もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

ねねの日記⑩ ・・・・・ えみちゃん

2014-11-07 15:53:13 | E市での記憶
うちはお医者さんで、向かいは
洋服屋さんとパーマ屋さん。

お隣は、貸本屋さんで
10円持ってくとお菓子も買える。

反対がわのお隣はふつうの家。

りんご見つけたとき一緒だった
ヒロちゃんは、その家の子だ。

ヒロちゃんは、うちのおねえちゃんと
同い年のお姉さんがいて
えみちゃんっていう名前だった。

アタシたちがこの家に来てから
最初のうちは、えみちゃんも
みんなと一緒に遊んでた。

えみちゃんは、おねえちゃんより
なんだか静かで、ほっそりしてて
まりつきとかすごく上手。

なんとなくやさしい感じがして
アタシはえみちゃんも好きだった。
よく一緒に遊ぶのは
妹のヒロちゃんの方だったけど。


えみちゃんの家は、最初から
おかあさんがいなかったような気がする。

もしかしたら病気か何か
だったのかもしれないけど。

おばあちゃんとお父さんがいて
お父さんは夜になると
かばん持って帰ってきた(と思う)。

ある晩、そのお父さんがうちの玄関に、
きれいな着物きた女の人を連れてきた。

髪に白い羽根の飾りつけて
女の人はゆっくりお辞儀をした。

そばにはヒロちゃんのおばあちゃんもいて
もっと丁寧にお辞儀していた。

新しいお母さんだって
うちのおばあちゃんは言った。

でも、モリシタさんたちは
「ヒロちゃんは実のお母さんやからいいけど
えみちゃんはかわいそうやね」って。

おばあちゃんに、どうしてえみちゃんだけ
かわいそうなん?って聞いたら
「そんなことはあんまり言われん、言われん」。

結局、教えてくれなかった。

えみちゃんは、だんだん
アタシたちとは遊ばなくなった。


しばらくして、お隣に
男の赤ちゃんが生まれた。

ノリユキっていう名前になったって
ヒロちゃんが言った。
みんなはノリちゃんって呼んだ。

えみちゃんはときどき
ノリちゃんをオンブして外に出てきた。

ノリちゃんが歩けるようになっても
いつもえみちゃんは、そばについてた。

もう、えみちゃんは
アタシたちとは遊ばなかった。

「え~み~ちゃん」って呼びに行っても
玄関まで出て来なくて
えみちゃんのおばあちゃんが
今日は遊べないって言うだけ。

えみちゃんは家の手伝いで忙しいんだって
オトナの人が言ってた気もする。
(アタシの勘違いかもしれないけど)

ノリちゃんが保育園に行くようになると
えみちゃんを見ることもなくなった。


最後に会ったころのえみちゃんの顔は
ビックリするほど色が白かった。
アタシには、なんだか
大事にされてないお人形さんみたいに見えた。


えみちゃん、今、何してるんだろ。
どこかへ行っちゃったのかなあ。

ヒロちゃんもノリちゃんも
ずっとお隣に住んでるのに。

お手伝いで忙しくったって
ちょっとくらい会えるはずなのに。

えみちゃん、どこにいるんだろな~。





コメント
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