稲刈りが終わると、山の採集がある。イタカの向こうのアルカ山に木の実やキノコを採集しに行くのだ。今年の秋の実りもすばらしかった。栗の木は例年になくたくさんの実をつけていた。アシメックも、去年と同じように、野生の林檎の実をもいだ。実を取る人間のほうが不安になるほど、林檎はたくさんの実をつけていた。
アシメックは境界の岩の所にいき、その向こうを見た。オラブに声をかける気は起らなかった。去年とは何かが違う。あのときはまだ人間の世界にいたオラブが、今は全然別の世界にいるような気がするのだ。
なぜだろう。何が、去年とは変っているのか。
榾を背負っていた女が一人転んでひざをすりむいたが、ほかには大して何事もなく、今年の採集は終わった。子供が一人、鳥を捕まえたと言って喜んでいた。珍しい鳥だ。キジに似ているが、羽の一部が白い。
それを見てアシメックははっとした。前の族長の教えに、山で変わったものが取れた時は気をつけろというのがあったのだ。
アシメックは子供に言い聞かせ、その鳥をキノコ三つと取り換えた。子供が持っていては危ないと感じたのだ。鳥はもう死んでいた。子供の話では、捕まえた時にはもうすでに死にかけていたという。
形はキジだが、両方の羽の部分だけが白い。他に特に変わった様子はなかった。だがこいつは食ってはならない。何かがある。帰ってミコルに聞いてみよう。