むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

フランス大統領選挙はフランスの石原ことサルコジ当選

2007-05-07 04:35:06 | 世界の政治・社会情勢
53.35%対46.65%。実につまらん展開だ!もしかの逆転を期待したが、事前の予想通り、サルコジかよ。
もしロワイヤルになったら、北京五輪ボイコット主張やEU武器禁輸継続路線などもあって、台湾の関係者の反応も加えていろいろ投稿できたのに、これでは何も書く気になれん。
http://fr.news.yahoo.com/presidentielle/

民進党予備選挙の党員投票で知日派・謝長廷が1位につけ、世論調査待たずに公認候補に事実上確定!

2007-05-07 04:30:25 | 台湾政治

(台北市地域の投開票所となった中山サッカー場で気勢をあげる謝長廷氏と支持者)


(実は背中合わせに隣同士だった謝長廷陣営と蘇貞昌陣営のテント)


(開票の模様)

2008年の総統選挙に向けて民進党の公認候補を選ぶための党内予備選挙のうち、党員投票が6日実施された。開票の結果、謝長廷・前行政院長が44.66%を獲得し1位につけた。
50万人を超える党員のうち、投票権がある党員は25万4963人。投票率はほぼ56%とあまり高くなかった。
事前の主流メディアの党員投票に関する「予測」では蘇貞昌・行政院長が優勢と伝えられていたが、蓋を開けたら謝氏が蘇氏を1万6千票近くも上回った。
民進党の規定では、9-11日に世論調査を実施する予定。しかし、謝氏はこれまでの調査では蘇氏より支持率が高いため、早くも今日の段階で謝氏の公認候補はほぼ確定となった(ただそれでも世論調査は実施する予定)。
蘇氏は敗北を認め、レース辞退と謝氏支持を表明した。また3位の游錫コン・主席も選挙活動の停止を表明し、事実上辞退。4位だった呂秀蓮・副総統は「最後まで戦う」と述べた。

民進党中央本部発表の総統予備選挙党員投票の最終結果は次のとおり:票数(得票率)
謝長廷 62,851(44.66%)
蘇貞昌 46,997(33.40%)
游錫〓 22,213(15.78%)
呂秀蓮 08,668(06.16%)

◆知日謝長廷vs反日馬英九の決戦へ
謝長廷氏は、京都大学法学大学院にも留学したことがある党内きっての日本通。国民党も含めて今回の総統選挙で取りざたされている6人の中で唯一日本語ができるし、対日関係をきわめて重視している。
国民党は馬英九・前主席だけが名乗りをあげて独走状態だが、今回民進党は謝長廷氏に事実上決まったことで、2008年総統候補は、知日・親日の謝長廷vs反日の馬英九の争い・決戦となることになる。もっとも現時点では、すでに国民党と馬英九氏の勢いは衰えており、それに謝長廷氏はこれまでの実績からも、権謀術数に長け、特に国民党に対する攻撃力には定評がある。今後は国民党と馬英九に打撃を与える術策がいろいろと出てくるだろう。そういった意味から、2008年に国民党・馬英九の勝算はほとんどない。2008年からの台湾総統は「京都大学出身者」になる可能性がきわめて高いということであり、日本人としては大いに注目し、喜ぶべきであろう。

◆謝長廷の大勝と蘇貞昌+新潮流の誤算
25県市別では、謝氏は台北市、高雄市、桃園県、台中県、彰化県、南投県、雲林県、台南県、高雄県、花蓮県、澎湖県、基隆市、新竹市、台中市、嘉義市、台南市、金門・連江県の18県市で1位。蘇氏は故郷の屏東県、台北県、新竹県、苗栗県、嘉義県、台東県の6県、游氏は故郷の宜蘭県の1県でそれぞれ1位だった。
特に、謝氏はもともとの地盤の台北市で57%、市長として評判が良かった高雄市で59%をそれぞれ獲得、大票田を固めたことが大勝につながった。
一方、統一派メディアがおだてあげて「優勢」だと伝えられた蘇氏にとって大誤算だったのは、長年県長を務めた台北県では謝氏との差は僅差に終わったことだ。また、党員投票の直前になって、県長が蘇氏支持を打ち出した民進党施政の県市のうち、蘇氏の故郷の屏東県と県長が強い嘉義県だけが蘇氏の大勝だった以外は、台南県、高雄県、屏東県、台南市では謝氏が勝利している。
これは、統一派メディアが言い立ててきた蘇氏の「人気」なるものが、実際には存在しない、国民党側が勝手に作ってきた虚像だったということであり、また、民進党の支持層や党員の間に蘇氏が依存してきた新潮流に対する反発が強かったことを示している。
(そういう意味で、国民党御用ジャーナリストである本田善彦氏や、馬英九御用記者である共同通信台北特派員氏は、いずれも民進党支持層の実態を知らず、無責任に統一派メディアに雷同して蘇氏人気を言い立てきたのは罪が大きいといえる。しょせん国民党の御用記者や追従記者に、民進党や台湾意識のことなど理解できないのである)

◆民進党支持層で広がった「横暴な新潮流」への反発
民進党内の新潮流に対する反発とは何か。新潮流は80年代の民主化運動草創期から民進党の政権獲得までは、社民主義と台湾独立を唱え、行動力・戦闘力もあって、民進党支持層から高い評価を受けてきた。ところが、政権獲得後は功績を我が物にして行政・利権ポストを独占したり、また昨年の陳水扁打倒運動の過程ではそれに呼応するメンバーも多かったことから、民進党内で急速に「横暴な新潮流」に対する反発が広まったのである。
(実際、これと同時に行われている年末立法委員選挙の予備選挙でもその傾向はさらに明確で、選挙区、比例区ともに、新潮流系が苦戦・脱落して、謝系が勝利している)

◆蘇陣営の謝長廷人身攻撃も逆効果に
また、今回の予備選挙の過程で、蘇氏と新潮流が、謝氏に対するアンフェアな攻撃を加えたことも逆効果となった。そもそも、謝氏は何の公職についていない無職であり、何の資源も持っていない。それに対して蘇氏は行政院長というポストにあって、行政資源を最大限に利用し、謝氏を攻撃し、追い詰めようとしたが、そうした「権力を嵩に着る弱いものいじめ」が結局は裏目に出たのである。
しかも、蘇氏はこれまで民進党内では穏健派として独立派と距離を置いてきたのに、予備選挙が近づくにつれて、それを意識してか、最近になって急に正名運動を進めて独立派に迎合したり、賃金引上げなどを決めて政策的に買収めいたことを行った。いずれも、国民党がよく行う手口であり、10年前なら民進党員にも通用したかもしれないが、現在では逆効果となったのである。新潮流と蘇氏は明らかに民意の動向を見誤り、民衆をなめていたといえる。
さらに、党員投票の直前になって、新潮流系と蘇氏が謝氏への激しい人身攻撃を始め、特に投票前日の5日の集会で蘇氏は15分の演説のうち12分を謝氏を罵倒することに使ったことも、反発を買った。これがなければ、党員投票では蘇氏は謝氏にこれだけ負けることはなかったとみられる。

◆棄保効果で游錫コンの票が一部謝長廷に流入か
游錫コンは事前の予想では3万票前後獲得すると見られていた。しかし結果的には2万あまりにとどまった。これは前記理由もあって、「新潮流に勝たせたくない」ために、1万票近くが謝長廷支持に流れたためと見られる。それを意識してか、謝長廷氏は6日夜早速游錫コン氏を訪ねて今後の協力について話し合ったという。

◆メディアの分布、蘇支持の自由時報の誤り
今回台湾の主要メディアの支持傾向は、はっきり分かれていた。
国民党・統一派系の日刊紙=聯合報、中国時報:蘇貞昌擁護、謝長廷攻撃
統一派テレビ局=TVBS、中天:蘇貞昌擁護、謝長廷攻撃
台湾派日刊紙=自由時報:反新潮流のくせに、蘇については擁護で、謝に批判的
台湾派テレビ=三立:謝支持、蘇批判(生ニュースもそうで、討論番組大話新聞はさらに明確)
台湾派週刊誌=新台湾:謝支持、蘇批判
台湾派テレビ=民視:謝と游支持、蘇批判(生ニュースでもそうで、討論番組では頭家来開講が謝支持、台湾chhiang声が游支持)
中南部の台湾派ラジオ局:ほとんど游支持、高雄では謝支持、蘇支持はほとんどなし
北部の台湾派ラジオ局=緑色和平:もともと謝系なので謝支持
つまり、陳水扁打倒に荷担して中国寄りになってきた新潮流が支持している蘇を、統一派メディアが露骨に援護射撃を行い、それに対して台湾派メディアの多くが謝支持に回ったという構図。ただし台湾派メディアでも自由時報だけは蘇支持で、これは台湾テレビの株式売却譲渡に絡む便宜供与など怪しい関係が裏にあるためと見られている。だから自由時報だけ読んでいて、三立などを見ていない人は、国民党陣営のアホどもと同様に、蘇のほうが人気があると勘違いしていた例もある。
まあ台湾派なら自由時報を読むしかないのが現状だが(台湾日報の停刊は惜しまれる)、台湾派メディアのくせに蘇を支持した自由時報は、聯合報や中国時報と同類でカスだったということになる。その点では三立と民視、台湾派ラジオ局などのほうが信用できた。三立は国民党批判ではかなり深い分析を行う。とはいえ、その三立も楽生院問題では楽生院解体派に近く、保存運動側に対して悪意ある報道をしていたのは問題。そういう意味では、今の台湾には完全にまともなメディアはないのは悲しい。

◆もともと中身が薄かった蘇貞昌
しかし、なぜ蘇氏が謝氏に対する人身攻撃を行ったのか?それは、謝氏と比べて、もともと蘇氏は政策や哲学の無さが明らかだったからだ。それでも以前台北県長のときには民進党支持層から人気を集めてきたのは、一見すると親しみやすく、巧みな演説にあったが、総統選挙となると問われるのは大局観であり、しかも演説の上手さでいえば、謝氏も演説の名手として有名であることから、余計にビジョンや哲学が問われることになる。
ところが、蘇氏は総統予備選挙となって台湾という国をどうしたいのか、外交、特に対中関係をどうするのかなどについて、明確なビジョンにかけていた。もともと台北県長時代にも、冠婚葬祭にこまめに出たり、トイレの清潔度をチェックするなど、細かいことばかり気配りしてきた県長級の人材だった蘇氏は、総統になったら必要な外交(対中も含む)・国防問題は関心の対象外だったということもある。つまりそもそも総統に名乗りを上げるほどの人材ではなかったということだ。
それならなぜ蘇氏が総統予備選挙に名乗りを上げたのか、私は非常に首をかしげたものだが、それは97年に蘇氏が台北県長になるときから依存してきた新潮流からの突き上げと阿諛追従があったに違いない。
新潮流にはそれなりに人材もいるので、蘇氏が苦手な外交面などで補填するものとみられたが、ところが新潮流が最近精力を注いできたのは、もっぱら党内権力闘争で、それは特に与党としての行政資源をいかに独占してうまみを享受するかという部分であった。

◆蘇の選挙後の態度は立派、競争後の団結は民進党の伝統
ただし、そうはいっても、蘇貞昌氏が党員投票で「予想」に反して敗れたことが明らかになった途端に、潔く、あっさりと負けを認め、「予備選挙の勝者を支持する」として予備選挙から降りることを明らかにしたことは、立派だった。蘇氏はこれまで負け知らずだったため、しばしば危機に直面してきた経験がある謝氏が潔く負けを認める性質があるのと比べて、潔さの点では事前に懸念をもたれていた。私自身もこの点は危惧していた。しかし、実際にはあっさりと負けを認めた。
これは前日の5日にあれほどひどく謝氏を攻撃した罪を相殺とは言わないまでも、ある程度償うものであったといえる。
もっとも、これが民進党の良さだといえるだろう。競争は激しく行い、ときにはひどい「同志討ち」もありうる。しかし、いざ結果が出たら、敗者は負けをあっさり認め、勝者に協力し、そして国民党との戦いでは党が一致団結して戦う。
一方、馬英九は「謝長廷氏になったことは意外。しかし選挙過程でひどい内部対立があったので、団結できないだろう」みたいなことをいっているが、それは国民党のあり方を投影したものに過ぎず、民進党に関する分析としては的外れもいいところである。
蘇氏の潔さを見て、民進党のそうした良き伝統と体質は失われていないことが確認でき、この点では非常に良かったと思うし、事前の罪はあるものの、この点で蘇氏の英断に敬意を表したい。

◆懸念要因は新潮流、彼らはどこへ?
実は、謝の直系と蘇の直系の間には、別に特に怨恨めいた関係にはない。その点では蘇氏が潔くレースから撤退したことで、直系の人間同士ではわだかまりはあまりなく、すんなり協力は進むと思われる。しかし問題は蘇氏を支持しておだててきた新潮流がこのまま黙っているとは思えないことである。
謝直系のある市議員は、私との電話で「新潮流は黙っているとは思えない。林義雄を何とかして担ぎだそうとするのではないか」といっていた。また別の謝支持派の党員も「一部は謝支持になるだろうが(実際に翁金珠は選挙過程で謝支持になっている)、一部はいわゆる第三勢力に、また一部は『同病相憐れむ、時代遅れのもの』同志として、馬英九のほうに近づくのではないか」とも指摘していた。
いずれにしても、新潮流による嫌がらせのような動きは当分続くだろう。しかし、民進党の党内文化からいって、負けたものがあっさり認めない往生際の悪さは、受け入れられるものではない。新潮流がもし往生際が悪い態度を取るなら、新潮流は自滅するしかないだろう。
確かにかつては民主化にあれほど貢献し、また私自身も強く惹かれたことのある本土派政治団体である新潮流が今のような形になり、そうなることは、私としては見たくはない。しかし台湾政治では、「時代遅れとなった者」は容赦なく淘汰される運命にある。そして淘汰されるものは往々にして自殺行為を行って自滅の時期を自ら早めてしまうのである。許信良、施明徳、李登輝が良い例である。

◆陳水扁も影響力・威信も大幅に低下
また、今回蘇氏が惨敗したことで、蘇氏を陰に支持してきたとされる陳水扁総統の影響力も大幅に低下したことになる。
そもそも、昨年の陳水扁打倒運動のときに、打倒運動に秋波を送ってきたのが、新潮流や蘇系が多く、打倒運動を批判し、陳水扁を弁護してきたのは謝系に多かったのだが、陳水扁がそうした「恩」を忘れて、蘇氏を支持したのは、謝氏の民間における声望の高さからレームダック化が加速することを恐れてのことだろうが、それも裏目に出ることになった。

◆謝長廷の「憲法一中」「対中姿勢」に対する誤解
今回の予備選挙の過程で、蘇貞昌氏と游錫コン氏が、謝長廷氏がかつて「今の憲法は一つの中国=中華民国という枠組み」だからこそ「もしアモイに行くとしても、憲法上は中華民国大陸地区に行くことになる」と発言したことを捉えて、謝氏を「中国派」だと攻撃した。
しかし蘇氏らは現行「中華民国憲法」とその増修条文を読んだことがないらしい。
今の中華民国憲法は本文にモンゴルやチベットの代表の規定がある「一つの中国=中華民国」という思想にもとづくものであり、それを追加条文の形で改正した現在効力がある増修条文の前文にも「国家が統一される前に」という文句がある。また中国大陸が「中華民国の潜在的領土」というのが中華民国法の設計思想であるからこそ、中華人民共和国公民だった阮銘氏がいとも簡単に中華民国身分証を取得しているのである。ここで「阮銘氏は独立支持だからいいではないか」というとしたら、それは的はずれである。だったら、酒井亨が取得できないのはなぜか。それは「中華民国憲法」によれば、日本は外国だが、中国大陸は中華民国の領土だからなのである。
謝長廷氏が指摘した「憲法一中」の問題は、まさに現行中華民国憲法に含まれる設計思想の根源的問題を指摘したものであって、だからこそ中華民国憲法は問題なのであり、台湾の憲法にしなければならないということを言いたいのであって、「謝氏は憲法一中を唱えて、中国派だ」というのは的外れである。今の憲法が「一中憲法」ではなく、ちゃんとした台湾憲法だというなら、民進党が現在進めようとしている改憲や制憲は、どういう意味なのか?
しかもおかしなことに、「憲法一中」という字面に反射的に反発してか、独立派知識人の多くは、今回、謝氏を批判して、蘇氏あるいは游氏支持に回ったことである。しかし今回の投票結果を見れば、一般大衆や庶民は、そんな字面に幻惑されず、本質を見極めていたことが証明された。

また、謝長廷氏は基本思想は強い台湾主体意識を持っているが、戦術は柔軟である。そのため、一部の独立派知識人から対中穏健派だとみられ、一部日本メディアもそう記したことがあるし、それは誤りである。
謝系の立法委員には深緑の人が多いし、今回の投票や世論調査でも、謝氏の支持が高いのは、もっぱら深緑層なのである。しかも実際私が知る謝長廷氏は基本哲学としてはきわめて強固な台湾独立派なのである。しかしだからこそ具体的な政策執行では臨機応変な対応ができるのである。反共主義者のニクソンが逆に対中和解ができたように。哲学が確固としていなれば陳水扁や蘇貞昌のように、ふらふらしているだけだからである。
台湾の歴史では、知識人はろくな役割を演じてこなかった。むしろ庶民、特に労働者階級が最も聡明な戦いや選択を行ってきたが、今回もまた証明された格好だ。
台湾のインテリは本当にどうしょうもない。「一中」という文字面を見て怒っているのは、それこそ名分論というシナ思想ではないか?もっと実際の議論の中身や本質を見るべきだろう。そういう意味では、台湾社の連中も今回はほとんどアホだったといえる。台湾の希望は庶民にあり。しかもその庶民は親日なので、それも謝氏支持に傾く原因にもなった。

◆馬英九の無知・反日と謝長廷の知恵・知日
謝氏が党員投票でも1位となったことに、統一派メディアや馬英九は「意外だ」と驚いたようだが、それこそ民進党支持層の実情に無知だということを示している。
謝氏はもともと「智多星」(知恵のある巧者)として民進党内では評価が高かったのである。そして実際に、今回の予備選挙でも「台湾維新」というスローガンを初め、あらゆる政策について長期的青写真と具体論に優れたものを提示してきた。
また、台湾にとって日本との関係はますます重要であり、その点では今回の総統レースの下馬評に上げられている中では、唯一日本語ができることも絶対にプラスである。謝氏の日本語は長じてから習得したものであるため、台湾語なまりが強く、一見聞いたところでは「下手くそ」に聞こえるが、実際には運用能力はきわめて高いし、留学から帰って30年もたっていることを考えれば、上手いほうだといえる。また、いまでも日本語で哲学や政治に関するさまざまな書物にも目を通しており、読解スピードも速い。
台湾社会では最近とみに日本への親近感が強まっており、民衆への訴えかけとしても、日本とのつながりは大きなポイントとなるものである。
それに対して馬英九氏は「ハーバードで磨いた流暢な英語」がウリらしいが(爆笑)、しかし台湾において一部勘違いしたインテリ層を除けば、実は米国と英語に対する欲求や好感度はそれほど高いものではない。特に911以降米国が台湾に友好的ではないという認識が広まっているし、言語も多様化しつつある中で、「英語と米国」を鼻にかけて、しかも英語よりも台湾語のほうが下手くそな馬氏の言語運用力は、台湾の庶民層に対してはマイナスでしかない。
国民党はそんなこともわかっていない。だから2008年は国民党にならない。民進党・本土政権が続くだろう。

◆陳水扁との違い
謝長廷氏と陳水扁総統との違いにも触れておきたい。台湾大学法学部出身で司法試験トップ合格という点では「法学秀才」と同じように見えるが、陳水扁氏は子供のときから一心不乱に勉強一本で、表で遊ぶことも知らず、落第や挫折も無かったのと比べて、謝長廷氏の半生は浮き沈みが激しく、バイクを乗り回したり、器械体操に熱中して落第したりしてきている。また、陳氏は海事法という実学で即物的なことしか理解しないのと比べて、謝氏は法哲学専攻で抽象的な哲学も議論できるところが異なる。
陳水扁総統は生真面目すぎるところが、長所でもあったが、同時に欠点でもあり、また子供のときに遊びを知らなかったことが、政権を取ってからの野党や中国に対する下手な対応につながっているといえる。すなわち、陳氏の場合は、喧嘩すべきときに妥協して、妥協すべきでないときに妥協するというトンチンカンな対応が政局の不安を自ら招いてきた。
しかし謝氏はもともと性格がアバウトなところもあるし、遊びも適当さも知っているから、喧嘩や妥協を臨機応変に使い分けられる。2008年に謝氏が順当に総統になれば、これまでとは違った展開が予想されるだろう。
もっとも、そういう点では、1994年の台北市長選挙の予備選挙のときに、実は謝長廷氏には勝ち目があったのに、あっさりと辞退したことは今にして悔やまれるといえる。あのとき謝市長になっていれば、2000年以降は謝総統だったはずで、もっとうまくやっていたはずなのだが、まあ時代というのはそういうものなのだろう。物事の発展には紆余曲折がつき物だからだ。