我が家の地球防衛艦隊

ヤマトマガジンで連載された宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部「アクエリアス・アルゴリズム」設定考証チームに参加しました。

ヤマトⅢの“護衛戦艦”を箱庭の中で妄想してみる②

2012-08-04 11:55:08 | 1/1000 宇宙戦艦ヤマトⅢ 護衛戦艦
では、矢継ぎ早ではありますが、『護衛戦艦妄想』の第二回『アリゾナ編』いきます。
いやはや、本当にアリゾナってカッコいいです。
ストーリー上、沈まないといけなかったにしても、せめてこんなドラマが欲しかった・・・・・・とばかりに(個人的に)かなり駄文にも力が入りましたw
このアリゾナって、2199の出渕総監督デザインなんですよね?
いや~、あっちでもこっちでも楽しませていただいています、総監督w
でも私、1/700アリゾナが心の底から欲しいのです、総監督(泣)
今回も画像は大隈さんから1/1000アリゾナをお借りしましたが、我が家にも1/700アリゾナが欲しくて欲しくて・・・・・・いや、だって、うらやましい・・・・・・(´・ω・`)


(注:本記事内の画像は『大隈雑記帳』大隈様より御了承いただき、転載させていただいたものです。無断転載等は之を固く禁じます)

【アリゾナ級護衛戦艦】



 『アリゾナ級護衛戦艦』は、まさしくアメリカ合衆国が自らの威信をかけて建造した大型戦艦であった。その建造背景には、公にこそされなかったが、何度となく地球を救う活躍を示した宇宙戦艦ヤマトに対する“復讐”の念があったと言われている。
 ヤマトやノーウィックなど、ガミラス戦役時のアーク・シップ建造計画において、スターシャメッセージ到着直前まで最も建造が進捗していたのはアメリカ合衆国建造船であり、その船は完成の暁には“アリゾナ”と命名される予定であった。
 だが、ハワイ諸島・旧真珠湾軍港跡の極秘ドックで建造されていた彼女は、不幸にもスターシャメッセージが届く僅か数ヶ月前にガミラス軍によって発見され、修復不可能なほどにまで破壊されてしまう。その結果、人類初の波動エンジン搭載艦としての栄誉と苦難は、アリゾナに次ぐ建造進捗状態であった日本国建造船『やまと』――後の宇宙戦艦ヤマトに変更されることになった。
 その経緯と悔恨を誇り高き新大陸人たちは忘れていなかった。建造プロジェクトチーム立ち上げの会議において、プロジェクトリーダーは第一声としてこう言い放ったという――『我々が建造するのはただ一つ、“スーパー・ヤマトクラス”だ。他の“ザコ”には目もくれるな』と。
 彼らの異常なほどの熱意は、建造予算と規模にもストレートに反映されていた。建造艦は初期設計案ですら乾重量九万トンにも達し、そのサイズは各国で同時期に建造が進められていた『星系間護衛艦艇調達助成制度』適用艦の中でも最大であった。
 波動機関には、アンドロメダ級戦略指揮戦艦と同型機関が採用され、更にヤマトにおいてプロトタイプ実証が完了したばかりのスーパーチャージャーも建造時から装備している。それでも、高度な戦略指揮システムを満載したアンドロメダ級より実質的に一〇パーセント以上軽量で、後述する砲装備の違いやスーパーチャージャーの恩恵まで得られた結果、その機動性は戦術的にも戦略的にもアンドロメダ級のそれを完全に凌いでいた。
 当然、主砲についても、アンドロメダ級と同等の(そしてヤマトを凌ぐ)二〇インチ砲搭載をプロジェクトチームは強く希望していた。しかし、助成制度において定められた装備仕様規定から、一六インチ砲搭載に甘んじなければならなかった。
 これは、当時実用化されたばかりの『波動カートリッジ弾』及び『コスモ三式弾』の安定供給と統一運用を考慮してのことで、本制度適用下で建造される『第一種艦(護衛戦艦)』の主砲口径は全て一六インチに統一されることが厳しく定められていた。また、過去の戦役における戦訓から、地球艦艇のショックカノンの威力は列強でも随一であり、戦略指揮戦艦やヤマトのような装備実験艦を兼ねた特殊艦艇でもない限り、一六インチ砲装備で十分と考えられていたことも一因だった。
 デザリアム戦役においては、デザリアム帝国大型艦艇や機動要塞に搭載された超重力シールドによってショックカノンを無効化されてしまうという局面も生じていたが、それは一八インチ砲を搭載するヤマトであれ、二〇インチ砲を搭載するマルスやネメシスであれ同様であったから、シールドを物理的に打ち破ることが可能な実体カートリッジ弾が実用化された現在においては、大きな懸念とはされなかった。




 念願の二〇インチ砲搭載こそ断念せざるを得なかったものの、設計・開発陣は許容された仕様規定内でベストを尽くした。搭載された一六インチ砲は新開発の六〇口径砲身を採用し(ボロディノ級主力戦艦は五〇口径)、収束率向上に伴って射程と貫通力が著しくアップした。搭載門数も、地球戦艦としては初めて主砲の舷側装備を実現、三連装五基一五門もの砲門数を誇る。舷側装備のメリットは大きく、全砲門数はボロディノ級の九門に対し一・七倍弱ながら、前方指向火力はボロディノ級六門に対して一二門と二倍にまで達した。
 また、搭載機関が二〇インチ砲一二門装備に対応したアンドロメダ級の改良型であった為、三門多いとはいえ一六インチ砲へのエネルギー供給能力としては過剰な程であり、全門斉発時においても、まるで速射砲のような高速集中射撃が可能であった。
 その凄まじいばかりの砲威力は、本級完成後に地球防衛艦隊とアメリカ合衆国軍が共同で実施した戦術研究会において、遺憾なく発揮されることになる。本研究会最大の注目は、大規模に近代化された第二次改装後の宇宙戦艦ヤマトと最新鋭護衛戦艦アリゾナの戦術戦闘シミュレーションであった。
 電算機上のシミュレーションとはいえ、その過程と結果はあまりに凄絶だった。急速接近を図るアリゾナに対し、舷側を向けることで全門斉発態勢を整えたヤマトは、口径に勝る優位と高い砲術技量を活かした先制主砲射撃を開始。これに対し、アリゾナはヤマトに対して正艦首を向けた進路・態勢を変更することなく接近機動を継続、やや遅れて主砲射撃を開始した。
 ヤマトの一八インチショックカノン九門に対し、アリゾナが艦首方向に指向可能な一六インチショックカノンは一二門、砲口径の差異を考慮すれば、寧ろヤマトが有利にすら思える戦術状況だった。しかし――実際の戦闘推移は全くの正反対だった。
 アリゾナの主砲発射速度はヤマトの実に二倍、つまり実質的には一八インチ砲九門対一六インチ砲二四門の殴り合いであり、単位時間あたりの投射エネルギー量に換算しても、アリゾナの圧勝だった。更に、ヤマトは自らの攻撃力を最大とする為に、アリゾナに対し舷側を向けるという戦術行動を選択していた。だがそれは、自らの被弾面積をも最大化する諸刃の戦術であった。これに対し、アリゾナはヤマトに対し常に正艦首を向けた状態――前方投影面積を最小にした状態を維持して砲撃戦を継続していた。
 結果はあまりにも無残であった。命中率に優れる(シミュレーションにあたっては、乗員技量に至るまで、できる限り忠実に再現される)ヤマトの一八インチショックカノンは、前方投影面積最小という悪条件下でも、アリゾナより先に複数の命中弾を発生させていた。しかし、その巨躯にアンドロメダ級と同等の防御力(二〇インチ砲対応防御)を有するアリゾナは、一八インチ砲数発程度の被弾では屈せず、距離を詰めることで自らも遂に命中弾を発生させた。そして一たび命中弾が発生してしまえば――あとは総投射エネルギー量で圧倒するアリゾナの独壇場であった。
 一八インチショックカノンに対応した直接防御力と、地球艦艇中最良と評される優れたダメージコントロール能力を持ったヤマトに対し、いくら収束率が向上した新型砲身とはいえ、一六インチショックカノンでは確かに威力不足は否めなかった。しかし、ごく短時間の内に一〇発単位の被弾が集中して続けば、多少の威力不足など吹き飛んでしまう。
 事実、ヤマトの初弾発射から僅か一〇分程度の交戦で、五〇発以上の一六インチショックカノンを被弾したヤマトは右舷側(アリゾナに舷側を向けた側)に指向可能な全兵装使用不能、機関損傷、遂には撃沈認定されてしまう。これに対し、アリゾナの被弾数もかなりの数(一一発)に上ったが、目立った損害は第二主砲が基部への直撃によって使用不能になったくらいで、損害判定は中破であった。
 “もはや別物”と評されるまでに進化した筈の第二次改装後のヤマトが、アリゾナ級の一六インチショックカノンの高速斉射で滅多打ちにされていく姿に、防衛艦隊側参加者は恐怖感すら抱いたとされる。彼らの恐怖は根拠のないものではなかった。ヤマトとの戦闘結果を見る限り、彼らがその性能に絶対的自信を持っていたアンドロメダ級戦略指揮戦艦ですら、アリゾナ級の常軌を逸した高速斉射に耐久し得るとは思えなかったからだ。
 その為、防衛艦隊側は合衆国側からアンドロメダ級との戦闘シミュレーションを申し入れられた際には、防衛機密を盾に辞退する腹積もりであったとされる。だが、それは杞憂に終わった。合衆国側からは一言たりとて、アンドロメダ級との戦闘シミュレーションを求める要求・要請は上がらなかったからである。
 つまり――地球防衛艦隊自慢の戦略指揮戦艦アンドロメダ級とて、ヤマトへの復仇に燃える合衆国人たちにとっては“雑魚(ザコ)”に過ぎなかったのだ。


 更に、通常外砲戦能力――波動砲――においても、本級には過去にない新たな取り組みが行われていた。従来、アンドロメダ級の波動機関において出力一二〇パーセント出力で波動砲投射を行う場合、波動砲門数は二門が必須であると考えられていた。これは、アンドロメダ級の大型波動機関から放出されるエネルギー量があまりに莫大であった為、一門で発射した場合、最もエネルギー接触負荷の大きい砲口部が、強度的にも耐食的にも維持できないのがその理由であった。しかし、合衆国プロジェクトチームは、この問題を新技術の投入によって解決していた。
 投入された新技術とは、デザリアム帝国の誇る先端技術――超重力制御技術であった。具体的には、波動砲発射直前の砲口部に超重力フィールドを形成、砲口部のみを超重力でコーティングするように保護した上で、波動砲投射を行うのである。
 二門に分散させていたエネルギーを同口径の一門に絞って発射することで、エネルギー圧密度は飛躍的にアップし、射程・威力の劇的な向上が期待された。しかし、実際の発射実験においては、開発者たちですら予想もしていなかった結果を引き起こしてしまう。
 同級に搭載されていた波動砲は、いわゆる収束型であった(あえて収束型が選択されたのも、やはりヤマトが搭載する新・波動砲への対抗意識故と思われる)。波動砲投射時、波動エンジンから一門の砲口へと強制的に供給された波動エネルギー流は、砲口部で密度的な収束限界に達し――予想外の特性逆転現象を発生させた。砲口から放出された波動エネルギーは、“収束”から“拡散”へと逆転現象を起こしている過程にあり、その光芒は人類が初めて目にする軌跡と結果を残したのである。
 発射実験後の評価において、その実質有効射程は第二次改装後のヤマトの新・波動砲を更に五〇パーセント近くも上回っていた。そして、真に驚くべきは被害有効直径であった。
 本級の、収束から拡散への逆転過程にある波動エネルギー流は、オリジナルの拡散波動砲のような爆発的“拡散”現象を起こさず、緩やかな“拡大”現象を維持しながらひたすら延伸していったのである。さすがに、拡散波動砲ほどの広域破壊効果は望むべくもなかったが、従来型の収束波動砲に比べれば最終有効直径は六倍にまで達していた。また、威力的にも拡散波動砲のエネルギー爆散流(波動爆散弾)とは比較にならないほど強力であり、拡散波動砲では撃破困難な超大型艦艇や宇宙要塞級のターゲットに対しても致命的打撃を与え得ると評価された。
 半ば偶然に近い形で確立された本級の波動砲は、地球防衛軍艦政本部並びに防衛艦隊でも大きな驚きをもって迎えられた。その後、防衛艦隊所属艦艇を用いた再現実験も実施され、効果と安全性が確認されると、地球防衛軍正式装備化に向けての調整と交渉が行われることになる。後に、『拡大波動砲』と命名されることになる新型波動砲誕生の瞬間だった。
 尚、アメリカ合衆国に対しては、地球防衛軍の将来装備開発に対する貢献大として、今後十年間の連邦分担金の一時引き下げが実施されている。


 “ヤマトを超える大戦艦”“スーパー・ヤマトクラス”として計画された本級は、名実共にそれを具現化した戦艦として完成した。これほどの大戦艦を建造する技術や予算を持たない国々の一部からは“遅れてきた大戦艦”“足りないのは戦果だけ”などと揶揄する声もあったが、合衆国人たちは気にも留めなかった。
 冠せられた艦名については、三つの候補があったと言われている。具体的には『アリゾナ』『アイオワ』『モンタナ』である。其々に相応しい所以と背景があったが、最終的には建造プロジェクトチームの総意として『アリゾナ』が強く推されたことが決め手となり、本級は『アリゾナ級護衛戦艦』と称されることが決定した。


 本級はその戦闘能力の高さから、“各国護衛戦艦中”最強という評価が定説である。しかし、その評価は正確であっても、必ずしも適切ではない。なぜなら、地球が保有する“全戦艦”に枠を広げても、彼女とその妹は間違いなく最強級の存在であったからだ。
 幾度となく地球の危機を救った伝説の宇宙戦艦、二〇インチショックカノンを槍衾のように備えた戦略指揮戦艦とその拡大改良型、機能性と量産性を兼ね備えた次世代の主力戦艦群、それらの存在と比較しても、彼女たちの戦闘能力は劣らないどころか、部分的には確実に優越していた。
 より穿った見方をすれば、アリゾナ級を“護衛戦艦”と称することそのものが適切ではないのかもしれない(艦種類別上は正確であっても)。彼女たち程、空間打撃戦(本気の殴り合い)に特化して設計・建造された宇宙戦艦は、全地球戦艦を見渡しても極めて稀であり、“護衛戦艦”という分類など、寧ろ方便に近かった。だが、そうまでして仕立てられた打撃戦能力は筋金入りであり、本級が2200年代の地球が建造した幾多の宇宙戦艦の中でも最強の一角を占める存在――最強戦艦の一隻であったのは間違いなかった。




 一番艦アリゾナ就役とほぼ時を同じくして、ガルマン・ガミラス帝国軍の惑星破壊ミサイル誤爆を原因とした太陽異常膨張事件――所謂“太陽危機”が発生した。
 地球防衛艦隊所属艦では長距離・長期航宙に豊富な経験と実績を持つ宇宙戦艦ヤマトや、大改装によって長期航宙機能を実験的に付加されたグローリアス級宇宙空母等が所謂“第二の地球探し”へと慌ただしく旅立っていった。
 だが、当時の防衛艦隊所属艦艇において、そうした単独・長距離調査任務に耐え得る艦は、非常に数が限られていた(艦隊・戦隊規模の派遣は支援艦艇数の限界から、更に困難だった)。その結果、地球連邦政府は構成各州への十分な根回し後に、順調に就役が進んでいた各国“護衛戦艦”“護衛巡洋艦”に対して出動要請を行うことを決定する。
 要請は、防衛艦隊への編入という形ではなく、あくまで連邦から各州・各国への任務委託という体裁が採られた(故に、任務に要する費用は全額地球連邦政府が負担するものとされた)。
 この要請に対し、主に旧大国を中心とした国家複数が応じ、調査専用船と就役したばかりの護衛戦艦・護衛巡洋艦を組ませた小規模な探査船団が、其々の担当宙域に向かって順次出航していった。最初期に地球を後にした護衛戦艦の中には、就役後半年にも満たないアリゾナの姿もあった(二番艦“ペンシルバニア”は未だ艤装中であった為、地球に残留)。


 太陽危機発生当時、銀河系ではボラー連邦とガルマン・ガミラス帝国が文字通り銀河を二分する大戦争(第一次銀河大戦)を繰り広げており、地球を発った探査船団はこの戦乱の影響をまともに被ることになった。
 当初は、開拓進むアルファ星へ攻撃をしかけてきたガルマン帝国が交戦国として認識されていたものが、本帝国が嘗ての大ガミラス帝国の後継国家(ガルマン・ガミラス帝国)であることが判明、国家元首であるデスラー総統との電撃和解が成立したことによって、自動的に敵手がボラー連邦へと切り替わってしまったのである。
 尚、ボラー連邦と地球連邦が交戦状態に陥ってしまったのは、地球がガルマン・ガミラス帝国の友邦国家であると認識されてしまったことが主たる原因とされている。しかし、これには異論もあり、探査活動中の宇宙戦艦ヤマトがボラー連邦所属惑星を訪問した際、ヤマト艦長の示した国際常識を無視した独善的対応が原因だとする主張もある。
 原因はともあれ、交戦国の急激な変転は、ヤマトを含む探査艦、探査船団に多大な影響を与えた。探査活動中の船団に、ボラー連邦軍が政治的意図に基づいた攻撃を企てたからである。最初に攻撃ターゲットとされたのは、偶然ボラー連邦軍の哨戒網に捉えられた北アメリカ州の探査船団、地球連邦呼称“NA-01”であった。
 “NA-01”探査船団は、護衛戦艦アリゾナと非武装の惑星探査船・航路調査船各一隻の計三隻で編成されており、当時は担当宙域であるスカラゲック海峡星団を探査中であった。そこに地球船団襲撃を命じられたボラー連邦第一二打撃艦隊が突如として襲い掛かった。
 ボラー艦隊の総数は一〇〇隻を遥かに超えており、ボラー艦隊接近を探知した“NA-01”船団指揮官(アリゾナに座乗)は即座に、船団に対し緊急ワープによる宙域離脱を命じる。しかし運悪く、長期に渡る探査活動でオーバーワーク気味だった探査船が機関不調をきたしてしまう。
 機関修理に要する時間は最低三〇分。船団指揮官は探査船と調査船に対し修理完了後の速やかな離脱を命じると、次席指揮官(探査船に座乗)に以後の船団指揮権を委譲した。そして、事態を悟った次席指揮官の制止のコールを無視し、アリゾナに対してはボラー艦隊迎撃と探査船死守を命じたのである。もちろん、指揮権を委譲した“前”指揮官はアリゾナに座乗したままであった。
 ヤマトとの戦闘経験によって、地球艦艇が搭載する決戦兵器――波動砲の恐ろしさを知るボラー艦隊は、急迫によって近距離戦闘に持ち込み、数の優位で一気に探査船団を揉み潰す策だった。その意図は半ばまで成功し、船団のワープトラブルに係る混乱によって貴重な迎撃準備時間を失ったアリゾナは、新型波動砲の発射態勢を整えることができなかった。
 しかし、アリゾナの極限まで研ぎ澄まされた“牙”は波動砲だけではなかった。最大戦速で突進してきた大小一五〇隻にも及ぶボラー艦隊に対し、アリゾナは敢然と艦首を向けると、前方指向可能な一二門のショックカノンを用いた全力主砲射撃を開始したからである――。




 ――二八分後、機関修理が完了した探査船と調査船は緊急ワープによって宙域を逃れた。非武装船であることを示す二隻の純白の船体には被弾の跡一つ、焦げ跡一つ存在しなかった。それは、アリゾナとそのクルーたちが、軍艦・軍人としての誓約を見事果たした何よりの証であった。
 アリゾナ最期の様子は、後に着底した亡骸が同星団β星において発見され、回収された航宙・戦闘記録から詳細が明らかになった。


 ――ボラー連邦艦艇一五三隻中、撃沈確実三四隻、不確実二〇隻以上。戦闘開始から二九分後、探査船の離脱と本艦任務完遂を確認。されど、本艦は機関部損傷大にて離脱は叶わず。残存兵装も僅かにて、これ以上の交戦は不可能と判断。全通信手段を用いて降伏の旨打診するも、交戦勢力は断固として之を拒否。誠に遺憾なれど、本艦総員、全力抗戦を以って己が誓約を果たさんとす――。

 ボラー連邦第一二打撃艦隊が護衛戦艦アリゾナの撃沈を確認したのは交戦開始から地球時間で八四分後。その時には、一五〇隻を超えていたボラー艦隊は半数以下にまで撃ち減らされていた。艦隊旗艦の相次ぐ喪失によって指揮権を継承していたボラー艦隊指揮官代行(それも四人目の)も三日後には任を解かれ、本国へと強制送還されている。
 更に、アリゾナが残した戦果はそれだけにとどまらなかった。ただ一隻の戦艦を撃沈する為だけに完全編成の打撃艦隊を実質壊滅させられてしまったボラー連邦軍上層部が、その事実に震撼したからである。
 しかも、彼らが最も恐れる連邦首相からは、早くも本戦闘結果に対する責任の追及と、地球探査船団に対する更なる攻撃を求める強い命令が発せられていた。責任の追及については、生き残った艦隊最上位者の首を(物理的に)差し出すことで解決できると思われたが、より切実なのは“更なる攻撃”の方であった。
 完全編成の一個打撃艦隊を繰り出し、戦力半減以上の大損害と引き換えの戦果が戦艦一隻では、さしもの大国ボラーであっても、軍事的にも政治的にも許容できる限界を遥かに超えていた。もちろん、より大規模な戦力を繰り出せば、相対的に損害は抑えられるかもしれないが、本来の主敵であるガルマン・ガミラス帝国の存在を思えば、それも容易ではなかった。
 元々、今回の一個打撃艦隊派遣にしても、ベムラーゼ首相からの厳命に基づくものであり、軍上層部としては対ガルマン・ガミラス戦闘正面からの戦力引き抜きとイコールである艦隊派遣には非常に消極的だった(反対とまでは主張できなかったところに、当時の首相と軍の力関係が表れている)。
 更なる地球探査船団攻撃を実施するとなれば、辛うじて均衡状態を維持している最前線からの兵力引き抜きは避けられず、かといって、中途半端な戦力で攻撃を仕掛ければ、損害よりも恐ろしい敗北の覚悟が必要だった。仮に敗北ともなれば、部隊指揮官の更迭程度では済まされず、軍への更なる影響力拡大を狙うベムラーゼ首相の指導によって、軍上層部の責任まで追及されてしまうことは確実だった。
 ボラー連邦軍上層部は、八方ふさがりという他ない状況に追い込まれていた――たった一隻の地球戦艦がその身に代えて果たした戦果によって。
 皮肉だったのは、彼らが“偶然”発見し、最初の獲物として攻撃を加えたその戦艦は、数ある地球戦艦の中でも最強級の一隻であり、他の探査船団にこれほど強力な戦艦は殆ど随伴していなかった。つまり、ボラー連邦軍が恐れた自軍の損害予想は、明らかに過大だったのだ。
 それに気づかぬボラー連邦軍上層部は、苦慮の末に以下のような一般命令を発した――地球船団襲撃艦隊の被害甚大。以後の地球艦索敵・発見報告にあたっては以上を考慮の上、細心の注意を以って遂行のこと――。
 官僚的国家に特有の冗長で掴み処のない命令であったが、それ故に政治的に敏感な部隊指揮官達は誤解しなかった――軍上層部は地球艦船の発見も交戦も望んでいない、と。
 その結果、偶発的戦闘や、上層部の命令意図を理解できなかった愚直な指揮官に率いられた艦隊との戦闘といった極少数の例を除き、地球探査船団はボラー連邦軍による大規模襲撃を回避することができた。
 それは紛れもなく、短命で果てることを余儀なくされた護衛戦艦アリゾナが成し遂げた最大の戦果であり、その戦果は“ただ一艦で強大なボラー連邦軍を震撼させた宇宙戦艦”として長く語り継がれることになる。


 ――2211年、スカラゲック海峡星団β星を非武装の地球船団が訪れていた。ボラー連邦との協定に基づき、短期間の滞留が認められた船団は速やかに課せられた任務を達成すると、協定期間の終了を待たず、星団を後にした――。

 翌年、アメリカ合衆国アリゾナ州において、特別式典が開催された。式典は非常に大規模なもので、合衆国のみならず連邦構成五州、そして地球連邦政府・防衛軍からも多数の列席者を迎えて盛大に行われた。
 式典の中心に存在したのは、スカラゲック海峡星団β星から六年ぶりに回収された護衛戦艦アリゾナの威容であった。戦闘により激しく損傷し、異星上に長年放置されたことで各部の風化も進んでいたが、一年がかりで丹念に状態保存処理を施されたその姿は、たとえ傷だらけであっても“ヤマトを超える大戦艦”と称された頃の威容を失っていなかった。
 式典は慰霊でも告別でもなく、各国宇宙軍並びに地球防衛艦隊の慣習に則った“帰還式典”とされ、終始賑わいだ雰囲気の中で執り行われた。宇宙戦闘における“戦死”は遺体が回収できないケースが圧倒的であり、回収することができた遺体は“帰還”として祀られるのが各国共通の慣例だったからだ。
 もちろん、式典の開催にあたっては、十分な事前説明により遺族団体からの全面的賛同が得られていた。しかし、それでもなお、遺族感情を懸念する声が一部に存在したのも事実である。
 しかし、式典最後に行われた合衆国代表のスピーチが、そうした負をも含めた全ての人々の感情を昇華させることになる。
 スピーチを行ったのは、アリゾナに座乗した船団指揮官から指揮権を委譲され、探査船と共に難を逃れることができた“NA-01”探査船団の次席指揮官だった。彼は、一部の思慮も無ければ心も無い者たちからの“仲間を見捨てて逃げた”という批判にも動じることなく、自らの強い希望で壇上に登っていた。


『“リメンバー・アリゾナ”
 我々はこの言葉と共に、彼女とそのクルーたちが示した献身を、気高さを、そして優しさを決して忘れません。
 今日、彼ら彼女らは我らの下へ、この愛すべき故郷へと帰還しました。
 我らが大宇宙というフロンティアに飛翔を続ける限り、我々はこれからも幾多の困難に見舞われるでしょう。しかし――我らは必ず還らなければなりません。
 たとえ幾年の刻を要しようとも、たとえどのような障害が目前に立ち塞がろうとも、愛する者たちの処へ、愛する故郷へ、還らなければならないのです。今日ここに帰還した護衛戦艦アリゾナと、その勇敢な戦士たちと同じように。
 だからこそ我々も、今日還った彼ら彼女らに心から告げようではありませんか――おかえりなさい、と』


――つづく。

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4 コメント

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EF12さま (MJ)
2012-08-06 15:40:37
こんにちは(^_^)
こちらこそ、遠路お越しいただきまして、本当に恐れ入ります!!m(__)m

新サイトの貴作につきましては、破綻どころか、過去作には無かった展開に、燃えまくってますよ!!(≧∇≦)♪
ああ・・・・・・鬼竜さん、死なないで・・・・・・(謎)

護衛艦、パト艦の件、お褒めにあずかりまして恐縮です\(^_^)/
四番艦艦長のコメントについては・・・・・・勝手にモチーフにさせてもらっていいのか?(勝手はダメ!!)、あの過酷な時代に吉〇家があるのか?(それはありそう)とか妙にビクビクしながら書いたのを思い出しましたw

マダオ艦長、私の中では、未だエメラルダスのビジュアルイメージが強いのですが、それでマダオって、、、魅力的過ぎますよ、ホンと(^_^;)
私、2199も含めてアニメの女性キャラにはあまり興味が向かない筈なんですが・・・・・・マダオ艦長はその貴重な例外みたいですw

今後のEF12さまの作品の御発展とマダオ艦長(と、その素敵過ぎるお仲間たち)の御活躍に、心から期待しています!!m(__)m
返信する
新サイトへのご訪問、ありがとうございます。 (EF12)
2012-08-05 23:32:17
基本設定やらストーリーやらが早くも元作品から離れつつありますが、何とかまとめていく(破綻?)つもりです。

護衛艦やパトロール艦の解説はお見事の一語です。

護衛艦で、最初期ロット4番艦艦長のコメントには思わず噴き出しました。

彼女=あのマダオならば間違いなく口にしそうですからね。
返信する
yangさま (MJ)
2012-08-05 10:32:42
おはようございます(^_^)
またしても早速のレス、ありがとうございます!!m(__)m

そうでしたか、yangさんも色々とご苦労がおありなんですね・・・・・・。
私の場合、PC・ケータイ・ゲーム・本、いずれもOKだったのはラッキーでしたw
むしろ、テレビが一番見てないですねぇ、ご飯を食べる時にニュースを見るだけなので、一日三十分も見てないような気がします。

> ラスト・ディッチ

いきなりカッコ良い言葉からいらっしゃいました(^_^)
“最後の一線”ですよね?
私も、ヤマト2で地球と彗星帝国の間に立ち塞がるヤマトの姿は、正にそのものだと思います。
ただ、その後のヤマト作品でも同じような展開(ヤマト“だけ”が最後の希望)を延々と続けたが故に、それ以降の作品が非常に“鼻に付く”ことになってしまったのは非常に残念でした。
また、yangさんも仰られている“安い自己犠牲の賛美”を量産してしまったことも、ヤマトシリーズの低迷を招いた理由の一つだと思っています(『永遠に』の守、Ⅲの土門など)。
正直、復活篇の副長の特攻シーンなんて、感動するどころか殺意すら抱いたくらいでした。

それにしても、yangさんがこの展開に食いついて下さったのは、正直意外でした(^_^;)
いや、もちろん私もHMSユリシーズは大好きなんですがw
アリゾナの船団指揮官が(実は士官学校同期の)次席指揮官に「さっさと逃げろ、以上」とどこか楽しげに無線で告げるシーンとかを思い浮かべながら書きました。

でも、それだけ感情移入してしまうと、この世界のアリゾナとクルーたちには、生きて地球に帰って欲しくもなりました。
原作で、はっきり沈んでいる姿が映っているので、撃沈そのものはどうにも回避のしようがなく、苦し紛れに絞り出したのがあの結末です。
でも、戦闘後に無動力状態で一年ほど漂流、その末に、奇跡的にひょっこり帰ってきた、とかって展開の方が(たとえ安っぽいと言われても)個人的には好きですね。
決して諦めない、どんな状況でも為すべきことを必ず為す、そんな素晴らしい人たちには、やっぱり死んでほしくないじゃないですかw
返信する
MJ様 (yang)
2012-08-05 04:48:33
自分も鬱で入院してたこともありますから、多少でも、その苦労は分かります。
自分の時は多剤投与のせいで副作用がありましたが、薬の種類を減らしたら、何とか寛解できました。でもその病院はPCもケータイも所持不可で外出時以外はネットもできず、それが一番辛かったですw

>ラストディッチ
今回のアリゾナの話はヤバイです。自分的に「キーリング」とか「ユリシーズ号」とか勝手に”牧洋犬モノ”と呼んでいる作品はツボなので、今回かなりキました。いつもはギミックやガジェットのこだわりを楽しむ方ですが、今回はドラマに嵌りました。
無辜の市民や味方の盾となり、「義務を果たす」ってのに弱いんです。涙腺緩むんです。
ヤマトという作品は”刃折れども魂折れず””あきらめる事をあきらめた漢達”の物語であると思ってますので、苦境の中でも坦々と為すべき事を為すフネとして、この物語のアリゾナは正しいヤマトの眷属であること実感しました。
人によっては安い自己犠牲の賛美に取られるかも知れませんが、単なるカッコ付けではない、義務や誓約を為すということが、人類という種を信じたくなる”憧れるべき”資質と思っています。無論、日常では早々に見れるものでは無いのも事実ですが。

自分にとってその「義務を果たす」ベストショットは”ヤマト2”で地球を飛び立った都市帝国を追って、周囲にコスモタイガーが展開し、その中心に地球をバックにしたヤマトのシーンですね。
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