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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

シリーズ デンマークの教育④ 『国民学校:教育の義務の場で・・・Ⅰ』

2004-12-02 21:36:11 | 教育について
今回は、デンマークにおける「教育の義務」(デンマークでは「義務教育」とは言わずに「教育の義務という。前項参照)の期間における教育の場、「国民学校」について触れたいと思います。

デンマークでは、小中学校の区別がなく1年生から9年生までが国民学校の生徒ということになります。9年生は、日本の中学3年生にあたります。
1学級の定員は最高28人とされています。これは、あまり多い人数だと生徒一人ひとりに目が届かないということなのでしょう。例えば、ある年に30人の入学者がいたからといって、1学級でで間に合わせることはできません。その場合は15人ずつ2クラスにしなければならないのです。
先生は、入学前準備にあたる0年生(幼稚園と小学校の間の1年間)の後半1/3を含め、1年生から9年生までの9年間を同じ先生が担任します。これは、なるべくかかわる先生を少なくするという学校の方針によるものでもあります。少人数・顔なじみの環境をつくることで、生徒は学校における安心感を得ることができ、いじめや不登校にもつながらないといいます。
また、前項の『障害者教育』でも触れましたが、国民学校では障害をもった子どもの受け入れも行っています。障害をもった子どもを受け入れることは、他の子どもにとって障害の理解につながると考えられています。例えば、聴覚障害をもった子どもの場合、子どもには補聴器を与え、先生は専用のワイヤレスマイクで直接声を生徒に届けるという工夫をしています。受け入れるからには、しっかりとした環境を整備しているのです。もちろん、国民学校ではなく、障害に適した学校でもいいのは言うまでもありません。

授業は生徒の個性に合わせて進められるので、全員に同様な試験を課すようなことはしていません。試験がないので当然点数もつかないので、人間の差を点数で教えるということにもなりません。まして通知表なども存在しないので、ご丁寧にも「あなたは何人中何番ですよ」と人間としての価値を順位で教えることもありません。
日本で調査をすると、約半数の人が偏差値はあったほうがいいと答えるそうです。子どもの頃から競争原理における教育を受けてきて、落ちこぼれずにきた人たちにとってはそれでもいいでしょうが、そこから外れてしまった人たちにとっては偏差値は何の救いにもなりません。そして、そんな教育を受けてきた人たちが親になると、自分の子どもにも同様の教育を望むようになってしまうのも無理はないかもしれません。
国民学校の9年間の教育期間を通じて試験を課せられるのは、最終学年の9年生のみです。この試験は国が行う統一試験ですが、決して席次を決めるためのものではなく、進路への参考とするものです。そのため生徒が希望しなければ、この試験も受けなくてもよいことになっています。
試験はないと何度も言いましたが、テストは存在します。しかし、試験と違いその結果により進級ができなかったり、人間の価値を試験の結果の順位で決めるというものではなく、ただ生徒の能力を先生が把握するためのものとしてあるのです。

デンマーくの教育基本法は、民主主義を教えるということを第一に考えています。国民に、民主主義の中で大事な人間として平等という概念を身に付けさせるためには、国民全員が受ける「教育の義務」の場において、「人よりも人よりも」という競争原理の教育をするのではなく、人に差をつけないような教育をするべきではないでしょうか。

参照:千葉忠夫「デンマークの教育調査 福祉国家デンマークの教育 ~日本の福祉教育への提言~」

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