苦しくも 長き道を
来たりて
倒るることも せんなきと
身をよこたへし
地の上に
いつしか 絹のしとねありて
われしばし まどろみに落ちぬ
夢を見しか 見ざりしか
わからぬ間に
あまつ日の光の 語りし風が
われを 森林の声の
小箱に しまひて
小籠に鳴く 小鳥のごとく歌ふ
小さき おるごおるを
こしらへたり
狂おしく 鳴く歌の
たれに とどくと
聞くも せんなきゆゑ
聞かぬが
のどより熱く
引き出されし歌は
夢の向こうに鳴く
愛児の耳を恋ひて さまよふ
いづこに ゆくか
いづこに
苦しくも 長き道を
来たりて
足折れて 倒るる
わが身を 夢に包みて
風にかすめとられし つきしろのごとく
われをさらひし方は
どなたか
どなた か
われの われにあらざる
われを
小箱の鳥のごとく
まどろみの夢に 生きる
忘れよ と
空耳のごとき
風が ささやく