日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く - 独酌三四郎

2015-09-26 21:15:03 | 居酒屋
九時過ぎという狙い通りの時間に「独酌三四郎」の暖簾をくぐりました。遅めの時間を選んだのは正解だったか、三人組の先客が出てくるのと入れ替わりに中へ入ると、手前のカウンターに先客の姿は皆無、一番奥に二人組がおり、小上がりに少人数の先客が二組という店内です。
つい先ほどまでは慌ただしかったものの、ようやく落ち着いたとのことであり、店主も女将も椅子に腰掛け一息入れるという状況になりました。自分の後にもお客が三々五々入ってはくるものの、注文が立て込んで切迫する場面はもうありません。やはりこの店では、お客が引けた遅い時間に訪れ、カウンターで女将相手にやるのが吉ということなのでしょう。

中一日での再訪ならば、前回とは趣向を変えるのが順当です。かような観点から、お通しに続いては〆さんまを注文。前回食した〆にしんが歯ごたえのある食感だったのに対し、こちらはしっとりとした食感を特徴とし、酢加減、塩加減も絶妙で、酒との相性はこちらの方が上と思います。
その秋刀魚に次いで選んだのが、以前訪ねたときに隣の御常連が席に着くなり注文していた豆腐といかやきです。何の変哲もない品を頼むものだと、そのときはやや懐疑的に思った一方で、常連がいの一番に選ぶものなら、それだけ肴として完成されているのではと考えてのことでした。そしてその考えに誤りはありませんでした。
豆腐の薬味は生姜のみと潔く、豆本来の風味を味わう一品で、十分な量があるため箸休めにも好適。いかやきはいわゆるゴロ焼きで、それ自体特段変わった品ではないものの、肝によく漬け込んでいるのか、わたとのなじみ具合がそこらのものとは違います。たしかに、常連になるほど通い詰めれば、この二品だけでも十分酒が呑めそうです。
閉店前に最後の注文を聞かれたとき、女将の勧め上手もあってついもう一本注文。〆て四合飲み干して、看板の時刻と同時に席を立ちました。

独酌三四郎
旭川市2条通5丁目左7号
0166-22-6751
1700PM-2300PM
日祝日定休

あいべつふしこ・麒麟山三合
お通し(酢大豆)
〆さんま
友人手造りとうふ
いかやき
なすやき
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晩秋の大地を行く - 旭川到着

2015-09-26 20:54:55 | 北海道
12号線の直線区間にも引けを取らない、定規で引いたようにまっすぐな39号線を快走して旭川に着きました。今日一日で、上陸以来最多となる260kmを走ったことになります。一日100km未満だった日に比べて、今日が特別忙しかったという実感はないものの、ともかくよく走ったものだと思います。
現在の気温は16度、しかし序盤の16度とは体感温度が違い、暑がりの自分でも長袖シャツでちょうどよく感じられます。今夜も月夜になっており、キャンプにすればよかったかという考えがないわけではないものの、仮に決行すれば寒さに震えていたでしょう。「独酌三四郎」でのひとときが、いくばくかの迷いをかき消してくれると期待しています。
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晩秋の大地を行く - 協和温泉

2015-09-26 20:12:25 | 温泉
無味乾燥な高速道路での移動は主義に反するものの、一風呂浴びる時間を捻出するため旭川紋別道を飛ばしてきました。訪ねるのは愛別の「協和温泉」です。
愛別の市街からそう遠くない開けた場所に、北海道らしい大きな三角形の建物があり、同じく大きな車寄せが張り出して、そこに「湯元 協和温泉」の屋号が掲げられています。玄関をくぐったところにあるいかにも旅館然とした食堂と、内湯のみの飾り気のない浴場は、津軽に点在する宿泊施設併設の日帰り温泉を彷彿とさせます。
事前の情報に反し、お湯は循環塩素消毒の紛い物ながら、家庭の浴槽より少し大きい程度の、実質的には定員一人の浴槽にだけ源泉が掛け流されています。炭酸泉との触れ込みよりも、特徴的なのは谷地頭のような褐色に濁った鉄臭い源泉です。幸運なことに先客がなかったため、その浴槽からたらいで湯を汲み体を洗い、ひとしきり浸かったところで他のお客が入ってきました。
北海道に上陸してからというもの、風呂に入るというと手早く済ませることを重視したり、古びた味わいの銭湯を訪ねたりで、お湯については度外視してきたのが実情です。それだけに、「入った」と実感できるお湯がなおさらありがたく感じられました。

協和温泉
上川郡愛別町協和1区
01658-6-5815
700AM-2200PM
入浴料500円
泉質 単純二酸化炭素冷鉱泉(低張性弱酸性冷鉱泉)
泉温 12.6度
pH 5.6
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晩秋の大地を行く - 悪魔のささやき再び

2015-09-26 18:23:28 | 北海道
この展開を予想できた方はいらっしゃるでしょうか。本日はキャンプをせず、旭川市街で泊まることにしました。ただし宿はとりません。
まず、旭川で泊まることにしたのは、「独酌三四郎」で呑みたいと再び悪魔がささやいたからに他なりません。しかしその場合、土曜という条件が障壁になります。実は今夜の場合、取りつく島もないほどの混みようではなく、多少割高ながらも宿はいくつか残っています。ただし、駐車場代を入れれば最安値でも八千円を超える価格帯です。無料のキャンプ場かただ同然のライダーハウスに泊まり、千円少々の酒と肴で晩酌してきた今回の旅において、宿代に八千円以上、酒代にも五千円前後をかけるのは許容し難い選択でした。
それではどうするかといえば、一応の対応策は考えています。一昨日旭川に泊まったとき、「独酌三四郎」の至近に仮眠のできる怪しげなサウナがあったため、入れるようならこちらに入ります。満員御礼という事態になっても、そのときは初日と同様車中泊という強行策があります。一晩だけなら何とかなると割り切ればよいでしょう。
一昨日と趣向を変えるためにも、慌ただしい時間は避け、遅めの時間に訪ねたいという考えがあります。温泉にでも浸かってから市街に入るつもりです。
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晩秋の大地を行く - 謎の点灯

2015-09-26 17:52:02 | 北海道
六時が近付き残照もなくなりつつある中、不思議なことが起こりました。上白滝の玄関と待合室に明かりがついたのです。下白滝の場合、白滝止まりの列車が八時に来るため、それまで点灯しておく理由はあります。しかしこの駅の場合、今日の列車は明るいうちに走り去り、次に列車が来るのは明日の朝です。それにもかかわらず明かりをつける理由は何なのでしょうか。
とはいえ、得心する部分がないわけではありません。というのも、列車が走り去った後、地元のお姉さんがどこからともなく現れ、駅舎を軽く掃除してから去って行ったのです。一日一往復しか列車の来ないこの駅が、今なお地元の人々により大切にされているということでしょう。あえて明かりをつけるのも、それと無関係ではないような気がします。白熱球の明かりに駅舎が浮かび上がり、印象的な光景が見られたことに感謝します。
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晩秋の大地を行く - 雪虫

2015-09-26 16:55:17 | 北海道
結局、旧白滝については昨日と大差ない条件になってしまいました。空がにわかに晴れるとも期待し難く、これが潮時と割り切って上白滝に移動してきたところです。あと10分少々で、一日一本の上り列車がやってきます。
昨日もそうだったのですが、旧白滝で綿のような虫が飛んでいました。これが噂に聞きし雪虫なのでしょうか。この虫が飛び始めてから、一週間から十日ほどで初雪が降ると聞いています。九月で初雪とは奇異にも思われるものの、石北峠では例年10月の中旬に積雪するとのことです。今年の雪は早そうだという計呂地駅の管理人氏の見立てからしても、今頃雪虫が飛ぶのはあながち不思議ではないともいえます。北海道の寒冷地では、そろそろ冬支度を始める時期なのでしょう。旭川を過ぎてから季節が一歩進んだという印象は、昨日と今日を通じて変わりませんでした。
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晩秋の大地を行く - 下白滝駅再訪

2015-09-26 16:14:47 | 北海道
時間が押してきたため安国からの四駅を通過し、下白滝まで車を飛ばしてきました。生野までおおむね晴れていた空が、遠軽を過ぎる頃から曇ってしまい、結果としては昨日の上白滝あたりと大差のない状況です。とはいえこの駅に関していえば、日没間際で光量がほとんどなかった昨日より幾分ましではあります。
同様の状況だった旧白滝を押さえた上で五時まで待ち、空が奇跡的に晴れてくれればもちろんもう一度撮って、そうでなければ縁がなかったものとあきらめるしかなさそうです。とはいえ、金華については晴天下で撮れたわけであり、他の三駅についてもそれなりの条件で記録した以上、全体を通じて見れば勝ちといってもよいのではないでしょうか。二日間かけた甲斐はあったと納得しています。
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晩秋の大地を行く - 生野駅

2015-09-26 15:34:09 | 北海道
続いて訪ねるのは生野駅です。細い鉄骨とコンクリート板で造った簡素なホームは、昨日訪ねた東雲駅と五十歩百歩といった間があり、待合室がないところも同じです。駅の周辺には農家が数軒あるのみで、利用客の数については金華駅と大差がないように見えます。それだけに、この駅とていつ廃止されてもおかしくはありません。そうと決まってから慌てて訪ねるよりも、今回押さえておいた方が賢明と思い至りました。
ホームのみの簡素な駅とはいえ、踏切から眺めるとホームの向こうになだらかな牧草地が広がり、右上には小高い山があって、左下にあるホームと非対称の絵柄をなしています。
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晩秋の大地を行く - 生田原駅

2015-09-26 15:20:28 | 北海道
峠を越えると最初に現れるのが生田原駅です。石造り風の巨大な駅舎は図書館併設で、有り体にいえば駅舎併設の図書館というより、図書館に駅が間借りしているかのようにも見えます。同様の例として挙げられるのが、同じ石北本線の女満別です。
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晩秋の大地を行く - 金華駅

2015-09-26 14:11:18 | 北海道
本日の真打、金華駅が満を持しての登場です。自身にとって初見ではないながらも、一昔前仲間との活動に便乗して訪ねたにすぎません。当時はデジタルカメラなどなく、フィルムカメラについても一世代前の機材でした。そのような事情もあり、廃止前最後の秋に是非とも再訪しておきたかった次第です。
蒸機時代に名を馳せた常紋越えの入口にあり、利用客の減少により間もなく廃止になろうとしている駅です。自身としても山奥の駅という印象を抱いていました。ところが、距離的には留辺蘂の市街から遠く離れているわけでもなく、市街が尽きてざっと3km少々走った程度の場所でした。駅周辺には廃屋が目立つものの、現に生活している家屋もあり、全くの無人だった峠下に比べれば、こちらの方がまだ生活臭は感じられます。白滝と違って列車本数が極端に少ないわけでもなく、これで本当に廃止なのかというのが率直なところです。しかし事実は事実なのですがorz
道中で木造駅舎を訪ねるたびに、「北海道らしい」という常套句を繰り返し用いてきました。それでは何が北海道らしいのかといえば、まず大げさな玄関、ファサード、庇などがあまりないという点が挙げられます。この駅も例外ではありません。そのようなもので駅舎を飾ると、除雪が面倒になるからなのでしょうか。厳しい冬を耐え抜くための知恵とでもいうべきものが、一見するとてらいのない木造駅舎に現れています。
寄り道がたたり、不十分な条件でどうにか押さえる程度に終わった昨日の白滝周辺に対し、今日はここまで時間を消費したことが結果として吉と出ました。駅舎を順光の状態で記録することができたからです。背後から三本突き出た樹木が色づいていたり、既に落葉していたりといった様子も、最後の秋を終えようとするこの時期の季節感をよく表しています。余すことなく記録できたのは幸いでした。
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晩秋の大地を行く - 西留辺蘂駅

2015-09-26 13:45:08 | 北海道
駅めぐりを再開します。訪ねるのは西留辺蘂駅です。
踏切の脇、中学校のグラウンドの裏手に、ホーム一本と待合室のみの簡素な駅があります。平成に入ってから設置された駅ということもあり、ホーム自体は何とも味気なく、道中で訪ねた駅でいうなら留萌本線の信砂と並ぶ双璧といってもよさそうです。しかし、グラウンドとホームの間を砂利道が校舎に向かって続き、砂利道とホームの間には落葉松が並んで、見ようによっては北海道らしくもあります。どんな駅でも探せば大抵一つは見所があるものです。
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晩秋の大地を行く - 朝兼昼

2015-09-26 12:54:56 | B級グルメ
本日の山場というべき金華駅を目前にして、先を急ぎたくなるのは人情ながら、朝からのまず食わずで空腹感も限界に近付いてきました。駅の近くのセイコーマートで遅い朝食兼昼食をいただきます。惜しくもホットシェフがなかったため、100円パスタ二つを選択。セイコーマートで朝兼昼という紋切り型の展開は、よくよく考えると本活動では初めてです。
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晩秋の大地を行く - 留辺蘂駅

2015-09-26 12:29:57 | 北海道
続いて留辺蘂駅を訪ねます。鉄筋コンクリート平屋建ての駅舎は一見すると平凡ながら、左に長い庇を、右に短い庇を張り出させた左右非対称の形をしており、中央に切り抜き文字で書かれた平仮名の駅名が全体を引き締めています。しかし、それより秀逸なのはホームです。古い跨線橋を渡って上がる島式のホームは、雪止め付きの金属屋根をかぶった木造の上家で覆われ、ホームの向こうに並んだ白樺がよい点景となっています。
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晩秋の大地を行く - 相内駅

2015-09-26 11:04:40 | 北海道
東進はこれにて終了、39号線を留辺蘂方面へ引き返します。途中に現れるのが相内駅です。
駅舎は平成初頭に道内各地で量産された安普請ながら、実は二つとして同じものはなく、それぞれ独自の意匠を持っています。例えばこの駅の場合、箱型の建物の中央から三角屋根の玄関部分を張り出させたような外観です。ところが、箱型に見えるのは玄関側とホーム側に立てた壁のせいで、実は建物全体が大きな三角屋根になっています。要は看板建築の商店のようなものです。玄関の三角屋根の延長線に合わせる形で、四角い壁に同じ色の線が引かれているのは、この意表を突く造りをさらに強調するためなのでしょう。かくも周到な仕掛けが、側面から眺めたときだけ気付くようになっているのも心憎いものがあります。
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晩秋の大地を行く - 東相内駅

2015-09-26 10:18:10 | 北海道
計呂地から留辺蘂に出て、そこから39号線を北見方面へ下ります。牧場が点々とする中、右に左にカーブを切りつつ走った留辺蘂までに対し、北見盆地に下りると稲穂が再び現れ、広々した平地を一直線の道で貫く車窓に変わりました。どちらも北海道らしい眺めです。
これ以上先には行かないと予告したにもかかわらず、北見方面に下ってきたのは、金華の他にも立ち寄りたい駅があったからです。その東相内駅にやってきました。切妻の木造駅舎は、無人駅にしては不釣り合いなほど堂々たる間口を有し、事務室から玄関にかけての部分と待合室の部分とで屋根の高さが高低二段に分かれていて、左側の事務室部分からは、駅舎の長手方向と直交する形でもう一つの切妻が張り出しています。玄関の上には日本家屋風のファサードが造られ、扉の右には表札のごとく駅名が縦書きされ、左には一本松が立ちます。背後から突き出る電波塔もよい点景となっており、実に絵になる佇まいです。
駅の上り方には何棟もの農業倉庫が連なり、かつてはあの倉庫にも側線が延びていたのだろうと想像できます。貨物輸送華やかなりし頃を彷彿させる光景です。
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