むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

フランス大統領有力候補が北京五輪ボイコットを呼びかけ ダルフール問題に関連し

2007-03-31 16:41:09 | 中国
フランス大統領選挙は4月22日の第一回投票に向けて、左派を代表する社会党PSのセゴレーヌ・ロワイヤル候補、中道やや右寄りUDFのフランソワ・バイル候補、現与党で保守・右派のUMPのニコラ・サルコジ候補の有力三人の間で現在三つ巴の熾烈な選挙戦が展開されている。そのうち中道のバイルと左派のロワイヤルの有力候補二人が3月20日夜に「Urgence Darfour(ダルフール問題のための緊急行動グループ)」主催の集会に出席、スーダン政権によるダルフール虐殺問題に関連して、スーダン独裁政権を支援している中国を名指しで批判した。特にバイル候補は「中国が姿勢を改めないならば、2008年の北京五輪をフランスは尊厳をもってボイコットすべきだ」と主張し、注目されている。
ロワイヤル候補も「2008年五輪以前こそが、中国に圧力をかけるチャンスだ。今のままで五輪に喜んで参加するのは疑問」として、ボイコットにも含みを持たせた。

▼右派陣営は中国批判を明言せず、親中国姿勢
一方、もう一人の有力候補で現在世論調査トップにつけていることが多い右派与党のニコラ・サルコジ候補は集会にメッセージだけは寄せたが、中国については触れず、ダルフール問題への緊急対処を訴えただけだった。
しかも、呆れたことに右派与党UMP所属の体育省大臣ジャンーフランソワ・ラムール氏は「スポーツを人質にすることは許されない」などとバイル氏らを批判、中国を弁護することまでやってのけた。
右派与党UMPのシラク現大統領をはじめ、現在与党の関係者はスーダンや中国の独裁政権と親しいものが多く、サルコジ氏自身も極めて媚中派である。だから中国の犯罪的関与を名指しで非難できない。
フランス右派は腐っている。絶対、サルコジには当選してもらいたいくない。現大統領のシラクはそれでも親日だからまだいいが、サルコジは反日と来ている。しかもサルコジ自身は名前からしてもハンガリー移民の子孫のくせに、移民流入を規制しようとしている。頭がおかしいのではないか。
もっとも、反日といえば、ロワイヤル氏もわりと反日的だが、今回中国を批判したし、同じ反日なら左派のほうが良いのは当然だ(これは韓国についてもいえる。日本の右派は韓国で次はハンナラ党になればいいなどといっているが、ハンナラ党も反日だし、政党レベルでは中国共産党だけと交流していることを知らないのか?)。バイル氏の対日姿勢は知らない。

▼フランスの中道派と左派の人権感覚はまとも
もっとも、フランスでは伝統的に、中道から左寄りほど中国独裁体制に批判的で、右ほど甘い傾向があるが、今回もそれが現れた格好だ。
フランスでは左派ほど中国に批判的なのは当然で、中国が人権を蹂躙し環境を破壊する独裁体制で軍拡に狂奔しているからだ。右派が中国に甘いのは人権よりも経済利益を重視するからだ。そういう点では、フランスの左右対立は、本来の意味での左右対立だといえる(もっともフランスが左翼・右翼の用語の起源だから当たり前なんだが。とはいえ、18世紀末起源の話だから、その後の発展でもちゃんと左右対立の軸が押さえられている点はすごい)。
私自身もそういう意味でのまともな左派でありたいと思っている。

▼中国の野蛮な資源漁り外交
この緊急行動が行われたのは、中国が国連安保理でダルフール問題に関するスーダン政権非難決議案に反対していることへの危機感の現れだ。
中国自身が独裁政権で、最近「資源外交」からアフリカで資源を持つ独裁政権と癒着結託して、資源をあさりまくっているが、これがアフリカの庶民層はもちろん、欧米でも反発を生んでいる。
しかも注目すべきことに、ロワイヤル候補は1月に中国を訪問して、割と中国に甘い姿勢を見せていたのだが、今回ダルフール問題でようやく目覚めた(?)ようだ。

▼フランスの帝国主義的遺産も問題だが
ただ、ここに、フランス人の傲慢さを感じないではない。
フランスの報道では、ロワイヤル氏が今回ダルフール問題に関連して、反中に転じたのは、どうやら「私も生まれたアフリカの土地で人権が抑圧されているのは、無関心ではいられない」と述べている。ロワイヤル氏は父親が軍の幹部だった関係で、セネガルのダカールで生まれているのだが、フランスがセネガルなど西アフリカにコミットメントしているのはまさに帝国主義時代の産物である。
この部分はまたまたロワイヤル氏の外交感覚の無さ、お馬鹿さを露呈したものといえそうだ(とはいえ私は基本的にはロワイヤル氏に勝って欲しいと思っている)。

▼中国の帝国主義は現在進行形
ただし、だからといって今回、バイル氏やロワイヤル氏の発言に、中国が早速噛み付いたのは中国のお粗末さを露呈させただけだった。
また、中国国内にはダルフールへの関与や国内人権問題を取り上げる欧米世論に対して「帝国主義」という批判を展開する向きが多いようだ。しかし、現に野蛮な行動を行っている現在進行形の帝国主義者・中国には、欧米の過去完了形の帝国主義を非難する資格などない。
中国はやたら過去の他人の行為ばかり批判するが、自分が同じことを現在まさに行っていることには鈍感なようだ。

▼日本は鈍感すぎ
もっとも、日本もあまりにも鈍感である。「遠いアフリカの出来事で関係ない」という認識なのか、あるいは中国を恐れているのか、ダルフール問題についてはほとんど報道も問題提起もされず、反応も鈍い。
北朝鮮(共和国)の「拉致」に関しては、あれほど人権関連概念も総動員して口をきわめて非難するくせに、日本人が関係しない問題については何も言わないのは、人権という概念の意味をわかっていない証拠である。人権はまさに普遍的人権なのであって、国籍や民族や性別には関係しない。しかし日本人は目くじらを立てている相手である朝鮮人と同じような偏狭さで、国籍や民族や性別を限定して「人権」を論じようとする。
その急先鋒だった安倍晋三が、従軍慰安婦=軍の性奴隷制度で反動的な発言をして、米国までも含む国際社会から非難されたのは、日本の特に右派・右翼の人権感覚、国際感覚の欠如として、それが中国や北朝鮮と同レベルであるという事実をあらわにしたものといえるだろう。
「女性は産み機械」「水道水は飲み水ではない」「慰安婦の強制性はなかった」。これでは拉致拉致と騒いでも、世界の誰も相手にしてくれないのは当然である。

▼今回のフランス大統領は面白い
フランス大統領選挙に戻すと、前回5年前の選挙はあまり争点もなく、しかも第一回投票で極右排外主義者ルペン候補が2位浮上、社会党のジョスパン候補敗退を許し、決戦投票では社会党から共産党、その他左翼諸派に至るまでも保守のシラク氏に「鼻をつまみながら」入れるという屈辱の事態を招いてしまった。
ところが、今回は争点がたくさんはっきりしている。雇用、移民流入、国際関係なども争点となって、いかに極右ルペンを追い落とすかも課題になっている。さらに以前までは右派・保守のUMPと協力してきたやや右寄りの中道派UDFが、独自候補のバイル氏を出していることも特徴だ。右派、中道、左派の有力候補三つ巴の効果から、懸案だったルペンの陰は薄くなっている。
改めて、フランス大統領には、ロワイヤル氏か、バイル氏がなればいい。サルコジだけは駄目だ。サルコジはルペンと変わらない。

(ところでこの問題は例の台湾関係の右翼メルマガ「台湾の声」も流しているが、「台湾の声」は大中国反共集団法輪功系の「大紀元」をソースにして鵜呑みにしているため、ロワイヤル氏もボイコットを主張したかのようになっているが、それはニュアンスとしては異なる。ちゃんとフランスのソースで確認すればいいものを、なぜしょせんは中国人が作っている大紀元なんか信用するのだろうか(嘲笑)。

フランス語の新聞記事やブログ
http://www.boursorama.com/pratique/actu/detail_actu_flash.phtml?&news=4036741
JO 2008: émoi olympique après une flèche de Bayrou contre Pékin
Reuters par Kerstin Gehmlich

http://www.comlive.net/sujet-128862.html#entry7759840
Partagez-vous l'opinion de Francois Bayrou ?
Oui, il faudrait boycotter les JO les cas echéant [ 9 ] [28.13%]
Non, c'est une mauvaise idée [ 23 ] [71.88%]
Total des votes: 32

http://www.lemonde.fr/web/depeches/0,14-0,. ..95@7-354,0.html
Francois Bayrou a t-il parlé trop vite, gaffé ?
Ou au contraire, soutiendriez-vous une telle démarche de boycott ?

http://www.20minutes.fr/article/147616/20070323-Monde-Bayrou-et-Royal-nouvelles-betes-noires-de-Pekin.php
Bayrou et Royal, nouvelles bêtes noires de Pékin?


http://www.lefigaro.fr/election-presidentielle-2007/20070323.FIG000000226_pour_pekin_bayrou_et_royal_ne_sont_pas_tres_au_courant_des_subtilites_diplomatiques.html
La Chine n'apprécie pas la menace d'un boycott des JO agitée par Bayrou et Royal
JEAN-JACQUES MÉVEL (à Pékin).
Publié le 23 mars 2007
Actualisé le 23 mars 2007 : 09h29

http://tempsreel.nouvelobs.com/speciales/elysee_2007/20070321.OBS8147/les_candidats_prennentdes_engagements.html
Les candidats prennent
des engagements
NOUVELOBS.COM | 21.03.2007 | 10:52


http://fr.answers.yahoo.com/question/index?qid=20070324055754AA00itA
Royal est-elle contre la participation de la France aux Jeux Olympiques ?


http://www.francematin.info/La-bourde-de-Bayrou_a10644.html
Politique
La bourde de Bayrou
(フランス・マタンは右派紙か?それだけあって、バイル発言を「へま」と捉えているのがずれている)


英語のソース

http://www.iht.com/articles/ap/2007/03/21/europe/EU-GEN-France-Darfur-Olympics.php
China faces Olympic boycott call, tough French stance, over Darfur
The Associated Press
Published: March 21, 2007

http://slam.canoe.ca/CPSportsTicker/CANOE-wire.France-Darfur-Olympics.html
March 21, 2007 French presidential candidate suggests Beijing Olympics boycott over Darfur

英語ソースでは、さすがにチベット関係者が敏感に反応している。
http://www.tibet.ca/en/wtnarchive/2007/3/23_2.html
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=16063
Boycott Beijing Olympics - French Presidential candidate
By Tenam
World Tibet Network News
Published by the Canada Tibet Committee
Friday, March 23, 2007


最新の画像もっと見る