もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

ねねの日記・40 ・・・ オヨメサン

2024-08-30 17:56:27 | E市での記憶

うちのお向かいは、カミユイさんで

たま~にだけど

オヨメサンが出てくる。


出てくるっていうか

「出来てくる」んだよね。


きれえな着物着て

白くきれえにお化粧して。


アタマの白いきれは

ツノカクシ

お引きずりの長~いきものは

ウチカケだって

カンゴフサンたちがおしえてくれた。

雨ふりそうなときなんか

スソが地面につきそうで

黒いきもの着た女の人たちが

「あ、そこ、もうちっと」とかって

あわてて持ちあげてた。

 

オヨメサン見たあとは

うちかえってから

絵ぇかきたくなる。


でも、アタシだと

うまくかけないんだよね。

おねえちゃんかいたら

ぜったいうまいと思うんだけど。


でも、おねえちゃんは

オヨメサンとか、あんまし

「きょーみない」とかって言うの。



おねえちゃんは、女の子のマンガも

あんまり借りない。


男の人とか、男の子向けの

「ギューン」「ガチャーン」「ズドーン」

「ビシッ、バシッ、グサッ」

なんてのばっか、借りてくる。


アタシはお姫さまとか、長~いドレス

ネックレスとかイヤリングとか

きれえなもんが出てくるのがいい。


でも、「星のたてごと」とか

「白いトロイカ」は

おねえちゃんも好きって言ってたよ。


「リボンの騎士」なんて

おとうちゃんもおかあちゃんも

好きだったみたい。



アタシ、マネして絵かこうとしても

うまくかけなかったんだけど…


それでもたくさんかいたなあ。

 

おねえちゃんは、いつのまにか

「馬の絵」しか、かかなくなっちゃったけど

アタシはきれいなモノがかきたかった。


そーゆーの「ロマンチック」っていうんだって

それもカンゴフさんからきいた。

 

アタシ、おねえちゃんみたいに

かわいいって、あんまり言われないけど

ろまんちっくが好きでも、いいよね~


そんなことも思ってた。

 



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音匣 おるごおる

2024-08-18 15:16:13 | K市での記憶

オルゴールが好きだと言っていた父は

晩年になって、外国のメロディーの入った

大きなオルゴールを買った。


なんていう曲かはわからなかったけれど

父の書斎の「箱型の棚」に置くと

棚が共鳴して、素晴らしい響きになるとわかった。


テーブルに置いて、ふたを開けたときは

ごく普通に「きれいな音色」


でも、棚に置いて開けると、突然

魔法の楽団が現れたみたいになる。


「共鳴ってすごいね」

「音の魔術だね」


姉もわたしも、ただうっとり聞きほれた。


オルゴールの秘密を教えてくれた母は

発見したのは自分と言いたそうだった。

 

ほんの数分の室内楽。

音の箱をじっと見つめて。

 

オルゴールを「音匣」と書くと知ってから

あのときの光景が

一枚の静止画になって目に浮かぶ。

 

あれから40年以上。

今はオルゴールも、あの家もなく

父も母も別世界の人。


姉の声を聞くこともなくなって…

 

それでも、またいつか

いっしょにあの曲を聴ける日が

来るような気がして、仕方ないのだ。

 

 

 

 

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うつくしいもの

2024-08-04 17:13:14 | ひとりごと


よあけのそら そらのいろ

こくいっこくと かわってく いろあい


もうすこし そのままでいて って

おもっても かなわない


なんていったか 

にほんでつくられた バラのなまえ


はな ひとつ ひとつ

はなびら いちまい いちまい

そこはかとなく あいまいに

いろとふぜいをかえながら

いつのまにか ちっているバラ


よあけまえ ベランダからみる

そらのいろは そのはなに にてる。



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