森の王者 作者大隅 充
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それから一年二年と過ぎた。
明らかにチャータの体格は、黒カミソリを凌ぎ、グレー
の兄弟ほど大きくなった。ボスのミカヅキがガキには
ガキの使い道と言っていたが、今はもうガキどころか
シカ狩りの先頭で必ず一番食べ応えのある大ジカを
最初に射止めるのは、決まってチャータだった。その
獲物を見つける勘の良さと獲物を追いかけて追い詰
める速さは、今までにこのヤマイヌの群れでは見た
こともない鋭さだった。いや、おそらくこの奥山でも東
北のどこでもチャータほど素早く、正確な弓矢のよう
に獲物へ突進して、どんな険しい岩場でも駆け登り駆
け下りるヤマイヌはいない。ボスのミカヅキは、チャー
タを二番手リーダーとしていつしか頼もしく思うように
なっていた。
そしてこのヤマイヌの群れには四匹のメスがいたが
みんなチャータのキリリとし身体に夢中になった。しか
しチャータは男盛りを日々漲らせていたが、それらメス
の近づきや誘惑にはビクともせずマイペースを崩さな
かった。
チャータには、いつか霧の湿原で見た栗毛のメスオ
オカミの美しい姿がいつも頭のどこかにあった。あの
遠い原始の大地から時を遡ってやって来たような神々
しい女神。あれ以来その姿も匂いも現さない栗毛。本
当にあの栗毛のメスオオカミはいたのだろうか。ときど
き満天の夜、月を見つめてたまらなく寂しくなって長い
遠吠えをすることがあったが、その寂しさの大本にあの
栗毛がいたのかとこの頃チャータは思うようになった。
それはチャータが子供から青年期になり身体の奥の
方からはげしい情欲の激流が湧き出てくるからだった。
そんな時ただ吠え岩山を走りブナの根っこに頭と腰を
ぶっつけ、喉がカラカラになるまでエネルギーを消耗し
てしまう。チャータは明らかに大人になった。黒カミソリ
の狡猾さやミカヅキの弱さが自然と見えて来て、一様
ミカヅキの群れに加わっているがかれらのことがとても
小さく思えて仕方ない。黒カミソリが峠道で後ろからチ
ョッカイを出した時チャータは、噛み殺す一歩手前まで
押し倒した。それ以来まったく黒カミソリは先輩風を吹
かすどころかチャータの前では目が合うと常にしっぽを
下げて目をそらすようになった。
この奥山のヤマイヌの群れにはもう学ぶべきものは
なくなったとはっきり感じる。しかしこれより北の白神の
山へ行くにはまだ時期が悪すぎる。もうひと冬越さなけ
ればならない。大クマもいるし、何よりタルカがその縄
張りを主張して命がけの戦いになるだろうしエサの確
保が冬期は困難になる。
そしてこの三年目の秋は、山は異常だった。クリや椎
、ドングリの実が極端に少なく、川の魚もどこへ行って
しまったのか姿を見かけるのに苦労した。当然山に暮
らす野生動物は、自分の腹を満たすのに精いっぱいで
何日も空腹で枯葉の森を彷徨うことになった。そんな
時大クマや猪タルカに出会ってしまうと逃げるしかなか
った。ミカヅキの率いるヤマイヌの群れもみんな日々苛
立っていた。僅かなウサギやネズミでも奪い合いが起き
、リーダーのミカヅキの指導力では納めることができな
いほどに群れは追い詰められていた。
そろそろ雪がチラチラ降り出した冬のはじめ。一匹の
子シカの死骸をめぐって黒カミソリがついに老いたリー
ダー・ミカヅキに逆らってシカの肉を独り占めした。それ
も隣山の黒ヤマイヌの群れの力を借りて。黒いヤマイ
ヌの集団に突かれているシカの肉の傍には、ズタズタ
にされたミカヅキが転がり、その前で黒カミソリは自分
の分の肉だけ喰い漁って平然としていた。奥山の群れ
はこれでバラバラになり、グレーの兄弟も黒ヤマイヌの
集団に素直に従ってついて行った。チャータはちょうど
その時沢に狩りに行っていなかった。雪原の中死んだ
ミカヅキの前にミカヅキの娘のシロが一匹だけ佇んで
いて事の成行きをチャータに聞かせた。すぐにチャータ
はシロをつれて黒ヤマイヌ族探しに山をめぐった。
ニ匹は、イイデの雪山で20匹からなる黒ヤマイヌの
集団に追い付いた。チャータは、このヤマイヌの後ろの
五匹を岩場におびき寄せてせん滅させた。次に裏切っ
た黒カミソリを高山の崖から落とし、黒ヤマイヌの首領
である片耳が千切れた大きな黒ヤマイヌに迫った。片
耳の黒ヤマイヌは、獰猛な奴でなかなかチャータとは
互角の争いになった。そして何時間もニ匹が雪山で対
峙している間他の黒集団が若いシロに襲いかかった。
チャータは片耳をかわしてシロのところへ慌てて駆けつ
けた。その時ものすごい音が鳴り響くのが聞こえた。
とってもキュートで
すこぶる賢くて
愛想も機嫌もいい
超ー愛くるしいチワワちゃん。
ワタシは、そんなチワワに憧れます。
ってぼく、言ってはみたけど
そんなかわいい子って
みんな小さいんだよネ。
ぼくと違って・・・
森の王者 作者大隅 充
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一瞬世界が真っ暗になった。
そして怖ろしく静かな白い闇の海に投げ出された。
チャータは、シロの首の肉を咥えていた。少なく
ともまだ温かいシロとチャータだけは生きている。
後は、まったくわからない。ただ冷たい感覚と視
界がふさがれた闇があるだけだった。片耳も黒ヤ
マイヌもクンとも鳴声がせずどこにどうなったか
さっぱり分からない。数時間後身体がやっと動く
ようになってシロを連れて雪の中から這い出たと
き、巨大な雪崩が起きたのかと理解できた。
雪山は風景を変えて木々がなぎ倒されて雪原に
なっていた。黒ヤマイヌたちは、どうやら谷底ま
で流されたようだった。チャータは、足の甲を擦
りむいて骨が見えていた。しかし傷は小さく引き
づりながらでも歩けた。そして若いシロは、チャ
ータに覆いかぶされたお陰で無傷で雪原に息を取
り戻した。
数日後山の縄張りでは黒ヤマイヌの集団は、半
数に減っていた。ミカヅキの集団はシロとチャー
タとグレー弟だけで後は壊滅した。この残った集
団たちで新しいテリトリーを探して白神の山を目
指した。
数か月の山越えの強行軍で春から初夏へ季節は
めぐっていた。そしてオクヤマと風の谷を越えた
高原へみんなは出た。そこは、なだらかな丘にな
っていて一面赤いチングルマや黄色いゼンテイカ
の花が咲き乱れていた。二十匹たらずの野犬の集
団だったがいつの間にかリーダーはチャータにな
っていた。チャータとシロを先頭にエサに乏しく
皆痩せこけていたけど歯向かったり勝手な行動を
とるものもなく極めて当卒のとれた集団になって
いた。長い遠征の結果やっと平和な場所に辿りつ
いたとき、ちょうど宵のはじまる頃で花園の高原
の上にまん丸いキレイな月が出ていた。
チャータは、みんなに振り返って「ここは『月
の丘』と呼ぼう。これからわれらが住む縄張りに
なるのだから」と告げると魂の底から突き上げる
ような遠吠えをした。
月の丘。なんとロマンティックな響きだろう。
腹を減らしたヤマイヌたちは、もう険しい山に登
ったり、激流の沢を渡ったりしなくていいと思う
とほっとしてお互い痩せた肩を寄せ合って眠りに
ついた。
チャータは月明かりの中若いシロの首を噛み、
身体が宙に浮きそうな苦しいまでのシロの甘い匂
いを嗅いではげしく腰と肢とをこすり合わせた。
お尻を突き出したシロの弱い溜息にマスキングす
るみたいに大きな声を張りあげてシロの上に乗っ
かった。シロは頭を上下に振り、平原のチングル
マの花弁が千切れて鼻にはり付いて悶えた。チャ
ータの星空を切り裂き飛翔する雷竜の如き逞しい
男の竿が伸びあがり、シロの身体を真っ二つにし
た。今度はチャータより高い声をシロが満月に向
かってあげた。
草原の花に命が宿るようにチャータとシロの背
中の毛はかたく立ちあがった。丘の上で休んでい
たグレーの弟は、そんなチャータとシロを薄目に
見て微笑むと再び眠りについた。
その年の秋。ヤマイヌたちが新しいテリトリー
にやっと慣れた頃。シロは三匹の子を産んだ。チ
ャータの二世たちだ。メスがニ匹に一番下が男の
子だった。チャータは父親になったが自分が父に
育てられたこともなく母もほんの数カ月で別れ別
れになったので小さなミルク臭い口がピイピイ寄
って来るのに戸惑った。しかし子供たちは、食欲
旺盛でシロの乳をむさぼって食らいついていた。
一番大きな女の子がシロの最もミルクの出る乳に
喰いついて、次の女の子がその後につづき小柄な
男の子は乳の出の悪い腹の下のオッパイに吸いつ
いた。この子らの生存競争があまりにも激しいの
でシロは時々、姉になる白毛の子を怒り、黒毛の
弟に一番いいオッパイを付け替えてやった。そん
な時牙を剥いて子をたしなめるシロの怖い顔をチ
ャータは、はじめて見た。何日もそんな子育てが
つづいて、三匹の子らはやっと同じ大きさの仔犬
に育った。
高原をウサギを追い、小鹿を追い白毛の女の子
らと黒毛の男の子にチャータは狩りのやり方を教
えた。真ん中の女の子以外はみるみるその技を覚
えてまだ半年も経たないのに一人前にねずみを捕
ってシロやチャータの前に誇らしげに咥えてくる
のだった。
チャータは、この平和な高原で子育てできるこ
とに感謝して群れを引き連れて白神の谷から高原
の口までの「月の丘」の林を駆け巡った。雨がつ
づき酷暑が幅を利かして木の実が採れなくてもチ
ャータの群れは確実に獲物のシカを射止め群れの
誰もが飢えることはなかった。チャータの無口な
がら危険なことには自ら臨み、野犬同士の争いに
は容赦なく攻撃して悩むものにはやさしく鼻面を
舐めてやる。そんなリーダーの資質が深い信頼を
みんなから勝ち取っていた。
ぼっぽ通信。
あの、ワールドカップの勝者占いで
当てつづけたドイツの水族館タコのパウルくんが
26日水槽の中で死んでいたそうじゃ。
3才ぐらいってことで
どうやら寿命だったみたいだ。
占いでついつい、疲れたのかもしれん。
冥福を祈るよ。
めんちゃんは、占いどころか
これって特技もないから
大丈夫。長生きする。
わしが太鼓判押すよ。
それってほめられてるの?
朝咲く花びら。
夕顔は夕方咲く花びら。
花って色がいいね。
散歩でパアーと目に入るよ。
鮮やかさにぽっとする。
ぼく、大人になったかな・・?
なんか朝顔が笑ってくれたように
揺れたよ。
おとな・・・じいさん???
久々に6丁目Cafeに行ったよ。
沖縄の野菜サラダに
いつものエビス。
うーん・・・・旨そう。
と言っても
ぼく・が・呑んでる・わけ・じゃない・よ。
でも
6丁目の隣のドッグ・フードの店が
今月でなくなるんだって・・・
うーん・・残念。
ぼくの大好きなカミカミチキンが手に
入らなくなるぅ。
どうしようーーーーっと。
アライグマに19針も縫うケガをさせられた
子ザルのみわちゃん、復活して
また
大好きなうり坊の背中に乗り
コンビ復活。
元気な姿をみせる。
どうじゃ、めんちゃん。
よかったのう。
おまえさんもうり坊のときがあったし
子ザルのみわちゃんみたいに
ヤンチャな子ザル期があったの、
思い出すなあ。
は、は、恥ずかしいよ。ぼく。。。。
自由が丘へゆく途中に
せせらぎがあるよ。
水って面白い。
あんなに暑い夏には
心地よくてもっと冷たくあれって
思っていたけど
秋になると
水が冷たくて長く入ってられないよ。
ちゃぷちゃぷ、ペロペロ・・
お水飲んだあと、
すぐに
自由が丘のお祭りに行ったよ。