丁寧に謝罪の言葉を重ね、怪我が治るように神に祈ることを約束すると、アシメックはその家を辞した。そしてゴリンゴに付き添われながら、川辺に戻った。
怪我をした女はまだ若かった。子供のような顔をしていた。髪が長く、少しアロンダに似ている。馬鹿め。こんなことをするとは思わなかった。アシメックはくちびるをぎりりと噛んだ。
川岸に立つと、アシメックはまた振り返り、自分を囲んでいるヤルスベ族の人間たちを見まわした。みな、憎悪に染まった目で自分を見ていた。その目には、嫉妬の色もあった。自分たちとは違う種族の人間の、信じられない男を見ているのだ。ゴリンゴよりも背が高い。女のように髪を伸ばし、刺青もしていないのに、美しく、立派に見える。
いらだちが空気の中にただよっていた。
アシメックはその中で、ただ一人だけ、静かに自分を見ている目に気付いた。何気なくそれに見やると、それは女だった。見違えるほど痩せていたので、アシメックは最初それがアロンダだとは気づかなかった。
病気だとは聞いていたが、頬がこけるほどに痩せていた。そのせいで、大きな瞳が一層大きく見える。美しいことには変わりないが、驚いて、思わずアシメックはアロンダを見つめた。アロンダとアシメックはしばし目を交わした。するとアロンダの目から、涙がぽろぽろとあふれ出た。かと思うと、彼女はすぐに顔を背け、そこから走り去っていった。
「アシメック」
ダヴィルが声をかけた。舟の準備ができたのだ。すると彼は我にもどり、顔を明るくして、手をあげて、そこにいる村人たちに挨拶した。立派に誇らしく、男らしく挨拶をした。人々の目がおどおどとゆれた。実にいい男に見える。
舟に乗って、ヤルスベの岸を離れると、アシメックは腕を組み、今後のことを考えた。ゴリンゴが、このままこのことを忘れるわけがない。