（人類のために
どうすることが 本当に良いことなのか
神は答えを教えてはくださらぬ
ただ わたしというものの
わたしを実行せよとの声を
沈黙のまなざしに変えて
わたしの上に降らせる
かすかな雨の響きのように
いや それともそれは
この胸にうずいている
傷の痛みの 声なのか）
ほう 詩的だ
ではわたしも 答えましょう
あなたは そよ風の中を
歩いていると思っていた
だがそれは
毒の鏃をつけた
黒い矢の無数に流れる激しい川だった
あなたは傷ついたが
目を閉じていたので
なにも気づきはしなかった
ただ 自分の中の炎だけを見つめていた
角砂糖の薪を集めて燃やした
甘くも やさしい明りを
あなたは 愛していた
愛するもののためにやらねばと
それだけしか 考えてはいなかった
なんと 小さな希望の焚火か
だがその焚火が まるで野の片隅の
菫のようでありながら
全世界に根をはる
巨大な薔薇のようであったことを
われわれは見えぬところから
いつも見ていた
（すべては 神のおやりなさったこと
そして あなたがたの）
ほ
あなたも含めてね
逃げることはゆるされません
あなたは知っていた
ほんとうに 知っていた
どんな嵐が 起こるかということを
故にあなたの別の名を
「世の救い」という
あなたは あなたにしかできないことを
やった
そしてそのまま逃げていこうとした
そうはいかぬと 人類は一斉に
あなたを追いかけ始めた
そして やっと気づいた
本当の愚か者は 誰かということに
（わたしはずっと
人類を追いかけていた
だがいつの間にか
人類がわたしを追いかけていた）
ほ ほ ほ
ふ
まるで愚かな喜劇だ
誰も笑えぬ
人類よ おかしなことになったものだ
これが喜劇の 壮大な落ちというものか
（わたしは 月の岩戸に
閉じこもる
そして）
ええ 永遠に出てくることはできない
あなたは 永遠にそこにいることしかできない
もはやそれしかできなくなった
それでも やろうとするのが
あなたというものだ
（まことに そのとおり）
ふ そして
わたしもまた
（ええ やるのです
あなたは 糞のかたまりだと言いながら
ずっと人類から離れずにいる
いやならば いやと言って
人類を見捨てていってよいものを）
ほ
これは まったく
（神に感謝します
あなたという方の存在を
人類のために そしてわたしのために
与えて下さったことを）
ふ わかりました
では ゆきましょう ともに
（ええ ともに）
はるかな道だ
（まったく だが美しい）
まったく
