カジュアル・アミーガ         本ブログの動画、写真及び文章の無断転載と使用を禁じます。

ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー幽霊屋敷 22

2009年07月17日 | 投稿連載
幽霊屋敷 作者大隅 充
      22
結局一週間どころか十日経っても食いしん坊で
暴れん坊の雑種犬の貰い手がなくどうなるのか僕
はドキドキして日々を過ごしていたが、チャータ
の処遇については何の変化もなく、毎日疲れて帰
ってくる父ちゃんも母ちゃんも「お前は、ショウ
ガナイ奴だな。」と出迎えて甘えるチャータの頭
を撫でるだけだった。
しかもあれだけ嫌っていた母さんがスーパーのワ
ゴンセールで安かったといってチャータに花柄の
ワンピースを買ってきて朝着せて散歩させている
のには、驚いた。
チャータはオスだよ、って言っても、いいの。可
愛ければ。わたしは、お前の下に女の子がほしか
ったの。父ちゃんがあんなにクタビれてしまわな
ければ・・・と鼻の頭に汗をかいて怒って言うの
でもうそれ以上は反論しなかった。
そしてチャータはよく何でも食べてコロコロと
して僕が学校から帰ってくると玄関から飛び出て
来てペロペロと僕の顔を舐め、いつの間にか僕ら
は兄弟のようになって川に釣りに行くのもグラウ
ンドでサッカーするのにもチャータがいつもつい
て来た。チャータはチャータですっかり町の生活
に慣れて紐を離しても決して脱走する気配はなく
秀人でもタツヤ兄ちゃんでもぴょんぴょんジャれ
て町のどこでもついて行った。
 特に放課後小学校の学習農園の敷地で秀人とチ
ャータを連れて追い駆けっこをしている時は、農
園主任のおじいちゃんの渡辺先生や四年生や植物
係の女生徒たちからいつも注目をあびてチャータ
王子は絶大な人気者になって、チャータを連れて
来ないと低学年からクレームを言われるほどだっ
た。
そのうち秀人とチャータ連れでシューパロ湖や夕
張川に遊びに行くのもどういうわけか植物係の松
本ユカリがついて来るようになった。最初は秀人
がチャータのエサくれるからとドッグフードのポ
シェットバッグを持ったユカリをいっしよに連れ
てきてもいいだろうとニヤけた顔で僕に同意を求
めたが、二回目からはユカリちゃんの方が積極的
についてくるようになって、僕としては自由に沢
で立小便できなくなったりして、早く秀人とユカ
リとも離れて、チャータとふたりで鮭釣りをした
かった。
しかし松本ユカリは、一向に気兼ねすることなく
ある時は僕ら二人分のお弁当もつくって持って来
たり、あるいはチャータがタツヤ兄ちゃんのスタ
ンドに遊びに行っていない時でも沢登りや山歩き
に僕らについて来た。女が危険な沢登りなんてで
きないし、足手まといなのでわざと秀人に黙って
スリル度A級の沢道を選んでユカリがついて来れ
ないようにしても、数時間後ベースの滝壺に戻っ
てみると松本ユカリは、泣くどころか枯れ枝で焚
き火してひとりで忍耐づよく待っていた。
秀人は、ごめんごめんと必死でユカリちゃんのご
機嫌をとっていたが僕はただますます鬱陶しくな
るばかりだった。
松本ユカリは、どんなに意地悪な言い方をしても
ただ黙って笑っているばかりでチャータのことを
聞くでもなくナナカマドの実がどうとか、針葉樹
林の植生がどうとか理科の先生みたいなことばか
り話して身長も僕や秀人より一回り大きいのでど
うしても先生かうるさいお姉さんが一緒にいるよ
うで、僕はできるだけ秀人に内緒で裏道を通って
チャータとの釣りに行くようになった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岡埜栄泉の月の兎~シーちゃんのおやつ手帖101

2009年07月17日 | 味わい探訪
岡埜栄泉本舗のサイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする