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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

シリーズ デンマークの教育⑤ 『国民学校:教育の義務の場で・・・Ⅱ』

2004-12-15 17:53:38 | 教育について
前項の①では、デンマークにおける「教育の義務」の場である「国民学校」の概要をおおまかに記しましたが、今回は実際にどのような教育や工夫が行われているかについて紹介したいと思います。

デンマークでは、1年生から9年生まで同じ先生が担任となります。一人ひとりの顔がみえる少人数(1クラス最高28人)の単位でみることによって、子どもたちは学校での居場所、安心感を感じることができ、そのためいじめや不登校などがほとんどみられないそうです。
さらに、余裕のある学校では、親から事前に入学する生徒の個性を確認することをしています。入学後も、親との面談は5回/年にも及ぶとのこと。単純に比較しても、日本とは親とのかかわり方が違うのがわかります。

同じ先生が9年間もひとつのクラスを担任するということは、それだけ先生にかかる負担が大きくなると同時に、その資質も問われてくることになります。これは後の項でも詳しく触れますが、デンマークでは、先生になるためには、高等学校を卒業後さらに「上級専門学校」(日本における大学のようなもの。大学も別にある。)に進む必要があります。そこに入学するためには、入学試験ではなく、職場経験や海外旅行の経験などさまざまな人生経験が求められます。そのため、入学時の平均年齢は25歳前後で、初任教師の平均年齢は29歳前後ということになります。日本のように大学新卒の22歳の若者が担任になるということはなく、ある程度の人生経験を積んだ者が先生になるのです。
また、日本との大きな違いは、教師になる人も民主主義の教育をきちんと受けているということです。そして、生徒の親も民主主義の教育を受けているので、日本のように先生に対して一任してしまう(文句だけは言いますが・・・)ことはなく、主体的に学校にかかわるようになります。

デンマークでは地方分権が確立されています。そのため、「国民学校」は各地方自治体が運営しています。日本のように、都道府県教育委員会があり、その下に市町村教育委員会があり、学校に目を光らせているということはありません。各学校にある理事会が運営していくことになります。
理事会の構成メンバーは、【親の代表6名、生徒代表2名、先生代表2名】という構成です。この構成をみても、教師の意見より実際に利用する生徒やその親の意見が反映されやすいのがわかります。理事会の下には生徒会があり、これは各クラスの代表2名から成り立ちます。生徒会の下には各学級委員会があるのです。
例えば、学級委員会で「休み時間は皆外に出て遊ばなくてはダメですか?」という意見が出たとします。学級委員会では、「外に出なくてもいい」というように決まれば、その意見を生徒会に持っていきます。しかし、生徒会では「休み時間は外に出て体を動かすことが大切」というようになれば、全校生徒がそれを守ることになります。意見を出すことは自由ですが、それに伴う責任として、決まったことに対しては皆で守っていくことが求められるのです。その他にも、「砂場の砂を新しく変えて欲しい」や、「校庭に遊具を増やして欲しい」などの意見が出て実際に承認されたりしています。

カリキュラムづくりにも工夫がみられます。先生がカリキュラムをつくる時には、まず生徒の知識がどのくらいあるのかを把握します。そして、生徒との合意によって授業を進めていくのです。デンマークの授業は、対話によって進められていくのが当たり前なので、授業風景は常に生徒の声が響いています。先生が一方的に話して聞かせることはないのです。そのため、理解していない生徒がいればわかりますし、その生徒のために教室にいるもう一人の補助の先生が個別に対応をします。
年に4回(1週間/回)は、「テーマデー」というカリキュラムがあり、そこでは学年・クラスの枠を超えて集まったチームが1つのテーマに対して調べ、発表することに取り組みます。このような授業をすることで、自主性を育てるのはもちろん、上級生が下級生の面倒をみる構造が生まれ、それがいじめが少ないことにつながるそうです。

参照:千葉忠夫「デンマークの教育調査 福祉国家デンマークの教育 ~日本の福祉教育への提言~」

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