を行わない限り、波動砲(ゲシュ=ダールバム)や波動防壁(ゲシュ=タム・フィールド)を攻防兵器として装備できないという点はガミラスのゲシュ=タム機関も同様であり、決して当時の人類の科学技術力が極端に劣っていた訳ではない。
 2199年12月にコスモ・リバースシステムを回収したヤマトが地球に帰還した後、改めてヤマトが実装した波動コアの調査が行われた。調査は今回も非破壊で実施されたが、コアの中枢に技術本部が推測したような非常に高い次元還元効率を持つ物質(イスカンダリウム)の存在が初めて確認された。だが、太陽系内をくまなく調査しても、イスカンダリウムに匹敵する第二のテラジウムを発見することは遂に叶わなかった。
 更に2201年、地球・ガミラス講和条約締結時に仲介者として地球を再び訪れたイスカンダル王国ユリーシャ妃に、イスカンダル製波動コア若しくはイスカンダリウムの大量譲渡を申し入れるも、妃の回答はにべもないものであった。

 曰く――イスカンダルの“救済”は、種の存亡に係る危機に際しての緊急避難にのみ限定される――と。

 この回答を以って、地球はヤマト並みの高性能艦の大量建造と保有を諦めなければならないことが確定的となった。しかし、この頃には既にテラジウム・コア搭載波動エンジン装備した艦艇の量産が開始されており、国連統合軍はその歩みを更に早めることになる。種の滅亡すら強く意識せざるを得なかった当時の地球人類に、いつまでも理想性能のみを追い求めていられるような余裕などなかったからだ。



 国連統合軍が次元波動エンジンを自らの装備体系に組み込む端緒は、既存艦艇への搭載改装であった。改装とはいえ、テラジウム・コア搭載波動エンジンの性能精査と運用ノウハウ確立を兼ねており、得られた各種データは急ピッチで設計作業が進む新型艦艇にもリアルタイムでフィードバックされている。その新型艦艇群の配備も2201年初頭から順次開始され、その後は急速に数を増やしていった。
 従来機関では戦艦・巡洋艦クラスにしか装備できなかった軸線砲式大口径ショック・カノンを四千トン級の小艦に搭載し、更に限定的な連射すら可能とした『ハント型宇宙フリゲート』。イソカゼ型を上回る重雷装と高機動性を兼ね備えた『リヴァモア型宇宙駆逐艦』。そして波動砲に代わる“新型決戦兵器”を初めて搭載した『アルジェ型宇宙巡洋艦』等だ。
 前述した通り、テラジウム・コア搭載次元波動エンジン(正式名称:ロ式波動機関)は、性能面では同規模のイスカンダリウム・コア搭載次元波動エンジン(正式名称:イ式波動機関)には到底及ばなかった。しかしそれでも、ガミラス艦艇を一撃で撃破可能な威力を有する陽電子衝撃砲を砲塔式で多数搭載可能であり、それを実際に具現化した新型艦艇の配備は、ガミラス戦役において辛酸を舐め尽くした観のある一線部隊将兵を狂喜させた。
 しかし、最初期に配備された新型艦艇はいずれも二万重量トンに満たない中型以下の戦闘艦で、同規模のガミラスやガトランティス艦艇に対しては互角以上の戦闘能力を有していたものの、ガミラス軍のガイデロール級やハイゼラード級といった300~400メートル級の大型戦艦に対して劣勢であるのは明らかだった。勿論、一隻に対して複数の艦であたることや、待ち伏せ等の戦術を徹底することで対抗は可能だが、いずれにしても自らの戦力や戦術的イニシアティブを犠牲にする覚悟が必要な戦闘を強いられるのは確実だった。
 当然、国連統合軍の一部はこれらに匹敵、あるいは凌駕する大型戦闘艦――つまりは戦艦――の建造を強く望んだが、その実現は2205年を待たなければならなかった。ヤマトという習作は存在していたものの、未だロ式波動機関を搭載した大型艦艇の設計・建造ノウハウは全般的に不足気味であったし、何よりほぼゼロからスタートした国連宇宙海軍再建において、まずもって重視されたのが“数”という要素だったからだ。

 再建計画(正式名称は国連宇宙海軍補充計画)が最初期の目標として掲げたのは、太陽系内制宙権の継続的確保であり、それを可能とする次元波動エンジン搭載艦艇の必要最低数量の急速整備であった。
 ヤマトが帰還し、コスモ・リバースシステムを用いた地球環境回復プロジェクトが実動した2200年初頭、国連宇宙海軍が保有していた稼働宇宙艦艇は三〇隻にも満たず、これでは継続的な太陽系内制宙権の確保など画餅でしかなかった。再建計画では、第一次三ヵ年計画が完了する2203年度中に実動艦艇数を一〇〇隻にまで増強すると共に、艦艇稼働率の向上を目的とした各惑星・衛星根拠地整備にも力が注がれることが決定した。
 その結果、2201~2203年の第一次三ヵ年計画では、建造に手間のかかる(量産が困難な)戦艦級大型艦艇の建造は見送られ、次期三ヵ年計画(2204~2206年)策定時に改めて検討されることになった。
 この決定に対し、より巨大且つ強力な艦を求める軍政部門――軍務局――からは不満の声が上がったが、実戦部隊である国連宇宙海軍司令部においては概ね好評を以って迎えられた。一線部隊からすれば、現在建造と配備が進んでいる中型以下の艦艇ですら、同規模のガミラス艦艇に同数で対抗できるという点で、嘗てからすれば“夢のような艦”であり、そうした艦を主力とするのであれば、個艦性能よりも何時如何なる状況でも戦場展開が可能な数量こそを重視するのは当然のことだったからだ。
 こうした思考は、苛烈な戦場での実際を知るからこその妥当且つ健全なものであり、第二次三ヵ年計画においてようやく具体化を果たしたボロディノ型宇宙戦艦の仕様決定にも強い影響を及ぼすことになる。ヤマト型以上の巨大戦艦(超弩級戦艦)を求める軍務局の要求を再び抑えて、建造隻数を何よりも重視した仕様性能が取りまとめられたことがその証左だ。



 本型の266メートルという全長サイズは、三ヵ年で一六隻以上という本型の調達要求隻数と、当時世界各地で稼働状態にあった建造施設の規模・数量を勘案して導き出されたものだった。現在の我々からすれば小型に感じるものの、当時の地球の建造能力と予算、そして現実的な運用を考えると、これでも限界に近い、いや部分的には限界を超えた規模の艦だった。ガミラス戦役時の地球戦艦は、一部の大国が少数保有した超弩級艦(300メートル超)を除き、概ね200~250メートルが標準サイズであり、ヤマト就役後に改められるまで、全長270メートルのデストリア級重巡洋艦を『戦艦』と識別していた程だ。
 実際、できるだけ規模を抑えたとはいえ、それでもボロディノ型の多数建造には懸念があった。その最大のものは、建造を担当する世界各地の施設毎に、かなりの能力・実績差異が存在したことだった。
 いつの時代も、戦艦とは最先端科学技術・工業技術の結晶であると同時に、繊細さすら要求される芸術品でもあった。ガミラス戦役中期以降、それまで各国毎にばらばらだった装備品や工業規格が多くの困難を乗り越えて統一されたことで、巡洋艦以下については、どの国の建造艦であれ最低限の同一品質・性能が確保されていた。しかし、規模にして三倍以上、投入される技術水準も遥かに高度となる戦艦建造においても、均一的な品質が確保できるのか、大きな不安が抱かれていたのである。
 最終的に国連統合軍は、この困難な命題を乗り越えることに成功した。各建造施設自身の懸命な努力や、国連宇宙軍艦政本部の献身的な技術支援は勿論だが、やはり本型以前の波動エンジン搭載艦艇の多数建造が各施設の能力を底上げしていたことが大きかった。それでも、引き渡し検査時の手直し指示や、それに伴う就役遅延も多数に上っており、結果的には大成功と評されたボロディノ型にしても、当時の地球の力量ぎりぎりの艦であったことは間違いない。
 また、本型はようやく建造にこぎつけた『次元波動エンジン時代の新型戦艦』であったが、量産性やコスト・コントロールには従来艦艇以上の注意が払われており、その点は直線を主体とした本型のシンプルな外観にも表れている。装備品・艤装品も、後のアンドロメダ型とは異なり新規開発されたのは主砲等、極少数に過ぎず、大半を既に大量生産されている既存品が占めていた。その結果、ボロディノ型の単位重量あたりの製造コストは、ヤマト型や後のアンドロメダ型と比べて1/10近くにまで抑えられている(もちろん、同型艦多数が建造されたことによる量産効果が最大の要因だったが)。
 これに対し、軍務局が求めた400メートル超級巨大戦艦の建造を想定した場合、建造コストはボロディノ型の4~5倍、また、建造施設の不足から三年間での建造可能数は僅か四隻に止まるというのが艦政本部における検討結果だった。但し、建造可能とされた四箇所の施設は、大型艦建造に豊富な実績と高い技術力を有していたことから、建造そのものに大きな不安はないとも結論付けられていた。しかし、実際の運用を考えると、400メートル超という巨体は、少なくとも2200年代初頭における地球の社会資本には手に余る存在だった(その点はヤマト型も同様だったが)。建造はともかく、整備用ドックや入港可能な港湾まで大きな制約を受けてしまう為、象徴として以外の実戦力は著しく難があると最終評価は散々だった。
 しかし、建造決定にあたり、経済性と実質的な運用における優越が認められたボロディノ型とて、当初から万人にその存在と有効性を認められた訳ではなかった。



 本型が第一の仮想敵としたハイゼラート級航宙戦艦は全長でボロディノ型の1.5倍、規模においては3.5倍もの巨躯を有することから、本型のような小型戦艦で本当に対抗可能なのか、特に文民サイドから不安の声が上がっていたからである。これに対し、本型の計画を取りまとめた国連宇宙軍艦政本部は、本型の用途を極限まで限定し、リソースの集中配分を行うことで対抗は可能と回答し、最終的な了承を得ている。
 これを言い換えれば、本型の能力を砲雷撃戦における火力と防御力に特化させ、他の能力は全て二義的なものとして最小化、乃至は削除することで、少なくとも攻防性能に限っては互角の性能を実現するというものであった。
 巨大な版図を有するが故に、ガミラスやガトランティスの戦艦が中長期の域内航宙を重視した “大型汎用艦”としての向きを強めざるを得ないことを思えば、あえて汎用性と中期以上の作戦行動能力を捨て去って、砲雷撃戦能力にのみ特化したボロディノ型の建艦思想は、未だ単一星系国家に過ぎない地球だからこそ許容可能な逆転の発想と言えた。
 しかし、ショック・カノンと空間魚雷という地球独自の“長槍”の存在が、そうした極端な思想に、確固たる実現性を与えることになる。

――後編につづく


うーむ、前編は殆ど“機関話”に終始してしまいました(^_^;)
後編も何とか明日公開したいなぁ・・・・・・。
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まさかの1/1000 n-ノーチラス号 コトブキヤから発売!!

2014-07-11 19:23:11 | 雑談など
いやー、このニュースには久しぶりにビックリしました(^_^;)
なんとコトブキヤさんから1/1000 n-ノーチラス号が本年11月に発売されることになったみたいです。



全長は333㎜と、実は2199ヤマトと全く同サイズだったりするのですが、これはきっと某監督さん得意のパロディーなんでしょうね(笑)
原作でのn-ノーチラス号の発進シーンも、明らかにヤマトのパロディーでしたし(^^;)

同じ1/1000スケールキット(しかも同サイズ)ということで、発売されたら1/1000の2199ヤマトと並べてみる方も多いと思います(^o^)
ウチにはJ-factoryさんのガレージキットもあるので、コトブキヤさんのキットを入手したら、ヤマトと全く同じツートンカラーや地球防衛艦隊カラーとかにしてみても面白いかもしれませんw

それにしても、ハセガワさんのアルカディア号といい、今回のn-ノーチラス号といい、ここ数年の宇宙戦艦プラモの復権はすごいですね♪ヽ(^◇^*)/ ワーイ

不思議の海のナディア N-ノーチラス号 (1/1000スケール プラモデル)
壽屋
壽屋


さて、予告していました2199版主力戦艦の妄想設定の方ですが、お陰様で殆ど書き上がりました(^o^)
ただ、少し書き足りない部分もあるので、この週末に公開するのは『前編』のみになるかもしれません。
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