もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

ねねの日記⑱ ・・・・・ おそらにのれる  

2015-11-29 12:18:06 | E市での記憶
お正月も過ぎて
冬休みも終わって
でも、雪は降ったりやんだり。

ますます寒くなってくる。

降ったばっかりの新しい雪は
ふわふわだったり、サラサラだったり。

そのまんまだときれいだけど
土やなんかがついて
茶色とか黒とか
なんかきたならしくなる。

道端とか校庭とかだと
もう「雪」にみえない。「岩」みたい。


でも、庭のすみで、家の陰になってて
お日さまがあんまり当たらないトコだと
降ったときのまんま残ってる。

アタシたちが歩くと、足あとがつくけど
歩かないトコだと、そのまんま
雪が降るたんび積もってく。

お昼間はちょっと溶けて
夜からはちょっと凍って
で、また降って・・・


今朝、おねえちゃんと
きれいな雪、探してたら
もう・・・ビックリした!

降ったばっかの雪なのに
誰もまだ、踏んでないのに
そのまんま、ずーっと
雪の上を歩けるの!!

全然、足がズボッといかない。
全然、ゴボッたりしない。

「え~~!どーしてぇ~~?」


もう面白くって、おねえちゃんといっしょに
そのへん、ずーっと歩いて遊んだ。
慣れてきたら鬼ごっこもした。


でも、お日さまが当たり始めたら
足あとがつくみたいになってきて

ズボッ。「あ、長靴抜けなくなった・・・」

で、やめて家にはいった。


日曜で、おかあちゃんがいたから
「雪の上、そのまま歩けたよ!」って言ったら

「ああ、ソレ『おそらにのれる』っていうのよ」


「オソラニノレル?」「おそらにのれる・・・」

キャッ、「お空に乗れる」んだあ。


おかあちゃんは、前に
おばあちゃんに聞いたんだって。

おねえちゃんとそのまま
おばあちゃん探しにいって
台所で見つけて、聞いてみた。

「ああ、おそらにのれるんやの」

おばあちゃんは、サササッと
なんでもないみたいに言う。

「ホントに『おそらにのれる』っていうの?」

おばあちゃんは何度も小さくうなずいて

「なぁんもない田んぼの上、朝だけ
おそらにのれるようになるしの」

「おばあちゃんも遊んだ?」

おばあちゃんはちょっと笑って
小さな声で

「おもっしぇかったのぉ」だって。


でも、「おそらにのれる」日は
その冬は、あのとき一度だけだった。

アタシはもういっぺん
降ったばっかりの雪の上
走ってみたかったんだけどな~。

おばあちゃんみたいに
「なぁんもない田んぼの上」だったら
もっと良かったんだけどな。





コメント
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