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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

紅芋ケーキおもろ~シーちゃんのおやつ手帖102

2009年07月24日 | 味わい探訪
こちらのお菓子は沖縄通の友人・ほたてさんに頂きました☆
ほたてさん、ご馳走さまでした!
コメント (2)
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さすらいー幽霊屋敷23(最終回)

2009年07月24日 | 投稿連載
幽霊屋敷 作者大隅 充
    第一部最終回
 いよいよ年が明けて4月になれば、僕らは六年生に
なる。もうクラスでも町でも幽霊屋敷について噂する
者はいない。チャータは天性の明るい性格でますます
元気になって父ちゃん母ちゃん以外に隣近所の誰から
も好かれるアイドルになった。
 新しい年は除夜の鐘からずっと五日間激しい雪がつ
づいた。夕張のすべてが白い雪に覆われて、母ちゃん
はこんな雪嵐は初めてと僕にお年玉を渡しながら言っ
た。
そして六日目。やっと雪がやみ、久々に晴れ上がった。
僕は、真っ青な空の下キラキラと光る深雪をゴム長で
踏んで家を出た。大きな重い鞄を両手で抱えて転ばな
いように一歩一歩駅の方へ進んでいくと雲の上を歩い
ているみたいに超軽い雪煙が足もとであがった。
僕は、清水沢駅のホームで上りの電車を待つ間マディ
ソン・スクウェアと書かれた古いビニール製の鞄と一
緒にベンチに座った。まだ電車が到着するのに20分
はあった。僕がポケットからメロンパンを出して食べ
始めると、古い鞄がクンクンと鳴いた。
中にはチャータが入っていた。
そう。僕は、自分のお年玉を元手にチャータのために
岩見沢の獣医さんのところへ予防接種を受けに行くと
ころだった。
犬用のキャリーバッグを買ってほしいと言ったのだけ
れど父ちゃんは、もったいないこの炭鉱で働いていた
時代にカンテラや弁当を入れていたマディソンバッグ
がまだ充分使えるからこれにチャータを入れて行けと
押し付けられたのがこのかっこ悪い鞄だった。古くて
僕は恥ずかしかったが、駅員にも乗客にも仔犬が入っ
ているなんて気づかれないことだけが唯一いいことだ
った。
「駿ちゃん。どこまで行くの。」
赤いマフラーをした植物係の松本ユカリが声をかけて
来た。
「うん。ちょっとお使いで岩見沢まで。」
「ふーん。この鞄の中チャータが入ってるんでしょ。」
と鞄を挟んでベンチにユカリちゃんは座った。
「わかる?」
「だって。さっきからこの中でクンクン鳴いてるもん。
わかるよ。」と大人びて笑った。
するとチャータはユカリの匂いと声に反応してワンワン
と吠え、鞄ごとぴょんぴょんと動き出した。
「こら。じっとしてろって。」
とチャックを少し開けて僕は、メロンパンのカケラを落
として大人しくして貰おうと思ったがパンをくわえたま
ま閉めようとするチャックをぐいぐいと鼻でこじ開けて
スポンと顔だけが鞄から出てしまった。
僕は、仕方ないので残りのパンもやって首を撫でるとチ
ャータは顔を出したまま大人しくなった。
「駿ちゃん。いやらしい。」
松本ユカリが言った。
「なんで?」
と僕が不思議そうに聞くと、
「この犬、深田あかりさんの犬なんでしょ。秀人からみ
んな聞いたよ。だからこんなに一生懸命飼ってるんだ。」
ベンチには、僕とユカリちゃんしかいなかったがどう見
ても僕らが同級生とは思えないほど松本ユカリの表情が
大人の女の人のカオをしていた。
「駿ちゃんまであの、いなくなったアイドルのあかりさ
んに参ってしまうなんて思ってもみなかった。」
そういうと松本ユカリは、立ち上がってホームの先頭へ
歩き出した。
「違うよ。僕はこいつが可愛いから飼ってんだ。変な誤
解するな。」大きな声を出した。
ユカリは立ち止まった。
「お前。秀人と仲良くしてればいいだろ。なんでチャー
タのことやあかりさんのことに首を突っ込むんだ。バカ。」
松本ユカリは、くるりと振り向くとツカツカと戻って来て
赤い目をして言葉を僕の頭の上から投げつけて来た。
「秀人なんて関係ないでしょ。嫌いよ。」
そういうとチョコレートを僕の手に握らせて走って行った。
僕は、彼女が泣いていたのを見逃さなかった。
そして僕は、チャータと深田あかりさんとこの夕張の町と
が線路のレールみたいにもうこれ以上決して交わらないだ
ろうとおぼろげに感じた。
やがて列車の入ってくるアナウンスが流れてきた。初めて
一人で乗る遠出の列車の姿が信号機の向こうに小さく見え
てきた。
         
                    おわり     
コメント
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