むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

北京五輪聖火問題 そもそも北京五輪なんて開催できるの?

2007-05-01 18:01:11 | 中国
パリから帰った当日(27日)、台湾および世界の各メディアは、台湾政府が北京五輪の聖火を受け入れ拒否したことで盛り上がっていた。

私は別に聖火なんて来る必要はないと思うが、これでまたぞろ国民党系は「政治がスポーツに干渉するな」などとトンチンカンな批判を行っているのが笑えた。果たして政治が干渉しているのは、台湾、北京、どちらか?大体、北京五輪に限らず、五輪というのは国威発揚の手段になっていることは周知の通りだし、特に独裁国家では久しぶりに開かれる北京五輪は、1936年のベルリン、1980年のモスクワと並ぶ、いやらしい政治宣伝、国威発揚、国家主義高揚の手段になっていることを国民党系が知らないとしたら、あまりにも無知である。つまり、本気で政治のスポーツに対する干渉を拒否するならば、北京五輪は批判しなければならないことになる。もっとも、スポーツというのは、政治の道具、侍女であることは、昔からの常識なんだが。しかも国民党自身、ファシストを学んだためもあって、救国団とかスポーツを政治宣伝に利用してきた張本人である。今回民進党政府批判をしている国民党所属立法委員黄志雄は、だったら立法委員になんかならなければいい。いまさら「政治の干渉」などという国民党の厚顔無恥ぶりには呆れる。

確かに中国としてはこの路線は最大限の譲歩のつもりかもしれない。香港やマカオから台湾に入って、さらに福建あたりに抜けるのが、台湾を自国のものだと宣伝したい中国としては「べスト」なのだろうから、ベトナムから台湾そして中国に入る路線は、譲歩したつもりなんだろう。
しかしこれは不自然である。北朝鮮からどうして台湾を素通りしてベトナムに迂回してまた台湾に来るのか。この点は実は台湾の親中派も不自然性に気が付いているようで、連合報の投書欄でも、ある統一派が「北朝鮮→台湾→ベトナム→中国」を主張していた。
そもそもどんな路線であっても、別に台湾が入る必然性はないではないか?今回の路線を見ても、近隣諸国のすべてがコースに入っているわけではなく、日本、南北朝鮮、ベトナム、そして台湾から中国となっている。民進党政権は台湾から中国に入るという点だけを問題にしているようだが、私に言わせれば、それ以前に、このコースはすべてかつての朝貢国や藩属国ばかりで、化外のフィリピンは除外されている点が明らかに中国の中華思想の世界観を反映していて問題だろうといいたい。フィリピンがないんだったら、歴史的にフィリピンと一体だった台湾は入る必然性がない。

そもそも北京五輪が順調に開催できるのか、私は非常に懐疑的である。
フランス大統領選挙でもロワイヤルやバイルがダルフール問題に関連して北京五輪ボイコットを提唱している。これは実現されるか、あるいは効果のほどもわからないので、なんともいえないが、こうした主張や議論が先進国から出てくることそのものが、やはり世界にくすぶっている北京五輪に対するある種の不安と懐疑を示すものなのである。
フランスはおひざもとのダルフールにリンクさせているが、そもそも中国そのものの人権弾圧、労働者搾取、植民地侵略、軍拡、環境破壊などの問題が多い(もっともフランス政治家がそれを指摘しないのは内政干渉という批判を恐れてのことか?)。
オリンピックが平和の祭典だというのは嘘だが、しかしこれまでの五輪はほとんどすべて平和的な民主主義国家で開催されてきた。例外は1936年のナチス治下のベルリン、1940年に決まっていた軍国主義治下の東京(しかも直前に急遽ヘルシンキに変更)、1980年の共産党独裁下のモスクワ、1984年のまだ共産党一党支配下だったサラエボの3ないし4回しかない。怪しいのは、1968年のメキシコ、1988年のソウルだが、メキシコは一党優位とはいえ一応民主的選挙が行われていたのであり、ソウルもその前年に慌てて民主化宣言して移行が始まったところだった。

つまり、問題は36年ベルリン、80年モスクワ、84年サラエボである。
いずれも、五輪開催後5-11年後に国家や体制が崩壊している(40年の東京では行われもしなったし日本も5年後に体制崩壊している)。
つまり、独裁体制下で五輪を行うと、その国家や体制が近く崩壊するという奇妙なジンクスが見てとれる。だとしたら、北京は五輪を首尾よく開催できたとしても、5年ないし10年後には共産党一党独裁体制が崩壊する可能性が高いのである。
どうして独裁体制が五輪を行うと崩壊するかというと、話は簡単で、無理をしているからである。独裁体制というのは低開発の状態なのであり、そもそも五輪を行うだけのパワーがない。しかも民主国家と異なって合意や同意を経て行っていないので、五輪開催のための施設整備の過程で無理を行っており、その不満や歪が蓄積され、それが数年後に爆発するのである。
中国は確かに近年の経済成長は著しく富がある程度蓄積されつつあるとしても、それは表面的なもので、実際には貧困な内陸を考えれば、その実力は1936年のドイツにも及ばない。
しかも北京五輪は「グリーンオリンピック」などという大嘘をウリにしている。これが嘘であることは、北京の大気汚染のひどさを見ればわかることだが、なんとグリーンピースや欧米日の「知識人」と呼ばれる世間知らずの人たちの間では、それが信じられていて、北京五輪が「史上初の環境五輪」などと付和雷同している。
そのつもりで北京に行ったら、エライことになりそうだが、それは自業自得だとしても、36年のナチスでも思いつかなかった世紀の大嘘が、社会に矛盾や歪をもたらさないはずがない。
考えられるのは、五輪実施直前に、各地の暴動が拡大したり、会場近くで環境汚染が深刻化することである。前者はあるいは治安部隊を人海戦術で投入して開催期間中は鎮圧できるかも知れないが、後者に関しては大嘘をついてきた中国共産党指導部のお粗末な頭では避けられそうにない。
そうなれば、五輪開催どころか、世界から誰も北京になど行かなくなる。
あるいは首尾よく開催までこぎつけたとしても「グリーンオリンピック」がどこへやら、北京など大都市周辺には光化学スモッグが発生するわ、有毒ガスが発生するわ、黒心食品で人々が中毒を起こすわで、その看板の出鱈目さが明らかになって、中国の信頼性はゼロになってしまうだけだろう。
芝生に緑の着色をして「緑化」などと悦に入っている北京の粗雑な頭では、これは絶対に避けられない展開だ。

つまり、いずれにしても北京五輪は開催直前になって中止になるか、あるいは開催した途端に嘘がバレて世界からバッシングされるか、大失敗に終わる可能性が高い。
だとしたら、聖火など受け入れないほうがいいし、できれば参加も取りやめたほうがいい。光化学スモッグで同胞の選手や観戦客がバタバタ倒れることは目に見えているのだから、人々の健康と福祉のためには、ボイコット呼びかけは理にかなっているといえる。

クールベ、その他の美術のことども

2007-05-01 17:59:00 | 芸術・文化全般
オルセーでは印象派系の作品も実物で見ることができて感動だったが、プルードンと親交があり、かつ思想的にも共鳴していたクールベの作品も代表作の「画家のアトリエ」、「世界の起源」、「プルードンの肖像画」などもあって、良かった。ただ、間抜けなことに、やはり有名な「プルードンと子供たち」もオルセーだと勘違いしていたのだが、これはプリ・パレのほうだったので、今回は間に合わず残念だった。
オルセーはトイレの数が少ないのが難点か。ルーブルのほうがトイレは充実していた。もっとも私は汗かきで、今回のような妙に暑いパリでは日中はトイレに行かずに済むことも多かったので、お世話にはならなかったが、今後体調が若干悪いときとか、あるいは女性とかは困るだろうな、と思った。
今回、美術館としては、ルーブル、オルセーのほかは、中世美術館、ロダン美術館、ドラクロワ美術館を回った。ロダンは庭園もあって良かった。中世も有名な「美女と一角獣」シリーズのタペストリーがここにあるし、わりと中世好きとしては良かった。ただ中世といっても時代が新しい15世紀のものが多かったが。ドラクロワはいまいち。だから、後から考えるとその代わりにプチパレとオランジュリーを回ったほうが良かったかも知れない。
将来的にはやっぱり是非ともスペインのプラド、イタリアのウフィツィ、ロシアがまともになったらエルミタージュにそれぞれ行きたいと思う。

そういえば、オルセーって中国語では「奥塞」で、これは台湾なまりの北京語読みだと[au2]-[sai2]になって、台湾語のau3-sai2(論外、どうしょうもなく駄目駄目の意味)と同じ音になって、笑えた。事実は逆なんだが、どうして中国語でこんな表記をしたのか、わからんが。ひょっとしてトイレの数が少ないのが「駄目」なのか?