世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

痛い。

2007-06-03 10:46:02 | てんこの論語
子曰く、人の生くるや直し。これなくして生くるは、幸いにして免るるなり。【論語・雍也】

先生はおっしゃった。人生は本来まっすぐなものだ。そうでなく生きるものは、ただ幸運で免れただけのことだ。

論語のことばは、まっすぐに言いますね。人生は本来まっすぐなもの。人間は本来真っ正直なもの。そうやって生きるのが一番いい。一番すがすがしい。自分に正直に生きることが、自分にとっては最もいいこと。それなのに、今の世界はそれができない。

正直者は、アホになる世界です。まっすぐに行けば、必ず誰かに足を引っ掛けられる。馬鹿だね、もっとずるがしこくやらねば、生きていけない世界なんだよ、ここは。だからみんな、嘘をつく。かなり恥ずかしいことをする。そうでなければ生きていけないから、仕方ない。そう自分に言い訳して、苦しすぎる世の中を少しでも生きやすくするために、あらゆる辛い言い訳を作り出す。こんなこと、全部アホだ。そう胸の中でささやきながら、営々と恐ろしく曲がった幻を作り出す。

そうしてこの世界は、あまりにも苦しい世界になった。真実の空気がなければ、魂は生きていけないのに、嘘でつくった空気を吸わねばならない。あまりにも苦しい。苦しくて、あらゆることをしてしまう。少しでも楽になるために、人を攻撃する。世界を攻撃する。あらゆるものを、くだらない無意味な阿呆にする。

こんな世界だから、何をしたっていいんだ、なんて人さえ出てくる。わからなければいい。だれも見てなければいい。それだけであらゆることをしてしまう。けれども、だれもみていないところでも、ただひとり見ているものがいる。それが、自分。

自分が、自分としてみていられない恥ずかしいことをしている。こんな苦しいことはない。あんまりだ。こんなものが自分なのか。わたしは、こんなことを、ずっとやっているのか。

幸いにして免れたのではない。その人は、自分自身の苦しさに永遠に苦しむことになる。見ていた。わたしはずっと見ていた。わたしのやっていることを。

わかっている。こんなことは。でも、あまりにも長く、やってきてしまった。どうすれば、かえってゆくことができるのか。本当のわたしに。まっすぐな、本当のわたしに。

その人に、「帰りたいか」とたずねる。どう答える。その人はいう。「痛い」。

痛い。

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