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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

日曜のディナー

2016-09-10 04:13:09 | 霧の風景


ウィリアム・マイケル・ハーネット、19世紀アメリカ、写実主義。

羽をむしった鳥が壁にぶら下げてある。うまそうだと思う人間もいるだろうが、むごいと思う人間もいるだろう。繰り返し言っていることだが、もう人間は鳥を殺してはならない。鳥類が人間の暴虐に苦しんでいるからだ。そういう自然の声を無視してはいけないのだよ。卵をとられることも、殺されて食われることも、鳥は悲しいのだ。豚も悲しいが、まだ許してくれる。人間が今当然だと思って食っているものも、本当は愛が許してくれていることなのだということを、人間はもう理解しなくてはならない。できるだけ早急に、人間は養鶏に代表される鳥への暴虐を、やめなければならない。鳥や卵を食べていいのは、自然界のものだけだ。






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伐採

2016-09-09 04:13:41 | 霧の風景


イワン・イワノヴィチ・シーシキン、19世紀ロシア、写実主義。

森の木が伐り倒されている。人間が家を作るには、木が必要だ。紙を作るのにも、木が必要だ。木を伐らずに人間が生きていくことなどできない。だからと言って、当然のように伐っていいものではない。木も、伐られることは悲しいということを、人間は知っていなければならない。自分の体に斧を入れられて伐られるということを想像してみなさい。人間だったら耐えられないだろう。だが木は、それを耐えてくれているのだ。痛みに愛で耐え、美しいことにしてくれる。その愛を、いつまでも無視して生きていくことは、人間にはもうできない。人間の暴力的な森の浸食が、環境を破壊し、人間をも追い詰めていくことがわかったら、人間も森をもっと大事にしなければならない。植林だけでは不十分だ。森を愛し、木を愛し、人間の暴力的な罪を償っていけるだけの、美しいことをしていかねばならない。






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モントクレアの我が家

2016-09-08 04:08:18 | 霧の風景


ジョージ・イネス、19世紀アメリカ、ハドソン・リバー派。

休憩だ。家はどこだね。
お父さんやお母さんは元気かね。君のことをどう思っているだろうか。
どんな人間にも、帰っていけるところがある。それが家というものだ。大切にしなければいけない。
たまには土産でも持って、家に帰りなさい。親に孝行してみなさい。けんかしているのなら、子供のほうから素直に謝ったほうがいい。世話になるばかりではいけない。
きっと君の帰りを喜んでくれるだろう。






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ピエタ

2016-09-07 04:12:06 | 霧の風景


アンニーバレ・カラッチ、16世紀イタリア、バロック。

死んだ男を抱いて、女が泣いている。戦争が起こると、よくこういう風景が見られた。息子や夫が戦死したという知らせを受けて、女が泣き崩れる。愛するものを失った女ほど、悲しいものはない。死んだ男は、自分を守ってくれ、生活を保障してくれ、子供たちを導いてくれる、偉大な男だったのだ。それをむごい戦争に道具のように扱われ、奪われた。戦争は女の人生も狂わすのである。
昔の戦争では、負けた側の男は皆殺しにされ、女は性奴隷にされた。略奪、強姦は戦場の常であったのだ。人間の美と幸福を破壊しつくす戦争は、どんな大義名分があろうと、悪である。






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戦争の結末

2016-09-06 04:13:24 | 霧の風景


ヴァシリー・ヴァシリエヴィチ・ヴェレシチャーギン、19世紀ロシア、写実主義。

見事な直喩だ。結局のところ、戦争が生産するものは、こういうものなのだ。
ヴェレシチャーギンは露土戦争に従軍し、その悲惨な現実を間近に見た。彼は戦死者や負傷者など、戦争に参加する人間の一人一人に迫った作品を多く描いている。自らも日露戦争で戦死した。戦争を指揮する王や英雄は誇り高く美しく描かれるが、実際の戦場はそんな生ぬるいものではない。醜く悲惨な現実がいくらもある。命を取り合うけんかなど美しいわけがないのだ。
石くれのように積まれている頭蓋骨の一つ一つに人生があり、愛があり、美しい価値があった。それを戦争は大量に悲惨にひき潰すのだ。戦争を指揮したものは、この一つ一つの人生に対して責任を持たねばならないのである。
我欲のために起こされた戦争ほど、醜いものはない。






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石橋の上の自画像

2016-09-05 04:20:21 | 霧の風景


アドルフ・ヒトラー、20世紀ドイツ。

これは独裁者ヒトラーを描いた数少ない絵の一つである。川の色が赤いことが、まるで血が流れているようにも見えるが、これを描いた当時の画家にそんな意図はなかったろう。
普通自画像と言えば大きく前面に自分を描くものだが、この男は風景の中に小さく自分を描いている。なぜこのようなことをしたのだろう。おそらく彼は誰より自分が嫌いだったのだ。ヒトラーは数多くの前世を積んできたが、そのたびに罪を重ねてきた。それをまだ一つも払っていなかったのだ。大きな罪の影を持つ自分が、遠いところに置き去りにしてしまいたいほど、彼は嫌でたまらなかったのだろう。彼が後に行った虐殺は、その自分への憎悪の転写と言っていい。本当は自分を殺したかったのにできなかった心が、大量殺戮を行ったのだ。
戦争を行う人間の心は、ときにむごいほど愚かな人間の真実を見せる。






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ヘレネー

2016-09-04 04:11:45 | 霧の風景


フレデリック・サンズ、19世紀イギリス、ラファエル前派。

美人だが恐ろしい顔だ。燃えるような髪が情念の深さを思わせる。画家はこういう醜い女の顔を知っていたようだ。たぶん周囲にこんな女がいて、その表情に敏感に気付いていたのだろう。
ご存知の通り、ヘレネーはトロイ戦争の原因となった女である。トロイの王子パリスがスパルタ王メネラオスの妻であったこの女をさらったことから戦争が始まった。馬鹿が自分の性欲を我慢できなかったがために、多くの人間を巻き込んだ。戦争は人々の人生を狂わせ、多くの命を失わせた。なぜ戦争が起こるのか。それは結局のところ、人間が欲望を我慢できないからだ。欲しいものがあるからさ。それは美女であったり金であったり国土であったり利権であったり、またほかのものであったりする。人間は自分のために、馬鹿みたいなものを欲しがるのだ。
ヘレネーは偽物の美女だった。なぜなら本物なら絶対にパリスの誘惑に乗らないからだ。結局は心の醜いこのブスのために、みんなが狂った。それがトロイ戦争だ。






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海軍中将ジョージ・アンソン卿のフィニステレ岬沖の勝利

2016-09-03 04:28:19 | 霧の風景


サミュエル・スコット、18世紀イギリス、バロック。

第一次フィニステレ岬の海戦は、1747年にオーストリア継承戦争の一部として起こった英仏間の戦争である。フィニステレ岬はスペイン北西部の半島であり、その沖でイギリスとフランスの艦隊がぶつかった。戦いはイギリスの勝利で終わったが、双方には多くの死傷者が出た。海の上で、美しい帆に風をはらんだ戦艦が、大砲を打ち合って殺しあっている。何をかけて戦っているのかは定かではない。何が正しいのかもほとんどわからない。王位の継承だとか何らかの利権だとかいう言葉が浮き上がってはくるが、戦っている人間は、なんのために戦っているかを多分よくわかってはいない。ただ心に浮かぶのは、敵と死への恐怖だけだ。なぜ人間は対立するのか。なぜ殺しあうのか。わからないがとにかく殺されたくないから打ちまくる。その結果がたくさんの人間の苦しみと死なのである。人間はこういうことをしてきたのだ。
イギリスの艦隊を率いたジョージ・アンソンはこの戦いの勝利によって爵位を得たが、子に恵まれず、血筋はすぐに絶えたという。






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洗礼者聖ヨハネ

2016-09-02 04:11:16 | 霧の風景


アンドレア・デル・サルト、16世紀イタリア、盛期ルネサンス。

洗礼者聖ヨハネは聖人ということになっているが、そう勉強が進んだ魂ではない。ただイエスと関連してそういうことがあったという話が神話化し、彼を聖人にしてしまったのだ。だからあまり彼を尊敬したり、大仰に扱ったりしてはならない。本人がのさばって馬鹿なことをやるからだ。実力以上の評価を与えると、人間は調子に乗って、本来自分がやらなければならないこととは全然別のことをやり始める。それでとんでもないことになる。ヨハネの霊魂はそれでかなり世間に迷惑をかけ、いやなことになっているのだ。
これまでの嘘と迷いの世界の中で下した人間への評価は、一旦クリアしたほうがいい。






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ドゥワルヌネー湾

2016-09-01 04:11:08 | 霧の風景


ウジェーヌ・ブーダン、19世紀フランス、印象派。

休憩だ。海でも見に行こう。
人間はよく人生に疲れると海を見に行く。波の音を聞いていると、人間世界にもまれて荒れていた心が、凪いだ海のように穏やかになってくるような気がする。
母の胎内で聞いていた音に似ているからかもしれない。
広い風景に光は満ちている。風は潮の匂いに満ち、果てしない向こうまで続く青の中には神がいるような気がする。
かのじょもよく海を見ていた。ただ、海を見ていた。






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