このままでは、カシワナ族が飢えてしまう。アシメックはだんだん危機感を深めていった。
その年の冬は一応乗り超えられた。米の量は減ったが、その分栗の収穫量が例年より多かったのが助かった。しかし、干し肉や干し魚がだいぶ減った。村人は食べ物が減った時のために、たいてい干した鹿肉や魚を蓄えているのだが、その備蓄が尽きてしまったものもたくさん出た。
春になればまた鹿が来る。今年はいつもよりたくさん狩らなければならないだろう。だが、あまり鹿を捕り過ぎると、鹿がイタカに来なくなるという話も伝えられていた。実際、遠い昔、あまりに多くの鹿を狩りすぎて、イタカに下りてくる鹿の数が激減したことがあったのだ。
村を覆っている不安の暗雲は、どんどん濃くなってきていた。ケセン川での漁師同士の軋轢もまた増えてきていた。どうにかせねばならない。
毎日のようにあせりに肝をあぶられながら、アシメックは考え続けた。どうにかせねばならない。