月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「世界最速のインディアン」(THE WORLD'S FASTEST INDIAN )

2008年05月28日 | ◆サ行&ザ行

やっと観る事ができた「世界最速のインディアン」!
2005年 アメリカ、ニュージーランド製作
監督:ロジャー・ドナルドン

アメリカのユタ州にあるボンヌヴィル塩平原で自作の愛車インディアンを思いっきり走らせたい。そこは普段走っている砂浜と違い、どこまでも続く塩の平原。距離も地面の硬さも走りには理想的な場所。そこでなら本当の速さを試せる!世界に数えるほどしかないバイクの聖地。

愛車インディアンで記録に挑戦したい。そんな夢を抱いて25年・・・・・今年が挑戦するラストチャンスかもしれない。

廃屋のような小屋で年金暮しのバート・マンローは、庭の芝刈りに頓着しないなどご近所の人たちにちょっとばかり迷惑をかけながらも、

世界最速のインディアン

部品を集めてはバイクの改良に余念がない。年金暮らしゆえ慎ましい暮らしだが、旅費を蓄えるためにさらに倹約した生活ぶりは、時計の針を思い起こさせる。つまり、とても自然なのでストレスもなく何とも見事・・・・
孫のような友人の隣家の少年(アーロン・マーフィーという子役)との友情に恵まれて町の人々にも愛されている。

世界最速のインディアン

そんなライダーの彼を不良青年たちがからかうために、マシーンでの勝負を挑んでくるが・・・・、通常起こりえるようなこと、暴力や諍いなどは何も起こらず、驚異的な走りを見せつつも折り返し地点でターンできず勝負には負けるマンロー。インディアンは直線しか走れないのだ・・・・それが何とも面白い。けれど、そんな走りの後もインディアンの改良に余念がないマンロー。

拘泥しない心が周囲の人たちをほっとさせるのが良く分かる。走りの見事さと彼の何ともほっとさせてくれる人柄や人間性に不良たちもいつしか心を開いていくのもとても自然で、畏敬の気持ちというのは、自然に生まれるものだということを私たちに思い出させてくれる。

少年との友情もそうだが、旅費のカンパを集めるパーティを開いてくれる町の老人クラブの人たちとの交流も、そして不良バイカーたちとの出会いも相手にいかなる思惑があろうとマンローにとっては皆温かいものになる。なぜだろう。

怪我や事故を恐れないのかと聞かれたとき、彼は語る。人はいつか死んでいくものだ。誰にでも死はやってくる。人間はイモータルな存在ではないということを彼は実にそのまま素直に受け入れている。
愛車インディアンに乗って走る5分間は何十年もの人生に匹敵すると。いや、何十年という人生の時間もその5分間に匹敵するのだという彼の言葉は胸を熱くさせる。


見逃していたアンソニー・ホプキンス主演のこの映画。老いて童のようなハートと笑顔を見せるマンローを無論ホプキンスが演じているのだが、やはり素晴らしかった。 

 

ユタ州までの道のり・・・・・ニュージーランドを出港する際、不良青年たちから餞別を貰い、貨物船内で働きながら不足分の旅費をまかない目指すはアメリカ、ユタ州のボンヌヴィル塩平原。そこで開催される競技で愛車インディアンの最速に挑戦する夢・・・・

その旅路で「おのぼりさん」のマンローは、実に多くのトラブルに見舞われるが、そのとき出会った人たちに助けられながら前に進んでいく・・・。

天は自らを助けるものを助ける・・・・・という言葉を、思わず思い出してしまったほど。彼は物事を解決するために自分に出来ることを骨身を惜しまず行うので、相手もいつしか手助けするようになってくる。相手に幸せを与えることで彼自身も多くの人々から助けてもらう・・・・

これができたら本望だと思うものを持った人間には往々にして、意志が強固な分自意識過剰で頑迷なところが見受けられるものだが・・・・、マンローにはそれがない。

年老いても夢を持つ人間にも往々にして、自分勝手でわがままなために誰かに自己犠牲を強いたり、周囲に甘えていながらそんな側面には目を向けようとしない狡猾な年寄りも少なくないが・・・・、マンローの自立度は驚異的だ。

そんな「力み」があっては良い走りはできないだろうし、狡猾さや甘えで我が身を取り繕っているようでは、やはり良い走りは出来ないに違いない。マンローは手作りの愛車インディアンが最速のスピードを出せるように改良し続けることに余念がない人生を送ることで、あたかも座禅してきたのと同じ状態に到達しているようだ。だから、彼と出会った人々は彼に心を自然と開いていくのだろう。そこに「喜び」があるからだ。

出会う人、出会う人に、
彼は笑顔で手を差し出して言う。

「Hello,My name is Burt Munro」

人間関係のイロハはここに始まりここで終わる。
夢の実現のために何十年もこつこつと地道な努力をする。決して諦めないその情熱はとてもピュアーだ。目前の状況をあるがままに受け止めることができるのも、そこに邪念がないからだ。必要なことは必要に応じて考えるという柔軟な生き方も、こういう人といっしょにいられたら、人生をあるがままに楽しめるのかもしれない。

マンローはインディアンを愛するように、
まさに人生を愛しているのだ。


最新の画像もっと見る