むらぎものロココ

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クレマン・ジャヌカン

2005-06-15 14:37:00 | 音楽史
janequinCLEMENT JANEQUIN
Le chant des oyseaulx


ENSEMBLE CLEMENT JANEQUIN

クレマン・ジャヌカン(1485頃-1558)は、ボルドー近在で僧職についた。1534年にはアンジェ大聖堂で聖歌隊の教師をつとめ、1550年にギーズ公の礼拝堂の楽長となった。

ジャヌカンは250あまりのシャンソンを残した。シャンソンはフランス語による世俗歌曲のことだが、中世の頃は単旋律が主であったシャンソンもルネサンス期にはフランドル楽派の影響下でポリフォニーによるものがつくられるようになった。ジャヌカンの代表的なシャンソンとして知られる「鳥の歌」も通模倣様式によっている。また、この曲は鳥のさえずりを擬音的に模倣しながら、それを口実として裏に性的な意味を仕組んでもいる。

16世紀頃のシャンソンはフランス語の韻律をリズムの長短に置き換え、拍子が頻繁に変化するようなものになっていくなど、リズムを強調する、または舞曲的なものに向かう傾向があった。こうした躍動感とリズム感にあふれた音楽に乗せて歌われる、ときに卑俗ですらある詞は、当時台頭してきたフランスの市民階級の生活感情を反映したものである。

ジャヌカンと同時代を生きたもうひとりのクレマンであるクレマン・マロやモーリス・セーヴといった詩人たちが、時代遅れの頑迷な人間たちに抗い、自由と歓喜、贅沢や快楽を詩によって称揚したのと同様、ジャヌカンのシャンソンも活き活きとして楽しく、遊戯性に満ちていて、世界をさかさまに見る「さかしまの賦(コントルブラゾン)」などによって、それまでの硬直した価値観を軽やかにひっくりかえすのだ。

アンサンブル・クレマン・ジャヌカンの演奏は、その技巧を駆使し、ジャヌカンのシャンソンの持つ遊戯性と風刺性とその裏に実は隠されているユマニストとしての誠実さを余すところなく示している。




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