もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

ねねの日記④ ・・・ ミヤモトさんが来た

2014-08-07 15:24:50 | E市での記憶
おじいちゃんとおばあちゃんの家に来たのは
アタシが三つの時だ。

なんで覚えてるかというと
誰かに「いくつ?」って聞かれるたびに
ほかの誰かが、「三つだよね」って言ってたから。

でも、すぐに四つになって
「いくつ?」
「よっつ。」って
自分で答えるようになった。

そのあとかならず
「このまえまで、みっつだった」って
言ってた・・・と思う。


おじいちゃんたちの家は
どこからどこまでがウチなのか
アタシには、よくわからなかった。

おまけに、アタシたちが来てからずっと
家の中がドタバタしてた。

今考えると
おとうちゃんが「カイギョー」するんで
あちこち直してたんだと思う。

男の人たちが何人も出入りして
ノコギリやカンナの音もした。

ある日、もう見に行ってもいいって言われて
広い階段を上がってみたら
二階は、小さなベッドの部屋が
いくつもできてた。

ベッドなんてかっこいい。

アタシもベッドで寝たいって言ったら
ねねちゃんはネゾウが悪いから落ちるって
おかあちゃんもおばあちゃんも笑った。
(なんか、アタシはちょっと傷ついた)

一階にもタタミのビョーシツができてて
おかあちゃんとおばあちゃんが
お布団の綿入れをしたり
障子の張り替えをしたりしてた。

ずうっと後になって、おかあちゃんは
「あのときはお金がなかったから
できることは全部自分たちでやった」って
なんだかちょっと、シミジミしたような声で言った。


家の中がなんとなく片付いてきたら
突然、「新しいヒト」が現われた。

朝、アタシがひとりでご飯を食べてたら
丸顔のきれいなオネエサンが来て
向かい側の椅子に坐った。

おかあちゃんも来て
「ミヤモトさんよ。あいさつしなさい」

アタシはおはようって言ったかどうか
覚えてないけど
ミヤモトさんはニコニコして
「ねねちゃん、よろしくね」って言った(と思う)。

一階のビョーシツの隣の小さな部屋は
ミヤモトさんの部屋だから
勝手に開けたり、入ったりしたらいけないって
おかあちゃんは、コワイ顔して言った。

でも、ミヤモトさんは来た早々から
アタシとおねえちゃんを部屋に入れてくれて
ミヤモトさんのきれいな洋服も
さわらせてくれた。

ミヤモトさんのスカートは
おねえちゃんがはいても引きずるくらいで
なんだかお姫さまごっこしてるみたい。

でも、途中でおかあちゃんがトンデ来て
ものすごーく怒られて
もう絶対しちゃダメって言われた。

ミヤモトさんも、あんなに楽しそうに
笑ってアタシたちを見てたのに。

オトナは楽しいことがキライなのかな。

でも、おかあちゃんと違って
ミヤモトさんはいつもニコニコしてる。

アタシはミヤモトさんが
いっぺんで好きになった。


ウチにいる人はこれで
おじいちゃん(としよりセンセ)
おばあちゃん(大奥サン)
おとうちゃん(若センセ)
おかあちゃん(奥さんとか若奥サンとか)
それに、ミヤモトさん(カンゴフさん)

あとはおねえちゃんとアタシ・・・全部で7人。
ここに来る前は4人だったから
だいぶん増えた。

なんだか毎日、新しいお祭りに
おねえちゃんと二人で来てるみたいで
ドキドキする。

いろんなヒトに毎日出会うから
そのたんびにハズカシクテ困るんだけど
おねえちゃんは平気みたい。

アタシは、おねえちゃんの後ばっかりついて歩くって
ヨーチエンのセンセが言ってた。

仕方ないと思う。

おねえちゃんは二つもアタシより
おねえさんなんだから。



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